農作物中のカドミウム低減対策技術として、これまで客土や水田の湛水管理が行われてきましたが、費用や栽培面で様々な課題を有しています。そこで、新たに開発された土壌浄化技術や農作物のカドミウム吸収抑制技術を分かりやすく整理して 「農作物中のカドミウム低減対策技術集」 を作成し、PDFファイルをウェブサイトで公開しました。
土壌の化学洗浄技術は汚染水田に塩化鉄を溶かした用水を入れて土壌とよく混合し、カドミウムを溶出させて排水することにより、土壌のカドミウム濃度を低減する実規模のオンサイト土壌浄化技術です。カドミウム高吸収イネ栽培による浄化技術は、カドミウム高吸収イネを「早期落水法(移植後最高分げつ期まで湛水、以後収穫時まで落水)」で2〜3作栽培することにより、土壌のカドミウム濃度を低減する技術です。
また、生産段階における可食部への土壌中カドミウムの移行を抑制する技術としては、低カドミウムイネ品種の育成、水稲におけるカドミウムとヒ素の吸収のトレードオフ、畑作物のカドミウム吸収低減対策および有機性廃棄物を原料とする肥料の施用と作物のカドミウム濃度への影響評価に関する農環研における最近の成果を取りまとめました。農作物へのカドミウム蓄積に対する対策に携わる関係者の施策立案や研究開発の一助となることが期待されます。
目次
はじめに
1. 土壌浄化技術
1) 土壌の化学洗浄による浄化技術
2) カドミウム高吸収イネ品種による浄化技術
2. 土壌中カドミウムの吸収、移行抑制技術
1) 低カドミウムイネ品種の育成
2) 水稲におけるカドミウムとヒ素の吸収について
3) 畑作物のカドミウム吸収低減対策
4) 有機性廃棄物を原料とする肥料の施用と作物のカドミウム濃度
おわりに
引用文献