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8.函館(北海道)

気象条件を反映した農業地域

 <1984年10月10日観測画像>

画像では,渡島半島の南半分が示されている。

この地域は,三方を内浦湾,日本海,津軽海峡の海で囲まれている。半島の中央部を1000メートル級の山々が縦断し,平野が少ない。

世界の三大夜景の1つといわれている函館山が津軽海峡につき出ている。また,日本海側には民謡「江差追分」で名高い江差町のカモメ島が日本海に突き出ている。内浦湾方向に目をやると,植生を失い,灰褐色を呈した駒ヶ岳の山頂がそびえている。駒ヶ岳の下には噴火の時にせき止められて出来た大沼の湖面が撮し出されている。耕地は,函館周辺,駒ヶ岳の西麓や日本海側の河川沿いに細長く分布している。

本地域の気候は,北海道の中では比較的温暖である。しかし,内浦湾側は夏季の最高気温がやや低いため,気温較差が小さく,また,6〜7月は冷涼な偏東風(ヤマセ)があり,日照時間も少ない。一方,日本海側は,北上する対馬暖流の影響を受けて,冬季間も月平均気温が0℃以下になることは殆どない。しかし,季節風の影響を受けて,強風地帯となっている。

土壌は,内浦湾側では,丘陵地,台地は全て火山灰で厚く覆われており,火山性土である。火山灰の噴出源は駒ヶ岳が主体で,火山灰の厚さは,森,鹿部で厚く,八雲,長万部で薄く,噴出源から離れるにしたがって薄くなっている。土壌型は,噴出源から火山放出物未熟土,未熟火山性土,褐色火山性土へと変化する。

また,函館周辺の台地には,降下年代が古く,腐植に頗る富む「墟土」と呼ばれている厚層黒色火山性土が分布している。

日本海側の土壌は,河川に沿っては沖積土,泥炭土,丘陵地,台地の地形が安定しているところでは未熟火山性土が,地形が傾斜し表層の火山灰が侵食されている地域では,灰色台地土や褐色森林土が分布している。

本地域の農業は,耕地面積がおよそ50.4千ヘクタールであり,その内訳は水田17.5千ヘクタール,畑(野菜含む)17千ヘクタール,牧草地15.9千ヘクタールで,各農業形態の占める面積割合はほぼ同じである。1戸当たり農家の耕地面積は,約5ヘクタールで北海道で最も狭い。農業地域は気象条件によって区分され,それぞれの地域ごとに特有の農業が営まれている。

函館に近い大野町,七飯町,上磯町は気象条件に恵まれ,消費地の函館に近いこともあって,ダイコン,カボチャ,ニンジン,キャベツなどの野菜の作付けが多い。食用バレイショの作付けが圧倒的に多いのもこの地域の特徴である。また,最近では花き栽培が増加の傾向にある。

駒ヶ岳地区は,養豚畜産やカボチャなどの野菜生産が主体である。濁川地区では,地熱利用によるハウス野菜の栽培が盛んに行われている。

内浦湾側の北部に位置する長万部町,八雲町は,気象条件が不良であることから,酪農が営まれ,牧草などの飼料作物を主体に作付けられている。

日本海側は,河川流域の沖積地では水稲栽培が主体に行われているが,近年は転作により野菜栽培の作付けが増加し,特にダイコンは産地指定されたこともあり,作付け面積の増加が著しく行われている。また,丘陵地や台地では牧草が作付けられ,酪農,畜産が営まれている。

菊地晃二(北海道立中央農業試験場)

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