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48.広島

瀬戸内沿岸の蔬菜・果樹地域

 <1985年5月2日観測画像>

広島県は地形が複雑で,まとまった広がりを持った農耕地は少ない。広島県の総面積は8467平方キロ(全国11位)で,経営耕地面積は10%にも満たない670平方キロ(全国23位)である。

画像の地域は,広島県の西部瀬戸内沿岸島しょ部と賀茂台地である。この地域内でまとまった広がりを持った農耕地は,賀茂台地に位置する西条盆地にみられる。他はいずれも狭い谷底平野,樹枝状の谷間,山麓から山腹にかけての斜面および丘陵地に分布し,まとまった広がりを持った農耕地は少ない。

この地域の農業は,気候が温暖な瀬戸内沿岸島しょ部地域と標高が200〜300メートルの西条盆地を中心とした賀茂台地地域に分けられる。ちなみに,平成元年の広島市の年平均気温は16.3℃,降水量は1,587ミリである。西条盆地に位置する東広島市は年平均気温が13.5℃,降水量は1,592ミリである。

瀬戸内沿岸島しょ部地域は,温暖で穏やかな気候を利用して野菜,花,柑橘類の栽培が盛んである。広島市,呉市近郊では,消費地をひかえた立地条件を生かしてシュンギクなどの軟弱野菜,ホウレンソウ,ネギ,ヒロシマナなどの栽培が盛んである。しかしながら宅地化が進み農地が減少しつつある。

広島湾に位置する江田島(江田島町)ではキュウリ,キャベツが広く栽培されている。隣接した能美島(沖美町,能美町)ではキク,カーネーションなどの花の栽培が盛んである。

画像右下,瀬戸内海に位置する上蒲刈島,下蒲刈島,豊島では柑橘類の栽培が盛んである。しかし,温州ミカンの価格が低迷しており,また,オレンジの輸入自由化により,高品質の柑橘類の栽培へ転換がはかられている。さらに,平成3年9月27日に通過した台風19号の強風(広島で最大瞬間風速,南南東の風58.9メートル/秒を記録)により海水が飛散して,南斜面の柑橘園が大規模な塩害を受けた。

瀬戸内沿岸島しょ部地域には花崗岩の風化土壌であるいわゆる「マサ土」が広く分布している。広島県における花崗岩質岩石の分布は2,976平方キロで全土地面積の35%を占め,県南部から西部にかけて広島型花崗岩が広大に分布している。マサ土は腐植含量が少なく保水力,保肥力に乏しく,痩せた薄い土壌であるが普通畑,樹園地として広く利用されている。また,瀬戸内沿岸島しょ部地域では15゜以上の急傾斜で野菜,柑橘類の栽培が行なわれており土壌侵食の恐れが大きい。

賀茂台地地域は,西条盆地とその周辺の洪積台地からなる地域で,水稲の栽培が主体である。東広島市の経営耕地面積は4,840ヘクタールで,その内水田は93%を占めており,県下有数の穀倉地帯である。

谷本俊明(広島県立農業技術センター)

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