2011年12月6日(火)、農業環境技術研究所公開セミナー 「微生物ゲノム情報の活用による温室効果ガス研究の新展開」 が、つくば国際会議場で開催されました。
この公開セミナーは、微生物のゲノムやメタゲノムの情報を活用し、生態系において温室効果ガス発生に関与する微生物の研究に取り組み、先進的な成果をあげている研究者の講演を通じて、農業環境分野におけるゲノム情報の活用と物質循環の制御の研究方向について考えることを目的としました。
メタゲノムとは、ある生物のもつすべての遺伝子セット(遺伝情報)を意味する「ゲノム」という言葉に、「高次」を表す接頭語「メタ」を付けて、十数年前に作られた新しい言葉です。土壌や海水、湖沼などさまざまな環境から直接抽出したDNAを一つのゲノムと見立て、さまざまな生物のゲノムの集合体を意味しています。さまざまな環境から得られたメタゲノムの遺伝子配列を網羅的に解析し、農耕地からの温室効果ガス発生に関与している微生物群などを把握し、ガス発生量を制御する技術を開発する上で、メタゲノム解析手法の活用が期待されます。
このセミナーでは、独立行政法人農業環境技術研究所がこれまで実施してきた、環境中から抽出したDNAあるいはRNAを用いた温室効果ガス発生に関与する微生物の生態・機能に関わる研究や、メタゲノム解析を用いた水田あるいは畑地からのガス発生に関わる研究が紹介されました。また、深海由来のメタゲノムを代謝マップと関連づけて解析した研究や、メタゲノム情報に環境を特徴付けるさまざまな環境情報を結びつけた 「地球データベース」 構築の研究など、この分野の先駆的成果が紹介されました。
参加者の総数は106名で、所属の内訳は、大学37名、研究独法(農環研を含む)47名、都道府県8名、企業・団体11名などでした。
当日のプログラムは以下のとおりです。
公開セミナープログラム
(1) 開会あいさつ
(独)農業環境技術研究所 理事長 宮下C貴
(2) 農地土壌における硝化菌の生態と窒素動態
早津雅仁 (独)農業環境技術研究所
(3) メタゲノム解析による水田脱窒機構の解明
妹尾啓史 東京大学大学院
(4) マメ科植物根圏のN2O発生機構と抑制技術シーズ
南澤 究 東北大学大学院
(5) 土壌からのRNA抽出法の確立と土壌における窒素代謝遺伝子の発現解析
王 勇 (独)農業環境技術研究所
(6) 水田生態系におけるメタン生成菌の多様性と機能
浅川 晋 名古屋大学大学院
(7) メタゲノムから見える極限環境の代謝ポテンシャル
高見英人 (独)海洋研究開発機構
(8) 生態系の理解に向けたゲノム情報の解析と活用
黒川 顕 東京工業大学大学院
(9) 閉会あいさつ
(独)農業環境技術研究所 理事 岡 三コ