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情報:農業と環境 No.112 (2009年8月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第6回 日仏セミナー(2009年6月、フランス)
6th INRA-AFFRC-Universities French-Japanese Seminar on Food Safety, Novel Food, and Sustainable Environment to Promote Animal and Human Health

農林水産技術会議事務局とフランス国立農学研究所 (INRA) が共同で開催する日仏セミナー (6th INRA-AFFRC-Universities French-Japanese Seminar on Food Safety, Novel Food, and Sustainable Environment to promote Animal and Human Health) に参加するため、2009年6月7日から12日までの6日間、フランスのヴェルサイユにある INRA 研究センター (INRA Research Center) を訪問しました。

このセミナーは、2003年から日本とフランスで交互に開催されており、第5回は2007年10月に日本の箱根で開催されました。第6回のセミナーが開かれたヴェルサイユは、パリの南西約17kmの位置にあり、フランス絶対王政の象徴的建造物で世界遺産にもなっているヴェルサイユ宮殿が有名です。セミナーの会場となった INRA 研究センターは、このヴェルサイユ宮殿の敷地内、宮殿のすぐ裏側という、宮殿見学には絶好の立地条件にありました。

私たちが訪れた6月は天気が変わりやすく、朝は晴れていても昼には雨が降るというような、雨具の欠かせない毎日でしたが、気温は20度前後と涼しく湿度も低い、清々(すがすが)しい気候でした。

このセミナーは、日本とフランスの2か国だけの会議ですが、INRA はフランス国内の多くの大学と連携体制を構築しており、私たちが取り組んでいる土壌環境修復に関する先進的な研究情報を、効率的に収集・交換するには最適の場といえます。今回は、農業環境技術研究所から、高木、山崎、片岡の3名が参加しました。セミナーでは Charpentier 博士 (フランス側のリーダー) と Mench 博士らの出席を得て、平成21年度の具体的な共同研究・交流計画について討議しました。

セミナーは、8つのワークショップ (口頭発表) から構成されていました。私たちは、ワークショップ: Impacts and bioremediation of pesticides (農薬の影響とバイオレメディエーション)において、以下のタイトルの発表をしました。

高木: “Bioremediation of PCP·HCB-contaminated soil by using charcoal enriched with bacterial consortium PD3”

山崎: “Bioremediation of multi-triazines-contaminated soil by charcoal enriched with bacterial consortium”

片岡: “Degradation of dieldrin by soil fungi isolated from the annually applied soil with endosulfan”

残留性有機汚染物質 (POPs: Persistent Organic Pollutants ) は、2001年に採択されたストックホルム条約で12物質が対象化合物となっており、早急な対策が求められていますが、それら汚染物質の分解・除去は難しく、その技術はそれほど進んでいないのが現状です。

微生物による環境修復は、低濃度で広範囲に散在するこれら汚染物質の分解・除去を効率よく行える技術として注目されています。しかし、目的の化合物を分解する微生物をどのように単離し使用するかなどは、論文情報の範囲では十分に技術転移ができない難しさがあります。そのため、プロジェクトの推進に反映するため、日本とフランスの双方の課題担当者が最新の研究成果を報告し、直接議論することが必要です。

また、私たちが担当している 「POPs」 プロジェクト (農林水産省委託研究 「生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発」 中の研究課題 「野菜等におけるPOPsのリスク低減技術の開発」) では、畑地における野菜栽培が対象であり、POPsの使用開始から農薬登録の失効まで、日本と類似の経緯を持つフランスからの情報は、日本にとって、とくにPOPsの残留が顕在化している東日本において、きわめて有益だと感じました。

その他のワークショップは以下の通りです。

“Microbial food safety”

“Plant genome annotation”

“Risk assessment, Remediation and risk management of soils contaminated with hazardous trace elements”

“Food from clones”

“GMO detection, co-existence and traceability of GM and non-GM supply chains”

“Mycotoxins”

“Genomic and immune response of domestic animals”

2日間のセミナーの間に、フランス側のバイオレメディエーション研究者である Martin 博士と、今後の研究方向や共同研究についての話し合いを行うことができました。3日目には、INRA のバスでランス大学へ向かい、Christophe 博士から減農薬ブドウ栽培についての最新の研究報告がありました。その後、またヴェルサイユに戻り Charpentier 博士、Mench 博士と、今後の研究交流や両国における農業環境問題について議論しました。

今回のセミナーに参加したことで、私たちのPOPsに対する研究をフランス側にアピールでき、今後の共同研究にも有意義なセミナーとなりました。

INRA Research Center(写真)

写真1 INRA Research Center

日仏セミナーの会場(写真)

写真2 日仏セミナーの会場風景

ヴェルサイユ宮殿を背景に日本側参加者全員とフランス側参加者(左から)Mench博士,Bertheau博士(写真)

写真3 ヴェルサイユ宮殿と参加者
日本側参加者(全員)とフランス側参加者(左から Mench 博士、Bertheau 博士)

(有機化学物質研究領域 高木和広・片岡良太)

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