GRA農地研究グループ会合(11月 米国) 参加報告
2013年11月7日に米国のタンパ(フロリダ州)市内で開催された、農業分野の温室効果ガスに関するグローバル・リサーチ・アライアンス (GRA) 農地研究グループ (Croplands Research Group) の会合に、農業環境技術研究所の岸本文紅が参加しましたので、報告します。なお、GRA については「農業と環境」の No. 133、No. 134、 No. 135 をご参照ください。
農地研究グループは、米国とブラジルを共同議長とし、今回は第5回のグループ会合でした。会合には33のメンバー国のうち22か国 (オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、スペイン(Skype参加)、スウェーデン、スイス、イギリス、米国、ウルグアイ) からの出席がありました。さらに、外部パートナーである CCAFS (Research program on Climate Change, Agriculture and Food Security ) のメンバーや米国農業省・農業研究サービス(USDA-ARS)および大学の研究者も多数出席しました。
会場となった Marriott Waterside ホテル
農地グループ会合の参加者
農地グループは基本的に下記の3つのコンポーネントにおいて、それぞれのアクションプラン(Action plan)をまとめ、活動を展開しています:
- コンポーネント1: Quantifying net GHG emissions in cropland management system-MAGGnet (温室効果ガス純排出・吸収量計測のためのモニタリング・ネットワークMAGGnet)(コーディネート国:米国/フランス)
- コンポーネント2: Assessing GHG emissions in agricultural peatlands and wetlands (泥炭地、湿地での温室効果ガス発生)(コーディネート国:ノルウェー)
- コンポーネント3: Modeling C and N emissions(炭素と窒素排出のモデル化)(コーディネート国:フランス)
今回の会合は、前回の会合(2012年7月、イタリア) で提案された各コンポーネントの Action Plans についての進捗状況や解決すべき課題についての議論、新しい Action Plan の提案など、いままでよりも議論が活発化し、GRA の枠組みの下で加盟国による共同研究の促進効果がみられました。おもな進展を簡単に紹介します。
- コンポーネント1: GRA 農地温室効果ガスネットワーク MAGGnet の登録サイトは、前回の10か国123サイトから16か国202サイトへ大幅に増加しました(日本からは9サイト登録)。MAGGnet の形成を加速させるため、資金獲得に向けて国際研究プログラムへ応募しました (日本は研究パートナーとしても参画)。データ利用ポリシーについて議論があり、基本的に論文などで公表されたデータセットのみ格納することで合意しました。
- コンポーネント2: 泥炭地の農業利用および温室効果ガス削減に関するレビュー論文 (Peatlands in agriculture and considerations for greenhouse gas mitigation) がまとめられ、もうすぐ投稿される予定です。
- コンポーネント3: 炭素窒素循環横断的ワーキンググループ (Soil Carbon & Nitrogen Cycling Cross-Cutting Group;以下、CN 循環グループ)とともに、農耕地土壌の N2O モデルの精度向上のため、GRA の枠組みの下でモデルと観測より一層連携を促進するため、ワークショップを企画しました(2014年3月17−19日、フランス(パリ)で開催予定)。また、広く使われている DNDC モデルについて、モデルのパフォーマンスの向上やバージョン管理のため、DNDC ネットワークを立ち上げ、GRA のモデルプラットフォームを構築しました(まだ試行段階)。今後各メンバー国の利用者とともに、完成・改善していく予定です。
2011年から農地グループ会合および活動に関わって3年になりますが、メンバー国のあいだの研究者ネットワークが確実に広がっていることを実感しました。今後は MAGGnet へのインプットおよび統合解析に向けて共同研究関係を強化するとともに、GRA 関連情報を日本国内の研究者にも広く発信していきたいと考えています。
(物質循環研究領域 岸本 文紅)