3月に宇都宮大学で開催された日本育種学会2012年春季大会において、農業環境技術研究所土壌環境研究領域の安部 匡 特別研究員、倉俣正人 特別研究員、石川 覚 主任研究員らが、平成23年度日本育種学会論文賞を受賞しました。
この賞は、日本育種学会 が発行する Breeding Science および育種学研究に掲載された原著論文のうち、植物育種学の進歩に寄与する優れた論文に対して贈られるものです。
今回の受賞の対象となった論文は、「土壌の効率的なカドミウム浄化に貢献するイネのカドミウム集積関連QTLの同定」( Abe, T. et al. (2011): Detection of a QTL for accumulating Cd in rice that enables efficient Cd phytoextraction from soil, Breeding Science, 61(1), pp.43-51 ) です。
この研究では、カドミウム(Cd)高集積イネ品種である Jarjan が持つ主要なCd高集積 QTL (量的な形質を制御する遺伝子座) が第7染色体に位置することを明らかにし、この Jarjan 型の QTL を導入したコシヒカリの系統は、導入していない系統に比べ、5倍以上高いCd集積を示すとともに、導入系統を栽培した後の土壌Cd濃度は栽培前の8割減となることを実証しました。この研究によって、ファイトレメディエーション (植物による土壌浄化) に利用できる実用的なイネ品種開発に役立つ QTL を特定するとともに、実用的なイネ品種育成の可能性を示したことが学会で高く評価されました。