農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンターの高田裕介研究員らの共著論文が、日本ペドロジー学会論文賞を受賞しました。
日本ペドロジー学会は、土壌の生成、分類および調査の分野の研究の発展と知識の普及をはかり、自由な討論の場をつくることを目的として設立され、会誌「ペドロジスト」の発行、野外巡検、シンポジウムの開催などを行っている学会です。
日本ペドロジー学会論文賞は、「ペドロジスト」誌に公表された学会会員によるオリジナル論文の中から、2年に1回選考して表彰するものです。10月25日に仙台(東北大学)で開催された日本ペドロジー学会2013年度大会で表彰が行われました、
受賞論文の概要は以下のとおりです。
わが国の赤黄色土における粘土集積層と風化変質層の分類学的位置づけ
高田裕介、前島勇治、大倉利明、神山和則、浜崎忠雄、小原 洋
ペドロジスト 54(1), 11-20 (2010)
(概要)
日本には赤色や黄色の土色をもつカラフルな土壌が分布しています。わが国の土壌分類体系では、これらの土壌を土色の違いによって赤色土と黄色土に区分していました。しかし、両土壌ができるまでには長い年月(生成年代)を要する点や風化程度がかなり進行している(強風化土壌)などといった性質は両者で類似していました。また、世界的に用いられている土壌分類体系では、土色のみで土壌を分類しておらず、粘土集積層*1や風化変質層*2の有無によって土壌を分類しているため、わが国の土壌分類と世界の土壌分類を対比することが難しい状況でした。
そこで、わが国の赤色土や黄色土が一般的にもつ粘土集積層*1や風化変質層*2の理化学性の比較を全国規模で行うことで、わが国の赤黄色土における粘土集積層と風化変質層の分類学的な位置づけを行いました。
土壌の風化程度を示す理化学的指標に差が見られること、また、粘土集積層は安定した地形面で発達しやすく、風化変質層は山地や丘陵地などの侵食を受けやすい地形で発達しやすいことなどから、粘土集積層をもつ赤黄色土は風化変質層をもつものよりも風化がより進行していると考えられました。わが国の赤黄色土を分類する際には、まず、粘土集積層か風化変質層の有無で土壌を類別し、そのつぎに、土色により分類することを提案しました。
これらの結果は農環研が作成した 包括的土壌分類第1次試案 の赤黄色土大群の分類基準に取り入られています。
*1 粘土集積層: 粘土が上層や下層に比べて明らかに多くなる層位で、この層位が生成するためには長い年月を必要とします。
*2 風化変質層: 土色が上層や下層に比べて明るくなるか、粘土が上層や下層に比べて若干増加する層位です。