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情報:農業と環境
No.2 2000.6.1

 
No.2

・Earth Day 2000

・COD・N・Pに係わる総量規制基準の設定方法の改正・設定に関する検討会を開始

・OECD:「農業と環境」に関する出版物の紹介

・平成12年度 構造改善局農村環境保全室と農業環境技術研究所との連絡会開催

・シンポジウム:FACE2000国際会議

・OECD:「農業と環境」JWPワークショップ

・国連持続可能な開発委員会(CSD)第8回会合における持続可能な農業及び農村開発に関する事務総長報告

・国連持続可能な開発委員会(CSD)第8回会合における農業に関する決定事項


Earth Day 2000
http://www.worldwatch.org/system/files/EP132A.pdf

(ページのURLが変更されました。2015年1月)
 



 
 
 環境汚染が進む地球を見つめなおそうという市民運動(Earth day)が,1970年4月にアメリカで開始され,今年で30年が経過した。この30年でなにが変わったか?
 「地球白書」で有名なWorld Watch Instituteは,この春に報告書「Earth Day 2000」を公表し,次の4つの項目を掲げて,30年間にわたる経年変動をグラフ化し解説している。 要約すると次の通りである
 
● エネルギーと気候
 増え続ける人口によって,人類の生存に不可欠な石炭や石油などのエネルギー源の燃焼が増大した。これは,太古の植物が数百万年かけて地下深い場所に堆積した炭素を大気中に放出することに相当する。地球は保温性のよい毛布,すなわち二酸化炭素でスッポリと覆われた状態になった。こうして,地球の平均気温は著しく上昇し,現在の気候のシステムが破壊されつつあると予想されている。実際,気象災害の被害額は年間40倍以上に膨らんでいる。

(記載データ)二酸化炭素濃度・化石燃料燃焼量・世界の気温・暴風災害
(解 決 策)持続可能な日射・風力・水素エネルギーシステムへの緊急な移行
(重要な兆候)化石燃料使用量の伸び鈍化・原子力エネルギーの減少傾向・最大風力の記録更新・図のスケールに収まらない程の地球の気温上昇・炭素放出量の減少傾向
 
 化学物質と生物学的ブーメラン現象
 人類による化学物質の大量消費が進んでおり,毎日3種の新規物質が出回っている。しかし,それらの化学物質が健康や環境へどのような影響を及ぼすのかは,ほとんど明らかになっていない。人類は新たな問題が明らかになっては,その対策をするということを繰り返してきた。農薬の使用量が増大するに従って,薬剤に耐性を持つ害虫や有害微生物,雑草が増加しつつあるといった不気味な現象が起こっている。

(記載データ)有機化学物質の世界生産量・世界の農薬使用量・薬剤抵抗性雑草数・薬剤抵抗性作物病害数
(解 決 策)有機農法への大規模な転換・合成化学物質の大量消費からの脱却・化学工業への予防対策原則の適用
(重要な兆候)遺伝子操作作物の急増・薬剤抵抗性種の増加
 
● 人口と土地
 この30年間に,20世紀中期以前の過去10万年間に匹敵する人口が増加した。人口が増加すると同時に,人間ひとりが利用する土地面積も拡大した。この二重の要因によって,農地や林地への人間活動の影響が加速された。

(記載データ)世界の人口・自動車台数・1人当たり穀物栽培面積・森林面積
(解 決 策)特に女性の経済および社会的地位の向上による人口の安定化・自宅,仕事場,買い物,学校の間の移動距離を短縮して車よりも公共輸送,自転車,徒歩に重点を移すような都市計画の実施
 
 貿易と海洋資源
 過去30年間で世界経済の規模は二倍以上になった。その結果,ほとんどの国で貿易輸出収入を増加しようと努力してきた。もはや人口の増加に穀物生産が追いつかなくなったため,多くの国がもっと海洋魚を売ることによって収入を高めようとしている。この結果,過剰な漁獲により資源量が年々減少し,漁獲量は年々先細りになっている。

(記載データ)世界全体生産額・世界の漁業船舶総トン数・漁業船舶トン当たり漁獲量・世界魚類捕獲割合・大西洋のPerch漁獲量
(解 決 策)人口増加の安定化・漁船への補助金廃止・海洋魚を餌とする養殖の禁止
(重要な兆候)漁業の衰退
 

COD・N・Pに係わる総量規制基準の設定方法の
改正・設定に関する検討会を開始
−中央環境審議会水質部会・総量規制基準等専門委員会−

 




 
 
 平成12年2月に行われた中環審の「次期(第5次)水質総量規制に関する答申」を受けて、環境庁長官は、中環審に対して「水質に係る化学的酸素要求量の総量規制基準の設定方法並びに窒素及び燐の総量規制基準の設定方法及び汚濁負荷量の測定方法等の設定について」諮問を行った(平成12年2月、諮問第83号)。
 これを受けて、中環審は水質部会総量規制基準等専門委員会において「化学的酸素要求量(COD)に係る総量規制基準の設定方法の改正と第5次水質総量規制に新たに加わる窒素・燐に係る総量規制基準の設定方法及び汚濁負荷量の測定方法等」の検討を開始した(平成12年4月28日、第1回専門委員会開催)。
 同専門委員会における具体的な審議事項は下記のとおりであり、本年秋を目途に答申案となる専門委員会報告を作成し、水質部会へ報告する予定である。
 
【総量規制基準等専門委員会審議事項】
 (1)総量規制基準の算式
 (2)総量規制基準に係る業種その他の区分及びその区分ごとの範囲
 (3)窒素及び燐に係る汚濁負荷量の測定方法等
 
[追記]
1.審議事項 (1)における算式は、CODに係る L=C x Q x 10-3 であり、N・Pに関しても同式が適用されるものと思われる。この式において、L:排出が許容される汚濁負荷量(kg/日)、C:都道府県が定める一定の化学的酸素要求量(mg/l)、Q:特定排出水の量(m3/日)
2.審議事項(2)の範囲は、C値の範囲であり、CODについては、業種ごとに上限値と下限値(範囲)が設定されている。この範囲は国が決めることになっており、このC値の範囲を同委員会で検討する。
3.同委員会における検討の対象となるのは、特定事業場=排水量が50m3/日以上の工場・事業場(232業種)である。農業分野が係わる業種は、畜産農業、食品工業、肥料製造業、飼料製造業、農薬製造業等である。
4.いわゆる面源については、同委員会における検討の対象とはせず、同時並行的に環境庁と関係省庁との協議によって対策を検討するようである。
5.同委員会には、当所環境研究官が専門委員として参画している。
 

OECD:「農業と環境」に関する出版物の紹介
 


 
 
 OECDでは,「農業と環境」に関連する研究書を発行している。参考までに,新しく発刊された一部を紹介する。
 
● Environmental Indicators for Agriculture, Volume 1: Concepts and Framework/Volume 2: Issues and Design, "The York Workshop" (農業環境指標)
本書は,農業環境指標分野の専門家を集めて1998年に,英国のヨークで開催されたOECDのワークショップの結果をまとめたもの。1)適切な指標の確認と構想,指標の測定や換算に用いられる手法,2)政府などの利用者が政策目的にどのように指標を利用するかなどを検証している。OECD加盟国の事例が数多く解説されている。
216p, \4,750
 
● The Environmental Effects of Reforming Agricultural Policies (農業政策改革がもたらす環境への影響)
OECD諸国における政策遂行から得られた具体的な経験を分析し,農業政策を適切な環境保護措置を伴う政策へと改革することによって,農業は環境を改善しうると結論づけている。
132p, \2,650
 
● Co-operative Approaches to Sustainable Agriculture (持続可能な農業へ向けた共同対処)
OECD諸国では,持続可能な農業を目指して,農家が自発的に地域に根ざした組織を結成しつつある。本書では,こうしたグループを基礎とした自発的な行動が,現在の農業環境政策をどの程度代替し,補完しうるかについて検討している。
108p, \2,500
 
● Agriculture and the Environment: Issues and Policies(農業と環境:問題点と政策)
経済効率の高い農業を維持する一方,資源の持続可能な利用を確保するために,環境に有害な要素を減らし,環境保全に役立つ要素を増進することは,OECD諸国における重要な政策目標になっている。本書は,政策上の主要な問題点と疑問に焦点を当てつつ,どのような原則の下に,どのような戦略を立てるべきかを進言している。
40p, \1,050
 
● OECD Agricultural Outlook 1999/2004: 1999 Edition(OECD農業白書1999/2000 1999年版)
152p, \3,700
 

平成12年度 構造改善局農村環境保全室
と農業環境技術研究所との連絡会開催

 



 
 
 5月16日に上記連絡会が当所で開催された。農村環境保全室からは,河合室長ほか7名のスタッフが,当所からは,藤井環境研究官ほか20名の部科長などが参加した。紹介された内容は,以下の通りで、これについての意見交換が行われた。
 
 【農村環境保全室】
●農村の環境保全を巡る動き
●環境基本計画の見直しについて
●農業(水稲)用水基準をめぐる情勢
●農村環境保全室における調査の概要
 
 【農業環境技術研究所】
●カドミウムを巡る研究動向
●ダイオキシンの農耕地からの流出問題
●水田における生物多様性研究の意義と今後の課題
 
 農村環境保全室では、現行の農業用水基準(全窒素1mg/l、水質環境基準生活環境項目)の見直しを検討する計画でいるが、根拠となるデータの収集が困難であるため、情報の提供を必要としている。これについて、情報交換が行われた。農村環境保全室では、平成12年度から「農業用施設等有害物質実態調査」の中で 農業用用水路および排水路の水と底質を対象に、ダイオキシン類の賦存量調査を実施する予定。これについて、サンプリングおよび調査法に関する意見交換がなされた。カドミウム問題については、対策技術の評価が検討された。生物多様性研究については、希少種の生物についての研究の位置づけについて意見が交換された。
 

シンポジウム:FACE2000国際会議
 


 
 
 農業環境技術研究所は、来る6月27日から4日間、科学技術振興事業団などとの共催でシンポジウムを開催する。
 大気の二酸化炭素の増加が農作物、林木および自然生態系に及ぼす影響、二酸化炭素によるインパクトのモデリングなどについての研究の現状が報告される。さらに、それらの成果をもとに成果の統合と論議が展開される。
 以下に簡単なスケジュールを示す。詳細は当研究所の情報解析・システム研究室(小林和彦)に問い合わせてください。Tel:0298-38-8223 Fax:0298-38-8227
  (対応するURLは現在存在しません。2010年5月)
 
 

OECD:「農業と環境」JWPワークショップ 

「持続的農業経営システムに関する技術の適応」
The OECD Workshop on Adoption of Sustainable Farming System

 





 
 
 平成12年7月4-7日にオランダのワーゲニンゲンで上述のワークショップが開催される。このワークショップの目的は,持続的な農業に関するJWP(合同専門部会)の検討に対して,有用な方向性を示し,材料を提供することが目的である。
 とくに,●特定の農業システムについて適切な農業技術の開発と導入を促進する方法に関する各国の経験の共有,●将来の食料その他農産物の需要に適応した農業経営システムと技術の持続性に関する理解の向上,●農業技術および構造,消費者の嗜好,農業食料産業に関する主要な傾向とこれらが持続的農業経営に与える影響の提示,●農家レベルで持続性を向上させる適切な技術の導入を促進する政府および市場の役割の検討,●農家レベルで持続性を向上させる適切な技術の導入を推進する政策アプローチの確認,が議論される予定である。
 この会議には,農水省から農産園芸局の環境保全型農業対策室の米野課長補佐,農業総合研究所の篠原研究調整官および当所の上沢土壌管理科長の参加が予定されている。
 一方,OECDの持続的発展委員会の第8回会合は,持続的農業と再生可能な資源並びに関連する諸活動に関する検討状況に関して,その目的と概要を2000年4月21日に公表した。この委員会の業務内容は,2001年のOECD閣僚会議に報告され,2002年の「リオプラス10」UNCED会議提出資料の基礎となる予定である。以下,テーマごとにその内容の概要について紹介する。なお,テーマのひとつ「持続的農業」が見出しのワークショップと関連している。
 
 【持続的発展】
 目的は,持続的発展へ移行するために,社会,経済および環境の側面を考慮して,確固として実用的な方針を導き出す政策の評価を行うことにある。2001年の閣僚会議への政策リポートは,持続的発展を強化するための方針を提供する。
 
 【持続的農業】
 目的は,持続的な発展をめざした経済,環境および社会的側面に及ぼす農業の寄与,さらにはより持続的な農業への移行を図るための政策の役割を検討することにある。検討の特徴は,農業による環境への悪影響の視点のみでなく,経済,環境,社会の持続的発展に対する農業の寄与へと視点が移行していることである。
 これに関連した活動のひとつに,上述した「持続的農業経営システムに関する技術の適応」と題するワークショップがオランダのワーゲニンゲンで開催される。
 
 【再生可能な資源】
 持続的な発展をめざす状況で,人類の福祉を高めるような様々な形の資産を結合,代替,リサイクルする可能性を考慮して再生可能な資源(漁業,林業,エネルギー,生物多様性,水,無機物)の管理を分析することが目的。
 
 【農業環境影響指標】
 OECD各国の農業に関わる環境や再生可能な資源の現状や変化の傾向をまとめ,これを定量化すること,また,今後の見通しを含めて,農業環境影響のプロセスと因果関係の理解を深めること,さらに,農業環境政策を分析・監視・評価する手法を提供することが目的。
 
 【農業環境政策分析】
 農業の環境便益効果を強化する政策をレビュー・評価し,よりよい施策の展開に向けて助言することが目的。詳細は, (対応するURLは現在存在しません。2010年5月) を参照してください。
 

 


国連持続可能な開発委員会(CSD)第8回会合における
持続可能な農業及び農村開発に関する事務総長報告

 
 
(概要)
 1992年のUNCEDで採択されたアジェンダ21の進捗状況をレビューする委員会(CSD)が国連に設置されている。今年の第8回CSD(2000年4月24日〜5月5日)では、アジェンダ21の第14章(持続可能な農業及び農村開発:SARD)で取り上げたプログラム領域がどの程度前進したかがレビューされた。第14章の事務局はFAOであるため、事務総長報告はFAOが作成し、FAOの活動を中心にした記述になっている。国連CSD委員会のホームページ<http://www.un.org/esa/dsd/index.shtml (最新のURLに修正しました。2010年5月) >から、事務総長報告を紹介する。
 国連全体では、農業問題は途上国中心にならざるをえず、第8回CSDの事務総長報告では、OECDでの論議とは違った問題が多くを占めているが、特に下記が注目される。
1)これまで食料生産は人口増加率を上回る勢いで伸びてきたが、アジア経済危機を契機に食料生産の伸び率が鈍化し、1998年には世界全体の前年度に比した伸び率はゼロとなった。その原因は、依然として経済移行国の食料生産が減少していることと、途上国では極東・オセアニアのエルニーニョの影響であると指摘されている。
2)1990〜97年の間に飢餓人口が年間800万人の割合で減少したが、2015年までに飢餓人口を半減させるという世界食料サミットでの目標を達成するには、途上国における人口増加率を考慮すると、年間2000万人の割合で飢餓人口が減少することが必要であり、このままの趨勢では目標を達成できない。
3)途上国において持続可能な形で食料生産の増強と食料安全保障の強化を図るには、UR農業合意に基づいた農政改革が必要である。先進国ではある程度の農政改革がなされたが、まだ十分ではなく、途上国では農政改革をほとんど実施してない。
4)途上国でSARDを推進するには、外国からの資金導入が必要だが、ODAは減少し続けており、それに代わって、最近増加している外国直接投資に期待が寄せられている。しかし、外国直接投資は農業の外になされており、農業への投資は少ない。農業への外国直接投資を増やすには、農村のインフラ整備がまず必要である。
5)途上国では土地所有制度の改革や地方分権を行って、農業者が主体性を発揮できる制度改革が依然として必要である。
6)耕作可能地がろくに残されていない状況下で、環境保全とマッチした食料生産増強を図るために、土壌肥沃度の低下の生じている途上国において農業の持続可能な集約化を行うことが必要である。その中で、養分源は、化学肥料に加え、農村地域に賦存するオーガニック及び生物系資源を適切に組み合わせることが重要である。
7)今後の課題の一つとして、途上国のSARD推進に必要な資金調達の方策として、京都議定書にあるクリーン開発メカニズムを活用して、先進国の温室効果ガス削減分を途上国に分担してもらう際に、途上国の農業において温室効果ガス排出削減やシンク機能の強化をしてもらい、そのための資金を先進国が提供する方策を提案している。
 
 
(農業・農村開発に関する資料全体の概要)
 アジェンダ21は、その第14章において、2025年に世界人口が83億人に増大し、その83%が開発途上国に生存すると予想されることを重視している。しかし、こうした人口増加に伴う食料等農産物需要増加を満たすのに使える資源及び技術が十分あるかは、依然として不確実である。農業は、既に農地として使用している土地での生産性向上を主体にして、ぎりぎりにしか耕作に適さない土地を蚕食することを避けながら、こうした課題を満たしてゆかなければならない。
 持続可能な農業・農村開発(SARD)のための条件を作り出すには、先進国及び途上国の双方が、国内及び国際の両レベルにおいて、農業、環境及びマクロ経済に関する政策を大幅に調整する必要がある。このために、教育イニシアティブ、経済的インセンティブの活用、新しい適切技術の開発などを行って、栄養的に十分な食料の安定供給、食料供給に対する弱者グループのアクセス、市場の形成、貧困緩和のための雇用と所得創出、自然資源管理と環境保護などを確保しなければならない。
 持続可能な農業・農村開発は、持続可能な開発委員会(CSD)の第3回会合及び国連総会の第9回特別会合で論議された。委員会の多年度作業プログラムでは、2000年に開催されるCSD第8回会合において、主要なセクター問題、土地の総合管理及び農業セクター問題とを相互に関連付けて再び論議することになっている。
 FAOが「持続可能な開発に関する機構間委員会」の事務局を担当している。
 
資料:
 持続可能な農業・農村開発に関する事務総長報告
 同報告書に対する補遺1:都市化と持続可能な農業
 同報告書に対する補遺2:持続可能な農業のためのバイオテクノロジー
 同報告書に対する補遺3:農業、農地及び水の関連性
 持続可能な農業・農村開発:各国の実施動向
 同上補遺:持続可能な森林管理に関する各国の動向
 
 
持続可能な農業・農村開発に関する事務総長報告
Sustainable Agriculture and Rural Development
Report of the Secretary-General (22 pp.)
 
緒言
1.   1997年の国連総会第17回特別会合で採択された持続可能な開発委員会(CSD)の担当する多年度作業プログラムに従って、CSDの第8回会合では、経済セクターとしての農業問題を検討する。レビューに際して「持続可能な農業及び農村開発の促進」と題したアジェンダ21の第14章を特に重視するものの、総会において、CSDに対して、経済目的、社会目的及び環境目的との間の関連性に焦点を当てて、持続可能な開発を幅広い視点から総合的に論議することが要請された。本報告書の作成は、こうしたアプローチに留意しつつ、アジェンダ21の第14章及び関連する章のIACSD(Inter-Agency Committee on Sustainable Development)のタスクマネージャーであるFAOが行った。本報告書には、「都市化と持続可能な農業」、「持続可能な農業のためのバイオテクノロジー」及び「農業、農地及び水の関連性」という3つの補遺文書を添付してある。アジェンダの事項3「土地資源の総合計画と管理」に基づいて提出された事務総長報告とそのアジェンダ(E/CN.17/2000/- and Adds. 1-4)もここでの論議に関係する。これに加え、CSDでの検討のために、家畜生産パターンの変化に関する背景文書をFAOが作成した。また、別の背景文書として、1999年10月にFAOが組織した「農村女性と情報に関するハイレベル会合」の要約もCSDに提出する。
 
2.   1992年の環境と開発に関する国連総会(UNCED)以降、今年は、CSDが土地及び農業問題をレビューする3回目の年に当たる。1995年の第3回CSDでは、多少の前進が報告されたものの、持続可能な農業・農村開発に向けた動きが多くに国において遅いことに失望の念が表明されたことが、委員会で重視された。1997年の第5回CSDでは、それに引き続いて開催された総会で5年目のレビューが行われたが、加盟国から、都市及び農村の貧者に対する持続可能な食料安全保障を速やかに政策的優先事項にすべきであるとの要求が出された。加盟国は、世界食料サミットで採択された、世界食料安全保障に関するローマ宣言と、世界食料サミット行動計画での約束を実行することの重要性を強調し、特に2015年までに世界の栄養の十分でない人達の人数を半分にするという最低目標を達成することを求めた。
 
3.   1995年と1997年のCSDのためにFAOが作成した報告書と同様、本文書には、アジェンダ21の第14章に概説してあるSARDにかかわる政策、戦略やプログラムがどの程度採択されたかに関する情報の進捗状況も含めてある。これに加えて、こうした前進が、UNCED以降の期間において、SARDや世界食料サミット行動計画の主要目標を達成するための経済手段としての農業を助長するのにどのように役立ったかも検討している。また、SARDを経済、社会及び環境という3つの大きなディメンジョンからみたときに、全体的な開発目標の文脈において、農業セクターがどの程度実質的ゲインを実現できたかも検討している。報告書は、経済全体に対する貢献、農村の生活構造の中での位置づけなど、農業固有の特性にも焦点を当てている。これに関連して、一次生産以外の農業の持つ便益をより良く理解するために、オランダ政府とFAOは、第8回CSD会合にインプットするために、「農業及び農地の持つ多面的性格に関する会議」を共催した(マーストリヒト、1999年9月12〜17日)。マーストリヒト会議の議長報告書は、文書(E/CN.17/2000/---)として委員会に提出されている。
 
U.持続可能な農業、食料安全保障及び経済開発
A.農業生産及び食料安全保障の動向
4.   FAOの最新の暫定推計値によると、1998年における世界全体の農業生産(作物及び家畜)は、1997年と同レベルに停滞した。1998年は、1990年代10年間で生産拡大の起きなかった唯一の年である。先進地域及び途上地域の両者で生産が減少したと推計されており、途上国では1989年以来最悪の年となった。表1に、FAOの用いている地域グループ別に、1991年〜1998年(暫定値)の年率%変化を示す。
 
 
表1 1991〜1998年における作物及び家畜生産の年率変化(前年に対する%変化)
地域
 
1991
 
1992
 
1993
 
1994
 
1995
 
1996
 
1997
 
1998
 
1994-98の平均
世界 0.4 2.2 0.6 2.9 2.1 3.7 2.4 0.0 2.2

先進国

-2.9

0.8

-4.0

0.9

-1.8

3.0

1.2

-1.3

0.4
 北アメリカ -0.4 7.7 -7.8 14.5 -4.7 4.6 2.8 0.8 3.6
 西ヨーロッパ 0.6 1.1 -3.1 -1.1 -0.1 4.2 -0.1 -0.4 0.5
 東ヨーロッパ -1.9 -5.8 1.2 -8.4 4.6 -1.2 1.6 -0.8 -0.9
 CIS --- --- -3.9 -14.4 -4.3 -3.3 0.4 -10.8 -6.5
オーストラリア、ニュ
ージーランド、日本
-1.0
 
3.1
 
-1.2
 
-1.0
 
3.5
 
3.6
 
1.8
 
0.3
 
1.6
 

途上国

3.0

3.4

4.0

4.3

4.7

4.2

3.1

0.8

3.4
 サブサハラアフリカ 6.0 0.2 3.5 3.2 3.4 5.6 -0.4 0.7 2.5
 極東及びオセアニア 2.8 4.4 5.8 4.7 5.3 3.9 4.4 -0.3 3.6
ラテンアメリカ及びカ
リブ海諸国
2.8
 
1.2
 
0.3
 
4.7
 
4.9
 
1.8
 
3.0
 
2.5
 
3.4
 
 近東及び北アフリカ 2.5 3.4 1.3 0.9 1.0 10.3 -3.5 6.6 3.1
ソース:FAO, “The State of Food and Agriculture”, 1999年11月
 
 
5.   途上国における生産後退の最重要要因は、中でも最大の生産国である中国、インド、フィリピンを含む極東及びオセアニア地域において、様々な気象問題(豪雨と洪水やエルニーニョ関連の干ばつ)によって生産が大幅に低下したことである。ラテンアメリカやカリブ海諸国では2回の巨大ハリケーンを含む悪天候で農業生産が破壊され、アフリカのサブサハラでは2年連続の天候不順に加え、民族対立の継続によって、生産が影響を受けた(1997年の急激な低下からは若干の回復がみられる)。近東及び北アフリカだけは、前年の大幅な落ち込みからの回復以上に1998年には農業生産がある程度増加した。
 
6.   先進国の中では、東及び西ヨーロッパ諸国での作物及び家畜生産の減少はわずかであったものの、独立国家共同体(CIS)のいくつかの国ではかなり減少した。北アメリカ、及び、オーストラリア・ニュージーランド・日本では総合するとわずかな増加となった。
 
7.   また、表1は、1994〜98年には途上国の生産増加の伸びが先進国を上回り、世界全体での農業生産の年間平均伸び率が2.2%であったが、これに比べて、1998年の世界的農業生産の停滞は好ましくないことを示している。事実、サブサハラのアフリカだけは1994〜98年において農業生産の年平均伸び率が人口増加率を上回ることができなかった。しかし、この10年間全体を通せば増加が生じたものの、1998年及び1999年には深刻な食料不足に陥っている国の数が37に達し、この2年間にFAOの「特別救援作戦サービス」が介入する必要のあった国は64か国に達した。
 
8.   FAOの新しい刊行物である「世界の食料不安定性の現状、1999年」(The State of Food Insecurity in the World, 1999)<http://www.fao.org/docrep/007/x3114e/x3114e00.htm (最新のURLに修正しました。2010年5月) >には、飢餓状態にある人々の数に関する最新のデータと、その背後にある理由が記されている。最新の推計値によると、途上国における飢餓人口の数は引き続き減少しており、1990-92年の8億3000万人が、1995-97年には約7億9000万人に減少した。表2と3に、過去約30年間の栄養不良人口の推計値をFAOの地域グループ別に、パーセントと絶対値とで示す。ここで、大方の途上国地域では飢餓人口の絶対数が減少又は上下しているのに対して、サブサハラ・アフリカでは飢餓人口数が一貫して上昇していることが注目される。しかも、他の地域と対照的にサブサハラ・アフリカの栄養不良人口のシェアは過去26年間にほとんど変わっていない。
 
表2 途上国地域における栄養不良人口のパーセント
1969-71、1979-81、1990-92及び1995-97

 
栄養不良人口のパーセント
1969-71 1979-81 1990-92 1995-97
サブサハラ・アフリカ 34 37 35 33
近東及び北アフリカ 25 9 8 9
東及び東南アジア 43 29 17 13
南アジア 38 38 26 23
ラテンアメリカ及びカリブ海諸国 19 13 13 11
全開発途上地域 37 29 20 18
ソース:FAO, “The State of Food and Agriculture”, 1999年11月
 
 
表3 途上国地域における栄養不良人口の数
1969-71、1979-81、1990-92及び1995-97

 
栄養不良人口の数(100万人)
1969-71 1979-81 1990-92 1995-97
サブサハラ・アフリカ 89 126 164 180
近東及び北アフリカ 45 22 26 33
東及び東南アジア 504 406 283 241
南アジア 267 338 299 284
ラテンアメリカ及びカリブ海諸国 54 46 59 53
全開発途上地域 960 938 831 791
ソース:FAO, “The State of Food and Agriculture”, 1999年11月
 
 
表4 工業国及び経済移行国における栄養不良人口の割合と数、1990-92年及び1995-97年

 
栄養不良人口の% 栄養不良人口の数(100万人)
1990-92 1995-97 1990-92 1995-97
工業国 1 1 9 8
経済移行国 5 6 20 26
全先進地域 2 3 29 34
「世界の食料不安定性の現状、1999年」
 
 
9.   「世界の食料不安定性の現状、1999年」では、初めてのことだが、先進国の飢餓人口についても、工業国と経済移行国に分けて推計した。これらの数値を表4に示す。全体として、栄養不良人口は3400万人、人口の3%と推計されるものの、この数値の大方、並びに、この10年間の当初以降に増大したことの大方は、経済移行に伴って飢餓が増加したことに起因することは明白である。
 
10.   最新のFAOデータでは、1990-92年と1995-97年の間に、飢餓人口が平均年間約800万人の割合で、総計4000万人減少した。この減少年率は以前に推計した値よりも大きく、希望を与えるニュースである。しかし、この数値は、途上国の栄養不良人口の総数が約7億9000万人もいるという事実と合わせて眺める必要がある。FAOは、事実、世界食料サミットでのターゲットを達成するのに必要な平均年間減少数は約2000万人で、現在の数値よりも2ないし1.5倍も多いとしている。2015年までに世界の栄養不良人口の数を半減させるとの中心目標を掲げた、飢餓人口削減期限に向けた前進は、サミットからわずか3年後の1999年後半の時点で、深刻なことに、大幅な政策変更がない限り、満たせないとの結論に達してしまったのである。
 
B.マクロ経済政策の改革と農業の貿易自由化
11.   全体の統計は上述したとおりだが、過去20年間に個々の国、リージョン、ローカルレベルで、飢餓や貧困を克服するかなりの前進がなされた事実を否定してはならない。成功事例からは、なかでも土地へのアクセス改善、貧困との戦い、雇用の創出、農村流出の抑制など、持続可能な農業を助長し、包括的農村開発計画を支援するといった適切な政策と手段によって、飢餓を除くことができることが示されている。国際コミュニティは、アジェンダ21や世界食料サミット行動計画を採択したことに加え、その他の経済、社会及び環境領域の最終合意協定に同意したことによって、こうした目標を達成することを誓約しているのである。
 
12.   こうした誓約に留意し、かつ、ウルグアイ・ラウンド多角的貿易交渉などの関係国際協定のインパクトもあり、各国政府は、持続可能な農業と農村開発の目標に向けて前進すべく、農業政策等の政策改革を実行しつつある。途上国では、過去のマクロ経済政策において農業を大いに冷遇し、直接的には、公的資金の不釣合いなまでの低配分、輸出税、半官半民による集団的財貨の低価格、輸出禁止、国内における商品の自由流通の妨害などを行い、間接的には、過大評価の為替レート、主に製造業など他セクターの相対的保護や全体的には都市バイアスなどを行ってきた。残念なことに、農業の国際市場も大いに歪曲され、貿易自由化の結果として途上国の農業に生じうる経済的利益が制限され、SARDの他の側面に関する前進も妨害されてきている。
 
13.   農業貿易の自由化に関連した農政改革問題について、FAOは途上国16か国について、ウルグアイ・ラウンドの農業協定やその他の協定の実行状況を調査した。その結果、農業協定の一般条項又は特定の誓約条項を遵守するために、国内政策の規定し直しを行っている国が全くないことが判明した。大方の途上国における農業協定に基づく改革プロセスは、既にある構造調整プログラム、地域協定、一方的自由化プログラムなど、以前からの改革を継続しているに過ぎなかった。この他に食料に関しては2つの協定がウルグアイ・ラウンドでなされている。1つは衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS)で、もう1つが貿易の技術的障壁に関する協定(TBT)である。これらの協定は、食料の安全性と食料の品質に関し、不当な保護主義的措置の形の貿易障害を制限させるべく、国内及び超国内的な農業政策に強い影響を及ぼすものである。貿易交渉において途上国が情報を得て対等のパートナーとなれるための国際支援が実施されつつある。FAOは、WTOに基づく協定に関連して、加盟国が自国の現在の食料及び農業政策をレビューし、新たな交渉ラウンドに備えられるようにするための支援を、加盟国に対して行っている。農業貿易とその関連問題については、6つの機関(WTO、UNCTAD、国際貿易センター(ITC)、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、UNDP)が、最も開発の遅れた国々に対して、貿易関連の支援を行うための国際フレームワークイニシアティブを推進している。
 
14.   世界食料サミット行動計画の実行部分として、FAOのイニシアティブの下に、150か国が、国連システム及びその他開発機構の協力を得て、農業への投資を促進するための農業開発計画国家戦略を作成している。これと同時並行でリージョンごとの農業開発及び食料安全保障のための戦略やプログラムも作成されつつある。
 
15.   多くの先進国では、農業環境政策手段の改革がなされ、SARDの推進に向けて大きな貢献がなされている。EU15か国では、共通農業政策(CAP)に環境目標を統合させることを目指した「アジェンダ2000」が策定された。アメリカ合衆国では、1996年農業法において、土壌侵食や水質汚染の削減を目指した「保全留保プログラム」(CRP)を強化する大きな条項が作られた。カナダでは、1997年に「自然と調和した農業:環境的に持続可能な農業と農業食品のための戦略」と題する持続可能戦略が策定された。OECD加盟国では、全体として、農業の環境パフォーマンスの改善、農地とその他自然資源の適切な管理、農業・食品チェーン全体を介した食料の安全性に関する公衆の関心事項への対処を向上させることを優先事項とすることが合意されている。
 
16.   途上国における最近の農業セクターでの農政改革では、一般に、特に土地など生産資源の所有やアクセスを保証する安定した法的フレームワークの策定、市場機能の改善(労働及びクレジットの市場を含む)、所有権の制限、リスク削減メカニズムの創出などが問題となっている。主たる政策及びプログラムは、食料安全保障問題、農村開発問題や自然資源管理計画に焦点を当てている。具体的事例を下記に記す。
 ・アフリカでは、食料安全保障及び農村開発を促進するために、農業セクターにおける農政改革及び戦略について大きな努力が払われ、商品輸入統制解除、農業の多様化、包括的農村開発戦略の策定と採択、農業関連工業の民営化による農村雇用機会の創出に向けた貢献がなされている。これに加え、世界銀行の支援によって、砂漠化防止、森林資源の持続的管理、土壌肥沃度条件の向上及び農業の多様化に焦点を当てた「環境行動国家計画」が作られている。
 ・ラテンアメリカ及びカリブ海諸国地域のいくつかの国では、農村開発を助長する成長指向型の経済環境及びマクロ経済並びにセクターフレームワークが、インターアメリカン開発銀行及び世界銀行の技術支援を受けて導入されつつある。戦略オプションとしては、人的資源開発の助長、自然資源の保全及び回復を目指した公的投資による恒常的農村雇用の創出が考慮されている。
 ・東南アジアは、最近の経済危機によって最も深刻な影響を受けたが、1998年12月にハノイで開催された第6回東南アジア諸国連合(ASEAN)サミットにおいて、「農村開発及び貧困根絶」に関する行動計画が共同策定された。
 ・南アジアでは、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の技術支援を受けて、持続可能農業開発戦略に関する多年度プロジェクトがいくつかの国で実施されている。類似の試行は太平洋の最も開発の遅れた4つの島嶼国で完了している。
 
17.   一般に、経済全般にわたる政策改革と農業貿易の自由化によって、農地改良に投資する農業の立場は良くなってきているといえる。しかし、SARDを目指す上で、経済全般にわたる政策や戦略と農業セクターの政策や戦略とを統合するには、依然としてかなりの課題が残されている。
 
C.食料及び農業に関連した国際協力
18.   1998年の推計値によれば、OECD国及び多国間開発機構から途上国への政府開発援助(ODA)は、数年間の減少を脱却して、519億ドルに増加した。しかし、1990年代の減少が非常に顕著であったため、現在のODAの流入額は1980年とほぼ同じレベルとなっている(1995年USドル換算)。恒常価格で計算すると、農業セクターに提供されたODAは、1980年代後半以降、1990年代全般を通じて、着実に減少しており、10年前(1986〜88年の平均値)には約150億ドルでODAの25%を占めたのに対して、75億ドルで全ODAの14%(1995〜97年の平均値)に過ぎなくなっている。
 
19.   農業研究に対する民間セクターの投資は1990年代に増加したものの、その圧倒的大部分は先進国内にとどまっている。さらに、外国直接投資(FDI)は、途上国に対するものが過去10年間にかなり増加したが、その投資先は決して一様でなく、主たる部分は農業セクター以外に向かっている。その結果、全体とすれば、農業開発一般、特にSADR目標の達成に流れ込む資源の総量は減少している。農業生産に直接関係していないサブセクターが最もひどい影響を受けている。一部の農業関連工業、製造業用原料、地域及び集水域開発、農村開発などが、そうした例である。FAOの試算によると、1990年から1997年の間におけるこれらのサブセクターでの減少総額は46%に達している。
 
20.   1997年に行われたアジェンダ21の5年目実施状況レビューの結果、政府及び国際コミュニティが、農業研究への投資を継続ないし増加させるとともに、特に人口密度の高い途上国が限られた面積の中で農業生産性を向上できる研究の結果や技術にアクセスするのを支援することが要請された。貧しい国々の農業セクターに対する援助の減少を補完するために、国連アフリカ特別イニシアティブ(UNSIA)や国連開発支援フレームワーク(UNDAF)など、いくつかのグローバルなイニシアティブが設けられた。これに加え、1990年代中頃に厳しい資金危機に直面した国際農業研究助言グループ(Consultative Group on International Agricultural Research: CGIAR)の支援についても、拠出者によって新しい努力がなされている。16の国際農業研究センターからなり、そのうちの13機関が途上国に所在するCGIARシステムに対して、50を超える国、民間基金、国際及びリージョン機構が資金提供を行っている。CGIARの第3回システムレビューが1998年10月に完了し、同システムは、持続可能な農業開発に焦点を当てて拡大改定した研究アジェンダを支援するために年間約4億ドル(1998年の3億4500万ドルよりも増)の予算が必要であると結論した。
 
V.農業開発と社会開発
A.貧困の緩和
21.   世界食料安全保障に関するローマ宣言に述べられたように、「貧困が食料不安定性の主たる原因であり、食料へのアクセス改善を図るには、貧困根絶に向けた持続的前進が不可欠である」。世界銀行の試算によると、1日1ドル以下での生活と定義する貧困に苦しんでいる人は約15億人に達し、最近の傾向が続けば、2015年には19億人に増加すると推定されている。一部の途上国では貧困者レベルの削減にある程度成功しているとはいえ、全体の人口レベルが上昇し続けており、貧困者の絶対数は上昇している。さらに富める国と貧しい国との格差が拡大しており、特に貧困者一般や貧しい女性が社会からますます取り残されている。
 
22.   貧困は、飢餓や栄養不良をもたらしている深刻な様々な社会的不平等とつながっている。途上国に生活している44億人のうち、約5分の3は基本的衛生設備を持たず、3分の1は清潔な水にアクセスできず、4分の1は適切な住居を持たず、5分の1は近代的健康サービスを受けられないでいる。最貧地域では農作業の多くが人間の労働に依存しており、疾病によって農業生産が悪影響を受けている。女性や子供は男性よりも貧困生活を行っている場合が多い。土着の人々を含め、その他の弱者グループも不均衡なまでに貧困に苦しんでいる。アフリカのサブサハラの多くの国など、HIV/AIDSの感染率の高い国では、農村労働者に対するインパクトによって、農業生産が深刻な影響を受けている。
 
23.   飢餓や貧困の社会的ディメンジョンを分析する際には、1999年の60億人が2020年には約75億人に増加するという引き続く人口増加の圧力に加え、特に途上国では都市化率の上昇も要因となる。この25年間に世界人口の約60%が都市に生活し、その約90%は途上国の都市に生活するようになると予想されている。世界銀行は、都市・農村の人口移動抑制を目指した様々な国の政策を調べ、最善のアプローチは、都市と農村地域の双方が利益を得られる開発政策を政府が行うことであると結論している。
 
24.   低所得国の都市地域では、貧者及び土地のない都市住民によって非公式活動としての農業が展開されている。その一方、多くの国では、都市及び都市近郊農業の中には、商業経営体による集約的で管理の行き届いた生産も展開されている。この両者が、都市の食料安全保障、雇用や生活の向上に大きな貢献を果たしている。農業、食料消費パターン、商業化、性差別問題、財政フローに関連した農村と都市のつながりの問題については、本報告書の補遺1に詳しく述べる。
 
25.   FAOは、多くの貧しい地域で開始された構造改革及び制度改革をレビューし、農村経済や女性を戸主とする家庭を含めた農村家庭に影響を及ぼすマクロ経済変化への移行や、その対応並びにその緩和におけるローカル制度の役割を重視している。いくつかの政府は、多国間及び二国間機構の協力を得て、「持続可能な暮らし」の確保というより広い意味での戦略目的を持って、農村地域における貧困緩和のための政策デザイン、プログラム及びプロジェクトの実施を行っている。こうした活動で得られた経験は分析され、FAO、世界食料プログラム(WFP)、国際農業開発基金(IFAD)やUNDPなど、国連の機構の間で共有されている。FAOの主導している機構間プログラムは、農村家庭の所得戦略とそのローカルな制度環境との相互作用に焦点を当てている。このプログラムは、農村の貧困に対する制約条件やバイアスを見つけ出し、貧しい家庭の所得獲得努力に特に役立つ制度又は組織の開発を助長させることをねらいとしている。
 
B.地方分権と制度改革
26.   現在行われている制度やそれに関連した法的改革と、同時並行の土地所有システムの変更は、SARD目的の達成を支援するものである。これらの改革は、経済開発全体へのコミュニティ及び民間セクターの参画の向上、農業への民間投資の促進、性的差別を含む社会的差別の削減に不可欠であると考えられている。政府及び国際機構は、特にローカルレベルで制度面の能力形成にますます力を入れている。しかし、制度政策は政治的性格を強く帯びているため、こうした改革が大きく遅れていることも多く、農業セクターの持続可能性に対する効果はいろいろな領域でまだ十分感じられるまでに至っていない。
 
27.   1990年代には、多くの国で、共通の仕事を遂行するために、公的及び民間セクター並びに市民社会組織の間で、パートナーシップを作る動きが高まった。そうした経験から、国は、農業及び農村開発のための制度的及び法的環境を作るべきであって、従来もっぱら公的セクターの範疇と考えられていたサービスを必ずしも全て提供する必要のないことが示されている。これらサービスの一部は、下請けや他の協力の形で、民間又は非政府セクターがより高いコスト効果で実施することができる。国の放棄したサービスや、市民社会の方が相対的に強い分野のサービス提供に関して、民間セクターや非政府機構の能力向上を図るインセンティブと結びつけてこうした改革を行っていることも多い。
 
28.   特に西及び北アフリカ、ラテンアメリカ、より最近では東南アジアなどの多くの途上国が、世界銀行の農業セクターローンに関係して、制度改革を含めた包括的プログラムをデザインしている。ローカルレベルでのサービス提供を補完したり、地方分権化された公的組織との政策論議に参加したりするために、協同組合や職業組織を含む農業者組織が設立ないし強化されている。
 
29.   ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、リトアニアなどの国は、中央計画農業生産システムから市場主導型メカニズムへの移行によって生じた制度ギャップを埋めるのに役立てるために、より適切な市場応答型のローカル制度の開発努力を行っている。一部の国では、農業者に不可欠なサービス提供を改善するために、メンバーを限定した財政措置を講ずる農業協同組合の設置を助長するための新しい法的フレームワークを作っている。
 
30.   持続可能な自然資源管理や農村開発問題に関する情報を農業者が共有したり協力しあったりするのを支援するために、より地方分権的でローカルな財源を得た市場指向型の様々な制度メカニズムを促進することへの関心が高まっている。この問題については、1997年後半に、FAO、IFAD、世界銀行、ドイツとスイスの開発協力機構の共催による「農村開発のための地方分権に関する技術会議」で論議がなされている。そのフォローアップ活動が、セネガル、マリ、モロッコ、ボリビア、ベトナム、カンボジアを含む一連の国々で実施されている。
 
31.   国レベルでも、ローカル組織が政府と協力して行う役割として、災害防止やその備えに関するものがますます注目されている。環境リスクを管理し、その再建要件に対応するために、より地方分権的でローカル管理の制度メカニズムを助長させる必要性は、最近生じた中央アメリカでのハリケーン大災害の後始末問題でも注目された。
 
C.土地所有構造の変更
32.   多くの国々において、不適切な土地所有構造が依然としてSARDの大きな障害となっている。特に女性の土地へのアクセスが解決されていないケースが多数存在する。しかし、UNCED以降、土地所有制度の役割については、かなりの発展がなされている。こうした変化は、下記3つの同時並行的なプロセス(調整されていないことが多い)で生じている。
・ 総合土地台帳、土地所有権登録、土地情報システム(LIS)の開発を伴う土地所有関係法規の整備
・ 土地所有関係法規の整備及び計画策定のための土地使用者及び他ステークホルダーによるLSIの使用
・ 私有地を超えた使用権の整備及び共有地の持続可能な使用に対するこれら手法の適用
 
33.   これらの3点が大きく発展したことによって、土地所有改革及び規則の整備が、農村地域における持続可能な農地管理形成及び農地行政にとって、重要な政策手段となっている。こうした土地利用動向は、土地資源の総合計画及び管理に関するCSDへの事務総長報告で分析されており、同報告には先進国及び途上国双方における持続可能な農業の促進及び土地資源の使用改善に対するこれらのインパクトの事例も含まれている。
 
W.農業と環境
34.   アジェンダ21の第14章に記されている優先事項の多くは、農業用の基本的自然資源の持続可能な管理と、これら資源に影響を及ぼす農業用化学物質やその他技術の使用に関係したものとなっている。1997年になされた前進をレビューし、CSDは、引き続く農地劣化の問題と、この領域における世界食料サミット目標のフォローアップの必要性とを問題にした。また、CSDは、植物遺伝資源に関するライプチッヒ国際会議の行動計画の実行を加速することや、農業研究及び技術移転を一層推進する必要性を強調した。これらの問題に関する最近の進捗状況を下記に報告する。これに加え、都市化が農業に及ぼすインパクトや、農業バイオテクノロジーのインパクト、農業用水のインパクトに関連した新たな展開もここで報告し、本報告書の補遺でさらに詳しく述べる。さらに、土地問題に関する事務総長報告書及びその補遺も、農業と環境に強くかかわっている。
 
A.農地劣化への対処
35.   農地の劣化や土壌肥沃度の低下が、特に途上国の食料安全保障や持続可能な開発にとって引き続き大きな脅威となっている。最も深刻なのがアフリカのサブサハラで、年間の平均養分損失量が24kg/haで、この損失はさらに増えている。南アジア地域だけでも、生産減少アプローチを使用して計算した別の形での農地劣化コストが、年間100億USドルと試算されている。これらの推定値は、現在の問題が深刻なことを示しており、効果的な農地の修復や保全対策が講じられなければ、将来の農地劣化コストが莫大なものになることを示している。
 
36.   国、リージョン及び国際レベルでの農地劣化の調査や評価と並行して、多数の政府や、国際農業開発基金(IFAD)及び世界銀行のような国際機関が、総合的な土地利用計画及び管理作業の文脈において、農地保全と持続可能な農業開発に向けたプログラムやプロジェクト全体の一部として、農地劣化問題に取り組んでいる。後者のプロジェクトでは、農地資源の回復や改良並びにゼロ耕耘のような多様な利益をもたらす農地管理行為に焦点を当てている。
 
37.   「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面している国(特にアフリカの国)における砂漠化の防止のための国連条約」は1996年12月に発効し、150を超える国々よって批准されており、世界中の乾燥地に存在する農地の農業及び家畜生産能力を向上できるように、予防及び回復対策をねらった国の行動計画を策定することに主眼を置いている。
 
B.総合作物栄養システム(Integrated Plant Nutrition Systems: IPNS)
38.   UNCEDは、第14章において、特に硝酸塩による水の汚染を引き起こしている、集約生産システムにおける無機化学肥料や家畜排泄物の過剰使用を回避し、また、集約度のさほど高くない農業における土壌肥沃度維持コストを削減する手段として、IPNS(植物養分をオーガニック、生物的及び化学的ソースのものをバランスの取れた形で使用する)の推進を求めている。この進捗状況は遅い。多くの国で硝酸塩による水質汚染が高まり、湖沼、河口や沿岸地域の富栄養化が生じている。他方、化学肥料やその他の施用による適切な補給を行わないために、土壌養分が引き続き減少し、土壌生産力が劣化して、持続可能な農業生産と食料安全保障が脅かされている。一般的にいえば、過去のプログラムは、植物養分確保の自主独立性を高めることを求めてきたが、農業者のアクセスできる有機物の循環や使用とのリンクを考慮してこなかった。これに加え、土壌や水の管理の側面も組み込んでこなかったし、これに十分対処してこなかった。これを修正するために、FAOは世界銀行、CGIARシステムや他のステークホルダーと協力して、サブサハラアフリカにおける土壌肥沃度イニシアティブを策定した(Soil Fertility Initiative for sub-Sahara Africa: SFI)。これら機関は共同して、現在、14か国について、作物、土壌、水、養分及び有害生物管理を含む全体的アプローチに基づいた自国の国家行動計画を策定するのを支援している。このプログラムには、民間のセクターや組織、NGOも積極的に関与している。
 
39.   総合的な土壌及び養分管理を採用しやすくするために、FAOは、この過去3年間に、15か国以上において、途上国の国家農業研究システム(national research systems: NARS)と一緒になって、農業者のフィールドスクールを含め、総合的な土壌及び養分管理行為について、多数の共同プログラムを開始した。都市周辺農業がその重要性を増し、多量の有機廃棄物が農業で上手に使われていないため、有機廃棄物を堆肥化して安全にリサイクル優れた方法を普及させることも必要になっている。
 
C.有害生物の防除
40.   この領域での最近の展開はUNCEDにおけるコミットメントに沿うものであり、3つの方向、即ち、法的フレームワークの開発、緊急事態に対する国際協力の拡大、総合有害生物防除手法使用の拡大の点で大きく前進している。
 
41.   FAOが事務局となっている「国際植物保護条約」(International Plant Protection Convention: IPPC)は、侵入性植物等の有害生物を対象にしている。IPPCは、植物及び植物産物に対する有害生物の導入及び拡散の防止並びにその防除手段の普及に関し、共同で効果的な行動を取ることを主たる目的にして、野生植物を含む全ての植物、並びに雑草を含む全ての有害生物を対象にしている。本条約は1997年に改正されて、制度面を含め、基準設定手続き設定に関する最近の進歩を取り込んだ。国際基準の策定及び採択に必要な制度や手続きは「植物貿易方法委員会」の権限下にあるが、IPPC事務局が基準の改正及び採択を行うのがしやすくなった。
 
42.   「国際貿易における有害化学物質及び農薬に関する事前通告承認手続きに関するロッテルダム条約」(Rotterdam Convention on the Prior Informed Consent (PIC) Procedure for Certain Hazardous Chemicals and Pesticides in International Trade)は、人間の健康及び環境に破壊的問題を起こし得る農薬の使用を削減するために、1998年に採択された。本条約は50か国が批准すれば発効することになっている。条約が正式に発効するまでの間、政府は条約に従って新しいPIC手続きを自主的に実施することに同意している。本条約の事務局はUNEPとFAOが分担して務めている。
 
43.   1994年に、FAOは、食料安全保障、農業所得や環境に影響する緊急リスクを最小にするために、「国境を超えた動物及び植物の病害虫に対する緊急防除システム」(Emergency Prevention Systems (EMPRES) for Transboundary Animal and Plant Pests and Diseases)を設置した。家畜に関して、プログラムは、流行の脅威に対する早期警告と初期対応を行い、途上国の肉やミルクに対する需要への対処やSARDにおける家畜の役割の増大に応えることを強化することを必須要素としている。本システムは、世界保健機構(WHO)、アフリカ統一機構(OAU)、国際原子力機構(IAEA)、ヨーロッパ共同体(EC)、二国間協定による資金提供国を含む世界及び地域組織と協力する形で運営されている。本システムは、多数の途上国の畜産物を貿易不能にしてしまう口蹄疫病や牛疫のような越境性疾病の撲滅をねらっている。
 
44.   移動性害虫の防除では農薬を多量かつ広範囲に使用することが多い。このことによって様々な環境及び人間の健康にかかわる問題が生じている。バッタに対する共同EMPRESプログラムによって、被害国、資金提供国とFAOは、早期警戒、早期対応、研究の助長、環境にやさしい防除手法の実施によって、農薬使用を削減して防除手法を最適化させることをねらっている。1997〜98年に紅海に接している国々における発生に際しては、このプログラムによって、他の国や地域に大発生が拡大する前に防除できた。
 
D.総合有害生物管理(Integrated Pest Management)
45.   農薬使用量は、途上国で増加し続けているが、多くの先進国では非常に高いレベルからは徐々に減少してきている。新製品開発によって施用量の少なくて済む新化合物が作られ、農薬使用量削減に貢献している。総合有害生物管理(integrated pest management: IPM)は、作物保護剤による環境及び人間の健康に対するマイナスインパクトを削減することを目指している。当初、IPMはアジアでのコメ生産に焦点を当てていたが、その後多数の国の様々な種類の作物に拡大された。IPMプログラムは、アジア全域において、農薬使用量の最も多い野菜やワタを含め、様々な種類の作物で、コミュニティへの権限付与や農政改革を介して、発展し続けている。情報に明るいアジアの都市消費者は、現在では農薬クリーンな農産物を求めており、このことがアジアの多くの国でIPMに対する一層の刺激となっている。
 
46.   アフリカのいくつかの国では、ココアボード、ワタ企業、開発ボードなどの半官半民組織が、輸入国の施行している新しい農薬残留上限値に対処するために、有害生物管理行為を実施するIPMプログラムの推進者となっている。新しいプログラムでは、IPMからIPPM (Integrated Production and Pest Management)アプローチに発展し、IPMに加え、生産技術や土壌肥沃土問題をも対象にしている。特にジンバブエのIPPMプログラムの支援もあって、アフリカ南部及び東部地域では経験の共有がかなりなされている。
 
47.   中近東では、国のプログラムや二国間協力プログラムとして、IPMプログラムが現在展開されつつあり、果実や野菜で良い結果が得られている。ラテンアメリカでは、アジアの経験を考慮に入れて既存のプログラムを拡張している。途上国は、国のいろいろなプログラムの中で、特に果樹や野菜について、IPMの推進も行っている。この領域に関しては、FAO/IAEA共同プログラムの推進した不妊化雄の利用技術が、果実のミバエのような害虫撲滅キャンペーンや、農薬の広域散布回避などに大きく貢献している。
 
E.農業における生物多様性と遺伝資源
48.   数千年にわたって農業が創出してきた生物多様性を保護し、開発に利用することが必要であると、最近の国際協定において認識されていることは重要である。国連生物多様性条約(CBD)によって、食料や農業用の遺伝資源に係る重要問題に焦点を当てて、FAOと協力してこの領域でのプログラムを早急に補完するよう求められている。FAOは、FAOの任務として、1996年に開催されたライプチッヒ国際植物遺伝資源会議のフォローアップ活動を続けており、動物遺伝資源に関するプログラムにも着手した。両活動とも、FAOの食料及び農業用遺伝資源に関する政府間委員会(CDRFA)の政策ガイドラインに基づいて実施されている。
 
49.   CGRFAの161加盟国は、現在、農業者の権利に関する合意事項の実現化、及び、生物多様性条約で規定していない生息域外収集物を含めた食料及び農業用の植物遺伝資源に対するアクセスなどについて、生物多様性条約と協力して、「植物遺伝資源に関する国際約束」の改訂を交渉している。FAOの政府間委員会は、ライプチッヒ会議で採択された「食料及び農業用植物遺伝資源に関するグローバル行動計画」の実施状況もモニターしている。このモニタリングプロセスの一環として、1998年に、各国及び主要なステークホルダーによる計画実施を促進するために、一連のリージョン別レビュー会議を開催した。
 
50.   各国の遺伝資源プログラムの強化や、リージョン及び作物ネットワーク設置の点で、かなりの前進がなされ、保全と利用とのリンクが推進された。「グローバル環境機関」(Global Environment Facility: GEF)及び国連大学(UNU)の支援や、各国の組織の協力を得て、FAOは、生息域内農業生物多様性管理プログラムの参加型で持続可能なモデルを現在開発している。「食料及び農業用植物遺伝資源に関する世界早期警戒及び情報システムも強化されている。
 
51.   1999年にCGRFA及びその補助機関である「動物遺伝資源に関する政府間テクニカルワーキンググループ」は、農業用動物の保全と持続可能な利用を促進することをねらった「FAO農業用動物遺伝資源管理グローバル戦略」を承認した。この戦略は、在来技術や適正技術を含め、効果的な保全と持続可能な利用に重要な技術の開発と利用を支援している。ただし、政府や国際コミュニティが、家畜生産システムの持続可能な集約化の必要性に呼応したり、遺伝子侵食速度の増大を克服したりするのに必要な財源の利用可能性を高めたり能力開発することが残されている。FAOは、リスク状態にある2000種のうち、800種が本世紀に失われてしまい、残っているリスク状態にある種の30%も1世代のうちに消滅すると推定している。CGRFAも、FAOが各国の主体性の下に、「世界動物遺伝資源の状態に関する報告書」の作成について調整を行うべきであるということに賛成している。
 
F.オーガニック農業
52.   草の根組織、農業者及び流通業者が、オーガニックな食料及び繊維の生産に向けた世界規模の運動を現在展開している。ヨーロッパの国々ではオーガニック農業は耕地の6〜10%を占め、ニュージーランドでは牧草、北アメリカでは穀物、メキシコではコーヒー、アフリカのいくつかの国々ではワタやバナナなど、オーガニック管理がいろいろなシステムの中でかなりの部分を占めている。その結果、世界の食料市場の約1%を占めているだけだが、認証されたオーガニック農産物は年間約20%の割合で増加し続けている。オーガニック農業は、ローカルな知識、生物多様性、農場資源、有害生物の生物防除を最大限活用し、農業用化学物質の使用を避けることによって、食料生産、所得創出、環境保護という要件をリンクさせることができる。このアプローチは、農業投入資材に対する政府補助金の撤廃、オーガニック農業助長策の導入、食料の安全性と環境保護に対する関心の高まりによって、弾みを得ている。これらの要因は、途上国による輸出を含め、新たな市場機会をもたらしている。
 
53.   最近の2つの出来事によって、オーガニック農業の発展と受け入れが恐らく加速されると考えられる。1999年1月に、115国政府代表から構成されているFAO農業委員会において、この領域における最近の進捗状況がレビューされ、FAOがオーガニック農業に関する一貫性を持ったプログラムを開発することが決定された。FAOに対しては、各国のプログラムや、「国際オーガニック農業運動連盟」(IFOAM)のようなパートナーとの協力の下に、オーガニック農業の発展のためにより強力な役割を果たすことが要請された。
 
54.   もう1つの大きな展開は、FAO/WHO合同の食品基準プログラムであるCODEX委員会による「オーガニックに生産した食品の生産、加工、表示、流通に関するガイドライン」の承認である。この基準によって、国の法律制定、国際貿易の助長、認証されたオーガニック製品に対する消費者の信頼向上が促されることは必須である。
 
G.その他の展開
55.   現在、いくつかのイニシアティブが、農業システム全体を改善することによってSARDと世界食料サミット行動計画の目標の一端を達成すべく、実施されている。持続可能農業システムに関するいくつかの包括的プログラムが、途上国及び先進国の政府、リージョン及び国際機関やNGOによって推進されている。このなかには、持続可能性と食料安全保障という双方の目標を対象にしたものもある。その重要な事例が、1996年の世界食料サミット期間中に国及び政府首脳によって承認されたFAOのイニシアティブによる「食料安全保障に関する特別プログラム」(Special Programme on Food Security: SPFS)である。これは参加型で国主導型のプログラムで、「低所得食料不足国」(Low-Income Food-Deficit Countries: LIFDCs)が、自国の食料安全保障を改善するのを支援することを目的にしている。現在、50を超える国において、パイロットプロジェクトに参加している地方職員及び農業者の動員及びトレーニングの形でプログラムが実施されている。フェーズTでは、持続可能な作物生産の集約化と、養蜂、養殖・人工増殖漁業を含めた小規模灌漑・水管理や小規模家畜生産の多様化との結合を図っている。フィールド活動こそが、土地所有、投入資材、技術、市場、クレジットなど社会・経済的制約に対する参加型の分析や、政策的及び制度的改革の基盤である。プログラムは、貧しい地域における食料安全保障の不安定性を主対象にしているが、生産の制約や機会に関する問題に限定されていない。同時に、公平性(性差別問題を含む)や、農業を基盤にした農村開発を助長するような行動による食料へのアクセスも重視している。SPFSでは、「南南協力イニシアティブ」に基づいて、途上国間での知識や経験の交換を助長しており、より進んだ途上国がフィールドテクニシャンや専門家を特定の受け入れ国に2又は3年間派遣し、その間、派遣された者はプログラムに参加している農村コミュニティで生活する。SPFSのフェーズUはマクロ経済フェーズであり、政府が食料安全保障、農業政策プログラム、投資プログラムを策定することに対する支援や、確実にもうかるプロジェクトのフィージビリティ調査の作成などを行う。世界銀行、アフリカ開発銀行、イスラム開発銀行、UNDPなどの様々な金融組織やいろいろな二国間提供者が既に参加している。
 
56.   この他に注意すべき問題として農村のエネルギー供給の問題がある。途上国の多くでは、農村の人達の大部分は、薪、ふんや作物残渣といった伝統的燃料に依存している。農村エネルギー政策やプログラムはごく一部の国でしか効果を発揮してなく、努力レベルは必要レベルよりもはるかに低い。FAOと「世界エネルギー協議会」の最近の調査によると、現在途上国の農村人口のうち、電気にアクセスできているのは33%に過ぎない。世界的にみれば、電気にアクセスできている農村家庭の数は、1970年の6億1000万から1990年には14億世帯に倍増したが、この増加では人口増加に追いつけない。農村のエネルギー転換を図るには、SARDで指摘されたように、生産性の向上が必要であり、依然としてそのとおりである。しかし、風力発電、太陽電池、バイオエネルギー変換の3つの技術がコストと信頼性の双方の点でかなり前進した。この3者は、ヨーロッパやアメリカに加え、アルゼンチン、ブラジル、カーボベルデ、中国、インド、メキシコ、ジンバブエを含む一部途上国で現在推進されている。
 
X.将来の課題と選択肢
57.   アジェンダ21の第14章に記されているように、持続可能な農業及び農村開発の主たる目標は、持続可能な仕方で食料生産を増加させることと、食料安全保障を高めることである。これに基づき、世界のリーダーは、1996年の世界食料サミットにおいて、その政治的意志として、「全ての人々に対する食料安全保障を達成すること、及び、2015年よりも遅くない時期に栄養不良の人達の数を現在レベルの半分に削減することを緊急課題として、全ての国における飢餓を撲滅するために現在行っている努力を行うことを、共通かつ国として約束した」。この課題は、1997年の農業関連の開発状況をレビューした国連総会において、優先課題とすることが決定された。FAOの作成した最近の刊行物からも明らかなように、この目標に向かっての現在の前進ペースは、一様でなく、かつ十分でもなく、目標達成に至らないと予測されている。飢餓を除くという複雑な問題を解決するのに単純な解決策はありえず、農業における様々な生産や消費パターンに適合するようにいろいろな政策、手段やツールを組み合わせることが必要である。そうした多様性自体が持続可能性の必須要素である。こうした複雑性や多様性があるとはいえ、3つの方向のアプローチが考えられる。即ち、a)生産及び取引すべき食料の増産を加速すること、b)農業及び農村開発に対する資源配分を適正化すること、c)貧困者の所得レベルを上げるのに大きな努力を払うこと。
 
58.   第14章に記された12の相互に関連したプログラムを実施し、経済開発に対するSARDの持つ可能性を完全に実現させるには、なお数年を要するであろう。UNCEDから7年、ローマ宣言から3年を経過したが、前回の進捗状況報告書に概要の記された問題や課題の大方は依然として未解決である。土地の劣化、農業生物多様性の消失、気候変動の農業に及ぼすインパクトといった環境問題が、農村における人々の生活の質を同時に改善しながら、食料需要増大を満たそうとする国の能力にますます脅威を与えている。本報告書に記された最近の進捗状況レビューでは、持続可能な農業にかかわる全ての問題を扱うことができないが、最優先すべきいくつかのテーマや課題を指摘することができる。その多くは、前回レビューで確認されたものであり、下記のSARDに関する2つの基本的疑問にかかわるものである。即ち、
・ 如何にして自然資源をこれ以上破壊することなく、貧困者の数を減らし、家庭の食料安全保障の改善を図れるように前進を加速するのか
・ 人口増加、所得向上、都市化、より高い食料の質や安全性基準に対する要求、環境問題に対する関心の高まりなどの結果として、消費者から農業に課せられている様々なストレスに持続可能な仕方でどう応えるのか
 
この2つの課題を考える際、本報告書は、下記優先領域において革新と調整が必要なことを強調したい。
    a)持続可能な集約化
    b)縦方向及びセクター間の統合化
    c)農業貿易の自由化
    d)緊急事態に対する備え
    e)資源フローと資金調達メカニズム
    f)情報、参加及び権限委譲
    g)政策及びプログラムの改善
 以下に簡単に説明する。
 
a.持続可能な集約化(sustainable intensification)
59.   今後20年間における世界の食料を展望した最近の調査では、世界中の農業者は、増加する人口を養うために2020年には穀物生産を40%増やさなければならないと結論されている(IFPRI: World Food Prospects: Critical issues for the early-first century, 1999)。食料安全保障の向上に応え、ますます増加している都市化人口のニーズや需要パターンの変化を満たすのに必要な生産増加を達成するには、単収向上又は作付け強度の向上による農業生産の集約化がその中心にならざるを得ない。しかし、先進国及び途上国双方において、穀物収量の向上は、1970年代の「緑の革命」以後、減少してきている。単収向上は、一次農業生産に対する投資を合意した上でどれだけ優先事項とするか、並びに、広範囲の現代技術を受け入れ可能にさせる農業研究及び普及システムに依存することになる。確かに農業の部分的集約化は既に多くの地域で達成されているものの、自然資源や環境をこれ以上破壊することなく、農業を持続可能な形で集約化させることは依然として課題となっている。
 
b.縦方向及びセクター間の統合化(vertical and intersectoral integration)
60.   既往の知識を応用して、現在の生産レベルと潜在閾値との間の収量ギャップを減らすのが成功するのは、投入資材や農業生産物の効果的な市場によって適切な価格インセンティブが与えられて生産性向上が促進される場合だけである。農業生産物の供給量が増加すれば、経済成長を促すのに役立ち、都市センターに近く、人口の多い可能性を有している農村地域では、生産システムの縦方向の統合化によって雇用が創出され、生産物が最終的消費者に到達するまでに付加価値が高まることになる。
 
61.   逆に、生産性向上に伴う利益は、供給チェーンの各ポイントにおける市場効率が増加して初めて消費者に感じられることになる。消費パターンに対処する際には、食料生産・加工チェーンの全てのリンクに沿って、利益の分配や食料の安全性を確保するように、農業開発や食料安全保障戦略を構築しなければならない。特に農村の非農業セクターなど、他のセクターとの出入りを行うリンクも、農業の発展と活力の確保や、農村の人々の雇用や稼ぎを増やす機会を提供する上で必須であることが判明している。従って、農業関連産業の推進や、漁業・林業・ツーリズムなどの関連の深い分野との経済的統合化は非常に重要である。
 
c.農業貿易の自由化
62.   貿易を歪曲させる政策を削減する点では多少の前進がなされたが、多くの先進国では農業に対する支持及び保護が依然として高く、農産物価格を低く抑えることによって他の国の農業に悪い影響を与えており、それによって農業セクターへの投資基盤が悪化している。ネットの食料輸入国は過剰生産の恩恵を受けているが、長期的にみると、安価な輸入農産物に対するアクセスは、公的政策における国内農業に対する支持の削減をもたらしている。歪曲が残っているために、途上国を含め、補助金を出していない輸出国にマイナス影響が生じている。所得の高い国々における輸出補助金を含む支持及び保護を削減することは、農業貿易並びにSARDの様々な側面に大きく貢献しうるものである。
 
63.   途上国が直面している大きな課題として、ウルグアイ・ラウンド貿易交渉でのSPS 協定(Agreement on the Application of Sanitary and Phytosanitary Measures:衛生植物検疫措置の適用に関する協定)に関連した国際的了解要件を満たすことがある。SPS及びTBT協定(Agreement on Technical Barriers to Trade:貿易の技術的障害に関する協定)には、途上国に対する財政的及び技術的支援を行うことが約束として含まれている。この約束を確実なものにすることも追求すべき課題の一つである。民間セクターも、施設の設置や品質保証手続きなどで途上国を支援できるようにしなければならない。この問題にかかわる主要ステークホルダー間での対話を向上させることが不可欠である。国家貿易、競争政策、環境配慮、労働基準などの新しい問題が、途上国に様々な課題を投げつけている。
 
d.緊急事態に対する備え
64.   農業セクターにおいて自然災害及び人災関連の非常事態が増えれば、食料不安定性問題が激化することになるが、現在、途上国に対する非常事態の前後における支援額が減少している。リスクを最小にし、不測事態に対する計画の幅を広げて協力しあう努力を行うことが必要になっている。このとき、農業システムそのものと、投入資材供給、生産物の加工・流通を含む関連システムとの両者を対象にしなければならない。
 
65.   この目的のためには、いろいろな既往の早期警戒及びモニタリングシステムを効率化して、相互にリンクさせ拡大させるとともに、食料安全保障脆弱性マップの範囲を拡大して、リスク、ボトルネックやその原因を特定してより良く評価できるようにすることが好ましい。ここでも、事前の保護対策を担い、総合的な保証計画を開発する上で一次の受益者であって主役である農業生産者に対しては情報提供を行い、彼らの参加を確保しなければならない。マクロ経済の不安定性によって生ずる経済危機の場合には、「セイフティネット」の開発が、短期的に食料安全保障問題に対処する効果的な方策であると考えられる。こうした要件は、人的及び物的資本への投資や農業生産性向上の努力など、健全な開発戦略に必須な長期的要素と相乗効果を生み出すのに必要であると考えられる。
 
e.資源フローと資金調達メカニズム
66.   特に開発の最も遅れた国の農村地域に基本的な施設を整備するために、ODA増額のニーズは高い。このためには最近の傾向を逆転させることが必要だが、FDI(外国直接投資)は急速に増加しており、途上国への配分を拡大・適用させることは、SARDの目標を達成するのに絶対不可欠である。ODAの傾向に比べると、FDIは劇的なほどに増加しているが、その恩恵の多くは極めて少数の国に集中している。より広い途上国にも投資できるようにする方策や、農業や農村地域一般のシェアを拡大するための手続きを開発することが必要になっている。農業及び農村地域に対する公的及び民間の投資との相乗効果の可能性も再検討する必要がある。しかし、民間投資は、市場へ簡単にアクセスできるようなインフラやその他の手段を含む公益レベルが適切な場合にしかなされない。
 
67.   政府は、既存の補助金や税制制度を改革して国内資源を動員して、農村地域への資源フローを直接増やすことができるし、資源利用効率を高めることもできる。これを行う際には、現在の課税体系の改革、自然資源サービスコストの完全価格化、非生産的支出の抑制、補助金や不必要な軍事支出の削減などを伴うこともある。こうした変更を行うには、政府の強い意志、制度改革や優れた支配システムが必要になる。
 
68.   可能性のある革新的な資金調達メカニズムの一つとして、農業生物多様性の保全、温室効果ガス排出の削減、炭素シーケストレーションの増加など、農業者の生み出したグローバルな便益に対して、農業者に補償することが考えられる。京都議定書の現在のフレームワークに基づいたクリーン開発メカニズム(CDM)(又は炭素のシーケストレーションの増加と食料安全保障の向上という2つの目的にマッチするように改良したもの)によって、FDIに対する魅力を高められれば、ODA減少によって生じている投資ギャップを小さくする可能性もありうる。農村地域における再生可能エネルギーの効率的使用に対する投資の増額もこのメカニズムの一部にすることもできよう。
 
f.情報、参加及び権限委譲
69.   現代情報技術に対するアクセス向上に対するニーズは高く、それによって、農業行為、価格、投入資材や生産物の市場に関する情報を農業者が得るのを改善し、農業者の能力形成を図ろうとしている。政府の実施プロセスや予算管理の強化を含め、制度改革を行った上で、情報、新しい技能、自らの問題に関する企画立案や管理能力の向上に関する知識やアクセスを高めて、ローカルコミュニティに権限委譲を行うことは、SARD及び世界食料サミット行動計画を成功させるために絶対不可欠である。持続可能な集約化及び多様化プロセスにかかわる生産者団体、フィールドスクール、その他のローカルコミュニティグループに農業者が積極的に参加することが大切なことは、十分証明されている。向上プログラムは、農業に関する教育やトレーニングといった通常の領域を超え、農業者団体の運営、その行政府や民間セクターとのやりとり、政策立案における農業者の役割なども対象にしなければならない。持続可能な農業を含め、持続可能な開発を達成するためには、知識や情報の分配を向上させることが不可欠だが、次の10年間においては、知識管理や情報アクセスの向上に基づいて透明性が高まり、協力関係も改善されて、SARDの目標達成に向けた前進のスピードが加速されると楽観視できる理由はある。
 
g.政策及びプログラムの改善
70.   上記の優先領域は、SARDの目標や世界食料サミットのターゲットの達成を左右するものだが、そのいずれを成功させるには、適切な政策が存在して適用されていることが必要である。SARDにかかわるステークホルダー間の協力を高めるのに適切なメカニズムを見つけ出すことが決定的に大切であり、プログラムの調整が不十分だと、特に国のレベルや国際開発コミュニティ内でそうだが、人的及び財政的資源に大きな負担をかけることになる。
 
71.   国のレベルでは個々の政策手段の改善や、自然資源管理、農村開発や貧困撲滅のためのより良いプログラムの開発に向けてある程度の前進がなされているが、国の中のいろいろな行政府で補完的政策を立案し、効果的に実施することは依然として課題となっている。マクロ経済的なバランスや経済的安定性だけでは、農村地域の成長を助長するには不十分である。成功させるには、全てのステークホルダーがSARDのゴールに向けて貢献するのに必要な農業投資の増額、自然資源保全の推進、人的及び物的インフラの向上を可能にする政策環境が大切である。
 
72.   国のレベルで政策の統合化が特に欠けている領域を特定し、統合化を成功裏に推進するのに必要な方策を開発することが必要である。また、マクロ経済政策の変更に伴うマイナス影響を最小に抑えるためには、様々なミクロ経済改革及びその他の構造改革に対処する政策も必要である。そうしたものとして下記がある。
・通常は民間セクターが投資をしない、農村インフラ、農業研究、人的資本、教育開発への投資
・資源の豊かな地域では持続可能な集約化、資源の乏しい地域では土壌肥沃度の向上に対する経済的インセンティブ
・農業における非効率的なエネルギー使用を助長している補助金の撤廃
・公共、コミュニティ、個人の間での所有権の再配分
 農村の人々全体、特に農村の貧しい人達を考えた利用可能な資源と機会のより公平な配分

 


国連持続可能な開発委員会(CSD)第8回会合における
農業に関する決定事項

 
 
 4月24日〜5月5日に、国連CSD第8回会合が開催され、前出の事務総長報告等に基づいて論議が行われた。その農業に関する結論を国連CSDのホームページ<http://www.un.org/esa/dsd/index.shtml (最新のURLに修正しました。2010年5月) >から紹介する。
 
Decisions on Agriculture adopted by the Commission on Sustainable Development
at its eighth session (8pp)
 
1.緒言
1.   持続可能な開発委員会の第8回委員会では、経済、社会、環境という3つの目標間のリンケージに焦点を当てながら、経済セクターとしての農業を広い視点から検討した。アジェンダ21の特に第14章、及び、第19回特別総会で採択された「アジェンダ21のさらなる実行のためのプログラム」に記されているように、農業は、特に途上国において増加している人口に対して食料及びその他農産物需要を満たすという基本的課題に応えなければならない。特に焦点を当てて討議されたのは、「環境と開発に関するリオ宣言」やアジェンダ21の第14章に記された国際的に合意された目標に加え、世界食料サミットで採択された「世界食料安全保障に関するローマ宣言」及び「世界食料サミット行動計画」(ローマ、1996年11月)に調和した持続可能な農業と農村開発の推進である。全ての国がSARDを達成する基盤は、これら及びその他のコミットメントに記されており、必要なことは、全てのレベルでこれらを完全に実行することに他ならない。
 
2.   農業は、食料と繊維の生産を確保し、食料安全保障や、農村地域の社会・経済的発展、雇用、農村地域の維持、土地や自然資源の保全に不可欠であって、農村の生活や国土の維持に役立つが故に、社会の中でも特別かつ重要な位置を占めている。SARDは、持続可能な自然資源管理に貢献する環境にやさしい形で、食料生産を増加させることと、食料安全保障を向上させることを大きな目標としている。食料安全保障は、全ての国において優先的政策事項ではあるが、未達成目標のままとなっている。途上国に暮らす約7億9000万の人々と、工業国及び経済移行国に暮らす3400万の人々が栄養不良の状態にある。最近多少の状況改善が認められるが、国際コミュニティは、栄養不良人口の平均年間減少数では、1996年の世界食料サミットで設定された2015年までに栄養不良人口を半減するとの目標(行動計画、パラ7)の達成には不十分であることを認識しなければならない。
 
3.   貧困根絶を前進させることは、食料へのアクセスを向上させ、食料安全保障を助長させるのに絶対不可欠である。世界で約15億の人々が貧困にあえいでおり、最近の傾向からすると、この数は2015年までに19億人に増えると指摘されている。これに加え、富める者と貧しい者との格差は拡大しており、貧しい者、特に婦人、被差別グループ、貧しい農村の人々、土着コミュニティが社会からますます取り残されている。飢餓と貧困が密接不可分状態でリンクしていることは、SARDの文脈で食料安全保障を達成するという目標と、特に貧しい暮らしをしている都市と農村の人々の貧困撲滅を追求することとは、「社会開発のための世界サミット」(1995年、コペンハーゲン)で合意されたように、統合させて対処しなければならないことを意味している。なかでもローカルな食料システムを強化するとともに、食料安全保障を向上させるための能力形成を行いつつ、貧困根絶に向けた努力を引き続き行うことが必要となっている。持続可能な農業と農村開発の概念こそがこうしたアプローチを導けるのである。
 
2.行動のための優先事項
(a) 持続可能な農業及び農村開発(SARD)目標の遂行
4.   「アジェンダ21のさらなる実行のためのプログラム」において合意されているように、2002年までに各国政府が、持続可能な開発のための国家戦略の策定を完了するよう要請する。「ローカルアジェンダ21」やその他のローカルな持続可能な開発プログラムについても積極的な取り組みを行わなければならない。この点に関して、これら戦略の中心部分をなす食料安全保障・環境保護・農村開発を支えるのが、農業生産、食料安全保障及び食料の安全性であり、これらを統合させるよう要請する。
 
5.   全ての国の政府は、輸入及び必要な場合は食料備蓄と組み合わせて、国内食料生産を持続可能な形で開発して食料安全保障を達成し、また、世界食料サミットで合意されたように、2015年までに栄養不良人口を半減させるという重要な目標に到達するために、関係する個別及び集団コミットメントを早急に再確認するよう要請する。この点に関して、政府及び国際機関は、途上国の食料安全保障の達成を効果的に支援する技術的及び財政的援助を利用できるようにしたり提供したりするよう要請する。
 
6.   各国政府は、なかでも社会・経済的な多様化、雇用、能力形成、参加、貧困根絶、権限移譲、パートナーシップに力点を置いて、持続可能な農村開発のための一貫性を持った国家政策及び法的フレームワークを早急に策定するよう要請する。政府は、農村開発フレームワークや戦略の中に農業を統合化させる際には、相乗効果を最大化させ、一層の一貫性を実現させるために、セクター横断型のアプローチを採用しなければならない。政府は、特に農業が生態系に及ぼす影響を評価するよう要請する。
 
7.   政府は、全てのタイプの生産システムと、土壌・水・国土の保全や農業の持つ生物多様性の向上など他の便益との双方を持続可能な形で管理するとともに、自然資源管理目的のために途上国に対して技術的財政的支援を行うことが必要であるとの認識の下に、総合農業投入資材管理、農業生態学的農業、オーガニック農業、都市オーガニック都市近郊農業、アグロフォレストリーによるものなどを含めたいろいろな自然資源管理に基づいた農業行為を速やかに推進するよう要請する。環境にやさしい伝統的及びローカルな知識を認め、保護し、推進させなければならない。
 
8.   政府は、不当な貿易障壁を回避し、かつ、FAOや他の国際機関における論議を踏まえつつ、アジェンダ21の第14章に基づいて、持続可能な形で食料生産を増加させ、食料安全保障を向上させることを主目的とする持続可能な農業及び農村開発の、経済、社会及び環境的な側面に関する調査を継続するよう要請する。
 
9.   政府は、特にマイナスインパクトを緩和させ、なかでも生物多様性の高い自然生態系における農業及び家畜生産の持つプラスインパクトを向上させるのに必要な行動を考慮に入れつつ、SARDについてエコシステムアプローチを追求するよう要請する。この点に関して、政府及び国際組織が、適切な活動とは何かを確認して勧告を行うとの目標を持って、農業が森林に及ぼす影響に関する調査を引き続き展開することは重要である。国際コミュニティが、特に途上国について、潜在生産力の低い土地における自然資源の保全と回復並びに土地の劣化防止にも貢献する国連砂漠化対処条約とそのグローバルメカニズムを早急に支援するよう要請する。
 
10.   政府は、健康保護を含めたSARDの社会的ディメンジョンにも特段の注意を速やかに払うよう要請する。政府は、生産と消費の両側面において農業行為が人間の健康や安全性に及ぼす影響を含め、小規模農業者や農業労働者の問題を十分考慮しなければならない。
 
11.   国連気候変動枠組条約締約国会議は、その運営要件の範囲において、各国の共通並びに分担責任や、国や地域独自の開発優先度・目標・状況を考慮に入れつつ、なかでも温室効果ガス排出削減又は炭素シーケストレーションをもたらすことになるSARD推進国家プログラムや、エネルギー効率向上及び再生可能エネルギーソース利用への投資増加を促すイニシアティブを支援すべく、関係メカニズムの使用を促進するよう要請する。
 
12.   生物多様性条約締約国会議、国連砂漠化対処条約締約国会議及び「地球環境機構」(Global Environment Facility: GEF)は、その既往及び実施中のプログラムの枠内において、なかでも農業における生物多様性の保全と持続可能な利用をもたらす国家プログラムに合致するSARD関連のイニシアティブを支援すべく、関係メカニズムの使用を促進するよう要請する。
 
13.   生物多様性条約締約国会議及び各国政府は、同条約の農業における生物多様性に関する作業プログラムの強化と効果的な実施を支援するとともに、同作業プログラムの実施において果たしているFAO及び関連組織の役割を支援するよう要請する。
 
(b) その他の資源へのアクセス
14.   特に婦人、被差別グループ、貧しい土着及びローカルコミュニティの人々が、土地資源及び水資源の持続可能な使用を図るのに必要な技術及び研究へのアクセスを保証する方策を採択し実施するよう、政府に要請する。貸付金へのアクセス、特に農村小額貸付金計画も重要である。
 
 
(c) 貧困の根絶
15.   全ての政府及び国際コミュニティは、「社会開発のための世界サミット」で採択された「コペンハーゲン社会開発宣言及び行動計画」に含まれているものを含め、貧困の根絶にかかわるコミットメントを速やかに実行し、SARDに合致した形で貧困根絶を達成するために農業による所得創出をさらに推進するよう要請する。貧困度合と生物多様性レベルの高い地帯については、特段の重視を行わなければならない。
 
(d) SARDの資金調達
16.   アジェンダ21を実施するための資金は、一般的には、国内資源で調達するものとする。全ての政府は、早急に国内及び国際資源を動因できる環境を作るよう要請する。
 
17.   途上国にとっては追加的な国際資金援助が極めて重要である。国際コミュニティは、アジェンダ21に規定されたように、SARD推進のための資金支援条項にかかわるコミットメントを直ちに履行するよう要請する。農業セクター及び農村開発セクターへのODAが過去20年間に着実に減少している場合には、受け取り国の国家開発戦略に従って、途上国、特に開発の最も遅れた国々や純食料輸入国における農業セクター及び農村開発セクターに対してかなりの割合でODAが振り向けられるよう、途上国とそのパートナーは特段の努力を払わなければならない。
 
18.   国連システム及び国際金融組織を含む国際コミュニティは、途上国、特に最も開発の遅れた国々や経済移行国におけるSARDを達成させるために、制度改革及び市場インフラとアクセス開発を早急に支援しなければならない。
 
19.   民間資本を引きつけ、開発の最も遅れた国々や経済移行国を始め様々な途上国に向けて、持続可能な農業及び農村開発への投資がなされるようにするための戦略及び実行方策を、途上国、特に開発の最も遅れた国々が策定するのを支援し、民間セクターが農業及び農村開発により多くのシェアの資本を振り向けるべく意思決定するのを支援するよう、政府及び国連システムを含む国際コミュニティに対して要請する。
 
(e) 技術移転と能力形成
20.   政府、関係国際機構及び民間セクターは、途上国及び経済移行国に対する、能力形成の支援並びに特に環境に優しい技術など適正技術の移転を継続し早急に強化するとともに、持続可能な農業、食料安全保障及び農村開発の推進を助長するためにパートナーシップを強化するよう要請する。
 
21.   国際金融組織は、食料貯蔵システムやアグロ・フード産業を含めた農業生産の向上によって、途上国が食料安全保障を達成できるための資金配分に力点を置きつつ、技術移転や能力形成を一層促進するよう要請する。
 
22.   関係する国際、リージョン及び国の機関並びに民間セクターは、途上国が研究を強化し、参加型アプローチを含め、目標とする食料安全保障とSARDを達成するために、国としての総合的自然資源管理、適切技術や持続可能な農業方法に対する努力を支援し、研究結果やその適用可能性に関する情報を普及させるのを支援するよう要請する。
 
23.   政府及び国際コミュニティは、災害早期警戒システムを共に推進し、自然災害の影響を防止及び緩和させる国の能力を向上させるよう要請する。
 
(f) バイオテクノロジー
24.   政府は、リオ宣言の原則15に記されたように、また、生物多様性条約カルタヘナ議定書を想起しつつ、科学に立脚した透明性の高いリスクアセスメント手順並びにリスク管理手順を用い、かつ、予防原則アプローチを適用させて、環境及び人間の健康に及ぼす影響の可能性を考慮しつつ、適切かつ安全なバイオテクノロジーが持続可能な技術や行為によって食料安全保障を向上させる潜在的可能性を検討するよう要請する。
 
25.   政府は、生物多様性条約カルタヘナバイオセイフティ議定書に直ちに署名・批准し、その効果的な施行を支持するよう要請する。
 
26.   政府は、適切な法的フレームワーク、行政やその他の手段を開発し、持続可能な農業及び農村開発、生物多様性の保護、living modified organismsのリスク分析並びに管理のための適切な戦略を実行に移すよう要請する。
 
27.   政府及び国連組織は、倫理的妥当性を考慮しつつ、公衆の健康や環境に対して受け入れがたいリスクを与えないバイオテクノロジーの応用のみを推進するよう要請する。
 
(g) 遺伝資源
28.   政府は、遺伝資源の持続可能な使用、保全及び保護に関する努力を直ちに強化するよう要請する。この点に関して、政府は、できるだけ速やかに「食料及び農業用植物遺伝資源に関する国際約束」についての交渉を終わらせ、「植物遺伝資源に関するライプチッヒ国際テクニカル会議」における「食料及び農業用植物遺伝資源の保全と持続可能な利用に関するグローバル行動計画」を施行し、「農業用動物遺伝資源管理のためのグローバル戦略」を施行し、かつさらに展開するのに貢献するよう要請する。さらに、政府は、その開発パートナーの協力を得て、生物多様性条約を効果的に施行すべく、努力を強化するよう要請する。
 
(h) 総合有害生物管理及び総合植物養分管理
29.   政府は、農業生産において、植物保護資材及び植物養分については、その安全かつ持続可能な使用のみを助長し、総合有害生物管理及び総合植物養分管理が一層応用されるべく、その実践的方策を早急に強化するよう要請する。農業者を含む全てのステークホルダー、民間セクター及び国際機構は、この目的に役立つ能力形成を含め、政府と効果的なパートナーシップを形成するよう要請する。
30.   衛生植物検疫措置は持続可能な農業及び農村開発と関連している。その施行はWTO協定に従ってなされなければならない。
 
(i) 砂漠化及び干ばつ
31.   砂漠化への対処並びに干ばつ影響の緩和はSARDの必須要件である。政府及び関連国際機関は、「国連砂漠化対処条約」に基づいて策定された砂漠化対処国家行動計画を、持続可能な開発に関する国家計画の中に統合化しなければならない。
 
(j) 農地へのアクセスと土地所有権の保証
32.   農地へのアクセスと土地所有に関する法律やシステムは国によって異なることを認識した上で、政府は、地方行政府を含む適切なレベルにおいて、市民に対して明確かつ強制力のある土地所有権を保証する政策を策定ないし採択の上、法律を施行するとともに、特に婦人や貧しい土着やローカルコミュニティに暮らしている人を含む被差別グループに対して、農地への公平なアクセスと土地所有権の法的保証を促進するよう要請する。
 
(k) 緊急事態に対する備え
33.   国際機構及び関連組織は、必要に応じて、政府及び地方行政府が、早期警戒、自然災害、環境モニタリングのシステムを開発し、効果的に使用するための能力開発を支援しなければならない。自然災害に伴う農業及び社会システムの回復力向上に対する努力に対する支援も要請する。
 
(l) 水資源
34.   水資源は、人間の基本的要求、健康、食料生産、エネルギーを満たし、生態系の回復及び維持や、社会及び経済開発全般、持続可能な農業及び農村開発に不可欠である。
 
3.国際協力
(a) 貿易
35.   商品輸出、特に一次産品の輸出は、多くの途上国において、輸出に従事する人達の暮らしや、経済活力全体を支えて、経済の大黒柱となっている。商品収益の不安定性が引き続き問題となっている。特に開発の最も遅れた国々を始めとする途上国において、市場アクセスの改善によるものを含め、持続可能な開発を支える形で、商品の多様化を高めるプログラムは、外貨獲得や雇用を増やすとともに、高付加価値生産による所得向上に貢献できる。
 
36.   「持続可能な開発委員会」は、「開発の最も遅れた国及び純食料輸入国に対する改革のマイナス影響に対する方策についてのマラケシュ閣僚決定」、「世界貿易機構の最も開発の遅れた国に対する包括的かつ総合的な行動計画」、国際通貨基金(IMF)、世界銀行及び世界貿易機構の首脳による調整プロセスにある途上国の支援に関する共同コミットメントの実施が必要であることを強調する。
 
(b) 情報の交換及び普及
37.   政府及び関係国際機構は、持続可能な農業にかかわる行為、技術及び市場についての情報を、中でも能力形成プログラムや情報技術を活用して、農業者や農業従事者に広く普及し、これらの者によるアクセスを早急に促進するよう要請する。この点に関し、婦人、疎外を受けているグループ、土着及びローカルコミュニティの人々に特段の注意を払わなければならない。
 
(c) 国連及びその他の国際活動
38.   FAO及び関連国際機構、特に世界銀行とIMFは、アジェンダ21とともに、世界食料サミットの目標でもあるSARD達成のための持続可能な生産及び農業方法に関して、途上国が具体的な政策及び行動を策定するのを早急に支援するよう要請する。特にFAOについては、SARDに向けた貢献の一環として。オーガニック農業に関するセクター横断型のプログラムを開発するよう要請する。
 
39.   関係国際機構は、途上国が食料安全保障強化のための政策を開発するのを早急に支援するよう要請する。
 
40.   国際農業開発基金(IFAD)は、途上国において、主に農村の貧困根絶の手段として、農村コミュニティがSARDを達成しようとする努力に対して支援を強化するよう要請する。
 
41.   関係機構及び組織は、性的差別問題に特段の注意を払いつつ、持続可能な農業及び農村開発を支える公的及び民間の努力についてのデータ収集、指標分析、モニタリング及び評価に関する手法開発及び連携改善の努力をさらに行うよう要請する。
 
42.   政府は、SARDを推進するために、まだ批准していない場合は、早急に国際的な関係法的手段を批准するよう要請する。
 
43.   これに関連して、政府は、残留性有機汚染物質(persistent organic pollutants: POPs)に関する国際行動実施のための国際的に法的拘束力のある手段に関する交渉を速やかに完了させるよう要請する。
 
44.   国際農業研究コンサルテイティブグループ(CGIAR)は、総合自然資源管理に関する研究を増やし、パートナーシップを強化するよう要請する。
 
(d) 参加
45.   SARD目的を効果的に実行するには、広範囲なステークホルダーの参加が必要である。SARDの達成には、権限移譲、参加、パートナーシップ、なかでもSARDにおいて重要な役割を果たしている婦人の参加が絶対不可欠である。従って、政府及び関係国際機構は、必要な場合、SARDに関連した意思決定へのステークホルダーの効果的な参加を確保する革新的な制度的メカニズムを早急に開発するよう要請する。
 
46.   現在行っているSARDに向けた進捗状況のレビューの一環として、既存の構造と資源の範囲内において、FAOとCSD事務局は、政府、関係国際機構及び全ての主要グループと相談の上、途上国のステークホルダーの適切かつ意味のある参加を含め、SARDに関するステークホルダーによる対話を継続させるよう要請する。CSD-10及びRio+10の準備として、この対話の中で、持続可能な農業及び農村開発の原則を説明又は支持する特別事例の探索やケーススタディの実施を行わなければならない。
 
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