農業環境技術研究所は、農林水産省からの委託プロジェクト研究 「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」 において、わが国の河川に広く生息するコガタシマトビケラの1齢(れい)幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法を開発し、2008年3月に「コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法マニュアル」 および 「コガタシマトビケラ飼育法マニュアル」を公開しました。
わが国の農薬登録制度では、水生生物に対する農薬の生態影響の評価を、OECD (経済協力開発機構) が定めたガイドラインに準拠する3種の試験生物種 (魚類、ミジンコ類、緑藻(そう)類) を用いた急性毒性試験によって実施することになっています。しかし生態系の一次消費者の代表種として試験に用いられるミジンコ類は湖沼に生息しており、水稲用の農薬による汚染が懸念される河川生態系の一次消費者を代表していません。
農環研が開発した方法は、わが国の河川生態系の一次消費者として重要な水生昆虫の一種であるコガタシマトビケラを対象とすることで、わが国の農業形態や自然環境にあった農薬の影響評価法を提供しています。今回公表した2冊のマニュアルは、多数の写真や図表を用いて毒性試験法や飼育法を平易に解説しています。これらのマニュアルを活用して、現行の農薬の生態影響評価制度にコガタシマトビケラを試験生物種として追加することによって、農薬による環境影響の低減に役立つと期待されます。
ここでは、試験法マニュアルと飼育法マニュアルの目次を紹介します。
コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法マニュアル 目次
I. はじめに
II. 目的
III. コガタシマトビケラ Cheumatopsyche brevilineata について
IV. 急性毒性試験法
IV−1. 試験の概要
IV−2. 被験物質
IV−3. 試験生物
IV−4. 試験の適用範囲
IV−5. 試験材料、方法と試験環境条件
IV−6. 観察と測定
IV−7. 結果の処理法
IV−8. 試験報告
IV−9. 試験の妥当性
V. 試験事例
V−1. 急性毒性試験におけるpHおよび溶存酸素濃度の変動
V−2. フェニトロチオンの急性毒性試験例
V−3. コガタシマトビケラ1齢幼虫の各種殺虫剤に対する感受性検定
VI. 付図・付表
図1 「コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法マニュアル」 (抜粋)
コガタシマトビケラの飼育法マニュアル 目次
I. はじめに
II. 目的
III. 適用
IV. コガタシマトビケラについて
V. 飼育法
V−1. 基本的飼育条件
V−2. 飼育の開始
V−3. 卵塊の蓄養法
V−4. 幼虫の飼育法
V−5. 成虫の飼育と採卵法
V−6. タイムスケジュール
V−7. 長期休暇時(1週間程度)の対処
VI. 飼育事例
VII. 付図・付表
図2 「コガタシマトビケラの飼育法マニュアル」(抜粋)
試験法マニュアルおよび飼育法マニュアルは、PDFファイルをWebサイトで公表 しているほか、冊子を無償で配布します。ご入り用の方は下記までご連絡下さい。
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