長野県伊那谷(いなだに)の専業農家、兼業農家が中心となって「ひと・むし・たんぼの会」を結成した。2002年のことである。「自分たちの耕作している水田にどんな生き物たちが暮らしているのかを知りたいという、農家の素直な思いからスタート」したという。写真家、大工、学芸員、研究者、大学教員もその輪に加わって、月に一度集まり、米づくりのことや生き物のことを勉強し、相互に刺激を与え合っているとのこと。この仲間たちが田んぼの生き物を調べ、議論を重ねた。米をつくる農家は、「農作業用の軽トラに網とカメラを積んで、自分の田んぼで出会った生き物たちを丹念に記録」した。こうしてできたのが本書である。田んぼで出会った生き物が誰でも分かるように、簡単な見分け方も解説に加えて、使いやすい図鑑の形にまとめている。
本書を開くと、そこには田んぼに生きる生き物が、臨場感をもって目に飛び込んでくる。生き物の解説に加えて、伊那谷の人々の暮らしの視点から書かれたトピックスが読む楽しみを増してくれる。類書が相次いで刊行されている。伊那谷の田んぼの生き物を紹介している本書がそうであるように、それぞれの地域にしっくりと当てはまるものを求めることができるようになってきた。
目次
本書の使い方
フィールドの位置と水田環境
哺乳類
鳥類
爬虫類
両生類
伊那谷の田んぼのカエルカレンダー
魚類
トンボ類
伊那谷の赤トンボ検索表
伊那谷の田んぼで見られる主なトンボの出現時期
カメムシ(半翅)類
コウチョウ類
バッタ・カマキリ類
チョウ・ガ類
ハチ・ハエ類ほか
クモ類
水生節足動物類
貝類ほか
主な参考文献
索引
<エッセイ>
「虫眼」の発見
赤トンボ
モートンイトトンボとダルマガエル
ミジンコの数に圧倒されたおじさん
稲作専業農家ですが、米だけ作っているわけではありません
ドジョウの田んぼ