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情報:農業と環境 No.79 (2006.11)
独立行政法人農業環境技術研究所

第23回農薬環境動態研究会 「マイナー作物を取り巻く農薬残留問題と今後の課題」 が開催された

食品における農薬残留問題に対する国民の関心は、近年きわめて高まっています。そのことにも関連して平成18年5月29日に導入された農薬の作物残留に関するポジティブリスト制度は、年間出荷量が3万トン以下のいわゆるマイナー作物や果樹の栽培現場に大きな波紋を投げかけています。

そこで前日の第6回有機化学物質研究会に続いて、10月6日、「マイナー作物を取り巻く農薬残留問題と今後の課題」をテーマに、第23回農薬環境動態研究会が、農業環境技術研究所で開催されました。4名の講師の方々に講演していただき、都道府県農業試験場、行政、植物防疫関係団体、農薬メーカーなど約120名が参加しました。

開催日時: 平成18年10月6日(金)

開催場所: 農業環境技術研究所 大会議室

参加者数: 122名 (独立行政法人:6名、公立農試:41名、行政:4名、関連団体:39名、農環研:32名)

講演の内容

講演1では、「世界における農薬残留に関する取り組みの最近の話題」の演題で、農薬検査所の佐々木詩織氏から話題提供がありました。経済協力開発機構(OECD)加盟国であるオーストラリア、イギリス、アメリカ合衆国におけるマイナー作物への農薬使用について紹介しました。とくに前2者のオフラベル制度や、アメリカの農薬使用対策の支援団体(IR-4)について、詳細に説明がありました。

講演2では、「ポジティブリスト制度における行政対応」の演題で、農林水産省・農薬対策室の井上知郁氏から話題提供がありました。残留基準値が設定されている作物とそれ以外の作物における注意事項、ドリフト防止・低減対策への具体的な取り組み、さらに財政的支援や農薬の使用状況の記帳などについて説明がありました。

講演3では、「千葉県におけるマイナー作物の農薬登録に対する取り組み」の演題で、千葉県農林水産部安全農業推進課の深見理子氏から話題提供がありました。千葉県におけるマイナー作物の品目や販売ルートから、これらの作物に対する農薬登録の経過措置の件数、作物別や農薬別の状況、農薬登録の推進対策などについて説明がありました。また今後の研究や行政施策において、ドリフト対策も重要であることを示しました。

講演4では、「マイナー作物のグループ化に向けた研究の取り組み」の演題で、農業環境技術研究所の遠藤正造氏から話題提供がありました。農林水産省の高度化事業で取り組んできたマイナー作物に関する研究で、ウリ科作物、イネ科作物(アワ、キビ、ヒエ)、シソ科作物、セリ科作物において、グループ化の可能性が示されました。

総合討論ほか

午前中のテーマは、ポジティブリスト制度導入元年であり、きわめて注目されている話題であったため、その後の総合討論は例年以上の盛り上がりを見せました。

午後には、都道府県農業関係試験研究機関の平成17年度研究成果概要書を中心に、イムノアッセイ、昨年度のテーマである多成分一斉分析法、作物残留試験あれこれの合計3グループに分かれて、それぞれ3つのパートを持ち、各グループ2課題の試験成績の発表と質疑応答(30分ずつ)を行いました。いずれのトピックも、都道府県試験場が現在取り組んでいる重要な研究課題であったため、活発な質疑や意見交換が行われて、今後につながる論議を深めることができました。

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