IPCC-EFDB は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の国別温室効果ガスインベントリープログラムのもとで管理されているデータベースで、インターネット上に公開されています (URL:http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/EFDB/)。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)では、国別温室効果ガスインベントリーの作成が定められていますが、EFDB は、その作成作業に必要なさまざまな基礎的数値を提供することを目的にしています。EFDB の事務局として、日本の地球環境戦略研究所(IGES)に技術支援ユニットが置かれています。6月24日から26日まで、チリのサンチアゴで、土壌炭素に関する第3回 EFDB データ会合が開催され、農環研から八木上席研究員と大倉主任研究員が出席したので、会合のようすを報告します。
この会合の目的は、EFDB に新たに加えるデータの検討でした。参加者の発表によって提案されたデータセットについて質疑応答が行われ、会合における採択の可否を決定し、EFDB 編集委員会の最終判断を求めるという手順で行われました。日本、中国、ブラジル、メキシコ、タイ、オーストラリア、セネガルから、10題の発表がありました。
日本からは、八木上席研究員が 「Monitoring and Modeling of Soil C Stock Change in Japanese Croplands(モニタリングとモデリングによる日本の耕地における土壌炭素蓄積量の変化)」、大倉主任研究員が 「Variation of soil carbon stock in arable land in Japan: 25years monitoring results(日本の農耕地の土壌炭素量の変化: 25年間のモニタリング結果より)」と題する発表を行いました。これらは、農林水産省が国の事業として農耕地を対象に行ってきた土壌環境基礎調査および土壌環境モニタリング調査によって蓄積されたデータをもとに、土壌炭素について解析した結果の報告です。
これらのデータが EFDB に登録されることによって、世界中の人々がデータや排出係数を参照することができます。とくに、自国内では十分な量と質の調査データが確保できない時、土壌の種類、耕作方法や施肥の状態などの土壌管理が類似していれば、インベントリー作成の参考値として利用できます。
現在、EFDB には、土壌炭素について、IPCC ガイドライン(1996年改訂版や2006年版)のデフォルト値や欧州環境局のデータなどが登録されていますが、概略的であったり、地域の偏りがあったりするため、より多くのデータの登録が求められています。とくに水田土壌というモンスーンアジアでは重要な土壌や、黒ボク土に代表される火山灰から形成されている土壌について、日本の土壌モニタリングの蓄積は他国に類を見ない実績であることから、EFDB への登録を歓迎するという結論を得ました。
今後は、これらのデータを解析した学術論文の公表と、EFDB への登録形式について、とくに各国のインベントリー作成者が参考にしやすいよう、土壌の種類について国際的な分類名に対応し、作物や施肥の状態などの情報をあわせて提供することなどが求められました。
(農業環境インベントリーセンター 大倉利明)