農林水産技術会議事務局は2006年12月21日に、2006年10大研究成果 を発表しました。これは、農業技術クラブ (農業関係専門紙・誌など30社加盟) の協力により、この1年間に取材等で新聞記事となった農林水産研究の成果の中から、内容が優れるとともに社会的関心の高いと考えられる10の成果を選定したものです。
選定された2006年の10大研究成果は次のとおりです。
1. 渋皮が簡単にむける画期的なニホングリ新品種 「ぽろたん」
2. BSEの人為的発症に成功
3. イノシシの跳躍特性の解析と 「金網忍び返し柵」 の開発・普及
4. 稲発酵粗飼料を用いた肉用牛の飼養技術を開発
5. 海のミジンコが海深く CO2 封印 −温暖化抑制に重要な役割−
6. 農耕地から発生する温室効果ガスである亜酸化窒素の発生量を正しく推定 −施肥法改善による抑制の可能性も明らかに−
7. 植物の乾燥耐性機構の解明と乾燥耐性植物の開発に成功
8. イネ栽培化の鍵となった脱粒性抑制遺伝子を発見
9. 中国産アサリの迅速判別法を開発
10. 寒締めでホウレンソウの硝酸含量が低下 −良食味で安全・安心な冬野菜の生産−
農業環境技術研究所が2006年4月に発表した研究成果「農耕地から発生する温室効果ガスである亜酸化窒素の発生量を正しく推定 −施肥法改善による抑制の可能性も明らかに−」が、10課題のうちの第6位となりました。
この成果は、水田から発生する亜酸化窒素について、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が定めている投入肥料当たりの発生量(温室効果ガス発生量の計算のための基準値)が過大評価であること、さらに、わが国の畑土壌では被覆硝酸肥料の使用によって亜酸化窒素の発生を抑えられることを明らかにした研究成果です。成果の内容が高く評価されたとともに、地球温暖化防止に対する生産者の関心の高さが示されたものと思われます。なお、この研究を担当した 秋山博子 主任研究員は、昨年4月に、平成18年度文部科学大臣表彰において若手科学者賞を受賞しています(情報:農業と環境73号の同記事 を参照)。
農耕地からの亜酸化窒素の発生に関する農業環境技術研究所の研究成果について、さらに知りたい方は、農業環境技術研究所のWebサイトにある、次の記事・資料をご覧ください。
(1) 農業環境技術研究所 研究成果発表会2006発表ポスター: 「農耕地からの亜酸化窒素の排出係数は現在のIPCCデフォルト値よりも低い」 (PDF)
(2) 農環研ニュース71号: 「農耕地から発生する亜酸化窒素の排出係数の推定と発生削減技術の開発」 (PDF)
(3) 平成17年度革新的農業技術習得研修テキスト: 「温室効果ガス排出のインベントリーと排出抑制技術」 (PDF)
(4) 雑誌「インベントリー」4号: 「農耕地からのメタンおよび亜酸化窒素排出量の国別インベントリーとデータベースの現状」 (PDF)
(5) 情報:農業と環境80号: 農業環境技術研究所リサーチプロジェクト(RP)の紹介(11)温室効果ガスRP
(6) 農業環境研究成果情報17集: 「窒素肥料を施用した黒ボク土畑圃場からの亜酸化窒素と一酸化窒素の発生」
(7) 農業環境研究成果情報20集: 「農耕地への有機物施用は亜酸化窒素の主要な排出源のひとつである」
(8) 農業環境研究成果情報22集: 「農耕地からの亜酸化窒素の排出係数は現在のIPCCデフォルト値よりも低い」