2010年には、日本でも世界でも、さまざまな事件やできごとがありました。ここでは、研究所内から寄せられた農業環境にかかわるニュースをご紹介します。
気象庁が12月に発表した速報値によると、2010年の世界の平均気温は平年差+0.36℃で、1891年の統計開始以来第2位の高い温度になると予想される。陸域に限ると平均気温の平年差は+0.68℃で、統計開始以降の最高記録になりそう。
・ 2010年(平成22年)の世界と日本の年平均気温について(速報) (気象庁)
一方、大気中の主要な温室効果ガス濃度はいずれも増え続けている。2009年の濃度は過去最高で、二酸化炭素(CO2)386.8ppm(工業化以前は約280)、メタン(CH4)1803ppb(工業化前 約700)、一酸化二窒素(亜酸化窒素)(N2O)322.5ppb(工業化前 約270)。(ppmは体積比100万分の1、ppbは体積比10億分の1)
・ 世界の主要温室効果ガス濃度は過去最高値 〜WMO温室効果ガス年報第6号の発行〜 (気象庁)
日本では7月から9月にかけて平年を大きく上回る高温が続き、各地で夏の平均気温の最高値や猛暑日(日最高気温35℃以上)、真夏日(日最高気温30℃以上)の記録を更新した。高温不稔と登熟不良による米の不作、野菜や果物の価格高騰や品質低下など深刻な影響があった。
・ 2010年(平成22年)の日本の天候(速報) (気象庁)
気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)が11月から12月にかけてメキシコで開催され、先進国と途上国の両方の排出削減の努力、途上国の温暖化対策の支援などを含む「カンクン合意」が採択された。2013年以降の国際的枠組みは2011年のCOP17で検討される
3月に地球温暖化対策基本法案が閣議決定された。温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標として、2020年までに1990年比25%削減、さらに2050年までに80%削減が明記されている。
・ 地球温暖化対策基本法案の閣議決定について(お知らせ) (環境省)
3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」において、平成21年度にカロリーベースで40%だった食料自給率を、平成32年度にカロリーベースで50%、生産額ベースで70%とする目標が明記された。
2008年に施行された生物多様性基本法に基づく「生物多様性国家戦略2010」が、3月に閣議決定された。2050年の生物多様性の状態を現状以上に豊かなものとすることを中長期目標とし、短期目標として2020年までに、生物多様性の損失を止めるための具体的な対策を実施することを定めている。
「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」第5回締約国会議(COP−MOP5)が10月11日から15日まで名古屋において開催された。輸入された遺伝子組換え生物が生態系や生物多様性に損害を与えた場合の「責任と救済」に関する「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が採択された。
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、10月18日から29日まで名古屋で開催された。新品種の開発などに必要な遺伝資源へのアクセスとその利益の配分(ABS)に関する「名古屋議定書」と、2011年以降の新たな目標を定めた「愛知目標」が採択された。
食品衛生法に基づくコメのカドミウム基準値が、これまでの1.0mg/kg未満から、0.4mg/kg以下に改正された。これにともない、土壌環境基準、農用地土壌汚染対策地域の指定要件も改正された。農業環境技術研究所では、カドミウム汚染水田の土壌を低コストで浄化するための技術を開発している。
・ 土壌洗浄法でカドミウム汚染水田を浄化(PDF) (農環研ニュース No.88)
・ イネを使って環境修復「カドミウム汚染土壌の浄化技術」(当日資料)(PDF) (「農業と環境」129号)
・ イネを使って環境修復「カドミウム汚染土壌の浄化技術」(発表図表)(PDF) (「農業と環境」129号)
茶園の周辺部に維持された「茶草場」には希少種を含む多様な植物相が残されていることが農業環境技術研究所などの調査で明らかになった。
・ お茶生産が守る草原の貴重な植物 (PDF) (農環研ニュース No.87)
・ 農業が育むもう一つの自然「茶草場の生物多様性」(当日資料)(PDF) (「農業と環境」129号)
・ 農業が育むもう一つの自然「茶草場の生物多様性」(発表図表)(PDF) (「農業と環境」129号)
二酸化炭素(CO2)濃度の高い条件下でイネを育てる屋外実験が、茨城県つくばみらい市の水田で開始された。50年後に想定される高CO2濃度の条件で水稲を育てることにより、将来の品種改良や栽培技術開発のための基礎データを得ることが目的。
・ 50年後の生育環境でイネを栽培「高CO2濃度の影響評価」(当日資料)(PDF) (「農業と環境」129号)
・ 50年後の生育環境でイネを栽培「高CO2濃度の影響評価」(発表図表)(PDF) (「農業と環境」129号)
8月から9月にかけて西表島・多良間島(沖縄県)と喜界島(鹿児島県)で正体不明の幼虫が発生し、牧草やサトウキビを食害した。農業環境技術研究所によってアフリカ、東南アジア、オーストラリア、ハワイなどに広く分布する蛾(ガ)の一種アフリカシロナヨトウと同定されたが、侵入経路はわかっていない。
・ 平成22年度病害虫発生予察特殊報第1号 (PDF) (該当するページが見つかりません。2013年12月) (沖縄県病害虫防除センター)
・ 平成22年度病害虫発生予察特殊報第2号 (PDF) (該当するページが見つかりません。2013年12月) (鹿児島県病害虫防除所)
ミツバチが大量に死んだり行方不明になるなど、蜂群崩壊症候群(CCD)が起こっているといわれているが、決定的な原因は不明のまま。
ロシアでは記録的な干ばつによって穀物生産量が大幅に減少、穀物の輸出を規制した。南半球のアルゼンチンなどでも高温と干ばつによる収穫量の減少が心配されている。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書に関して、2009年11月以降、温暖化を誇張したとされる電子メールの公開、報告書記載データの誤りの指摘などが相次いだ。各国の学術団体で構成されるインターアカデミー・カウンシル(IAC)がIPCCの評価手順などを調査し、8月、運営組織の抜本的な改革、手続きの厳格化などを含む改革を勧告した。
・ インターアカデミーカウンシル(IAC)による気候変動に関する政府間パネル(IPCC)レビュー報告書の公表について(お知らせ) (環境省)