農業環境技術研究所の加茂綱嗣 生物多様性研究領域主任研究員が、「天然シアナミドの発見とその分布に関する研究」で、 植物化学調節学会奨励賞を受賞することが決まりました。この賞は、「植物の化学調節の進歩に寄与する優れた研究をなし、将来の発展を期待し得る正会員に授与する」ものです。
2009年10月29日から東北大学片平キャンパスで開催される植物化学調節学会第44回大会で、授賞式が行われます。
授賞業績は次のとおりです。
天然シアナミドの発見とその分布に関する研究
加茂綱嗣
(農業環境技術研究所 生物多様性研究領域 主任研究員)
研究内容:
1898年にドイツで最初に化学合成されたシアナミドは、殺菌・殺虫・除草効果を示した後、土壌中で速やかに分解され窒素源として作物に吸収される優れたアグロケミカルである。農業分野以外にも合成原料や抗酒薬など、20世紀以降さまざまな目的で利用されてきた。長い間シアナミドは天然には存在しないと考えられていたが、本研究においてこの化合物が天然物としても存在することを発見した。
ソラマメ属のナヨクサフジ粗抽出液から、主要な植物生長阻害活性成分としてシアナミドを単離した。安定同位体標識の取り込み実験結果より、シアナミドが天然物であることを証明した。また、植物界におけるシアナミドの分布を調べるため、553種の高等植物を対象とした分析も行った。ナヨクサフジの他に、同じソラマメ属のクサフジ、ハリエンジュ属のニセアカシアのみにシアナミドの蓄積が認められたが、これら以外の種における含量はすべて定量限界値 (1mg/kg新鮮重) 以下であった。このことから、植物界においてシアナミドを蓄積する種の分布はきわめて局所的であることが示唆された。