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情報:農業と環境 No.13 2001.5.1
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No.13
・独立行政法人農業環境技術研究所設立
・独立行政法人農業環境技術研究所の中期目標
・独立行政法人農業環境技術研究所業務方法書
・独立行政法人農業環境技術研究所の中期計画
・独立行政法人農業環境技術研究所 平成13年度計画
・鶴田治雄氏:平成13年度農林水産大臣賞受賞
・農業環境技術研究所年報−平成11年度−刊行
・農業環境技術研究所資料−第25号−刊行
・Annual Report, April 1999 - March 2000,
・資料:Climate Variability and Its Impacts on Paddy Rice Production
in Japan and South Korea,
・資料:商業化組換え作物の世界情勢 1999年
平成13年4月1日、水戸地方法務局つくば出張所において独立行政法人農業環境技術研究所の設立登記を行った。これにより、独立行政法人農業環境技術研究所が設立された。当日、これを記念に研究所正面にヒトツバタゴ(ナンジャモンジャ)とシデコブシを植えた。
平成13年4月1日付け(農林水産省指令12農会第2923号)で、農林水産大臣から独立行政法人農業環境技術研究所理事長あてに、「独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第29条第1項の規定に基づき、独立行政法人農業環境技術研究所中期目標が別紙のとおり定められたので、同項の規定により指示する。」旨の連絡が入った。中期目標の内容を以下に示す。
第1 中期目標の期間
独立行政法人農業環境技術研究所(以下「研究所」という。)の中期目標の期間は、平成13年4月1日から平成18年3月31日までの5年間とする。
第2 業務運営の効率化に関する事項
運営費交付金で行う事業については、中期目標の期間中、毎年度平均で、少なくとも前年度比1%の経費節減を行う。
1 評価・点検の実施
独立行政法人評価委員会(評価委員会)の評価結果は、資源配分、業務運営等に適切に反映させる。評価委員会の評価の効率的かつ効果的な実施に資するため、研究所自らにおいても、運営状況、研究成果について外部専門家・有識者等を活用しつつ、業務の点検を行う。また、研究職員については、公正さと透明性を確保した業績評価を行い、評価結果は研究資源配分等に反映させる。
2 研究資源の効率的利用
外部資金の獲得、研究資源の充実・効率的利用、施設機械の有効利用等を図る。
3 研究支援の効率化及び充実・高度化
研究業務の高度化に対応した高度な専門技術・知識を有する者を配置する等、研究支援業務の効率化、充実・強化を図る。また、必要に応じ、外部委託等の活用を図る。
4 連携、協力の促進
他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、研究目標の共有、共同研究、人的交流の促進を行い、独立行政法人全体としての農林水産業等に関する研究水準の向上を図る。また、研究の効率的な実施のため、国公立機関、大学、民間、海外機関、国際機関等との共同研究等の連携・協力及び研究者の交流を行う。
5 管理事務業務の効率化
事務処理の迅速化、簡素化、文書資料の電子媒体化等による管理事務業務の効率化を行う。
6 職員の資質向上
職員への研修、資格取得等の促進を通じた資質向上に努める。
第3 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項
1 試験及び研究並びに調査
(1)重点研究領域
平成11年7月に制定された「食料・農業・農村基本法」及びその理念や施策の基本方向を具体化した「食料・農業・農村基本計画」並びに平成11年11月に策定された「農林水産研究基本目標」に示された研究開発を推進するため、研究所においては、「農業生態系の持つ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保」、「地球的規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明」、「生態学・環境科学を支える基盤技術」に関する研究を重点的に推進する。また、緊急に解決すべき問題については、研究開発を積極的に推進する。なお、研究開発に当たっては、安全性の確保に十分配慮する。
(2)研究の推進方向
取り組む:新たな研究課題に着手して、試験及び研究を推進すること。
解明する:原理、現象を科学的に明らかにすること。
開発する:利用可能な技術を作り上げること。
確立する:技術を組み合わせて技術体系を作り上げること。
ア 農業生態系の持つ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保
(ア)環境負荷物質の動態解明と制御技術の開発
a ダイオキシン類の異性体組成の解析に基づいてイネ等の作物体の汚染経路の解明に取り組む。また、特定集水域水田土壌から農業排水系への流出実態を解明する。
b カドミウム等微量元素の農耕地土壌に対する負荷経路を解明する。また、水稲・大豆を対象としてカドミウムの吸収に影響を与える要因を解明するとともに、子実への吸収量が少ない品種を検索する。
c 土壌・水系における硝酸性窒素等の流出過程を解明するとともに、中規模流域を対象とした硝酸性窒素の負荷流出予測モデルを開発する。
d 環境負荷物質の浄化技術に資するため、微生物による農薬等難分解性有機化合物の分解能解析技術及び土壌中での分解菌接種技術を開発する。
e 環境負荷物質のリスク評価に資するため、藻類等水生生物に対する農薬の影響評価法を開発する。
(イ)人為的インパクトが生態系の生物相に及ぼす影響の評価
a 遺伝子組換え作物・微生物の導入が環境に及ぼす影響を評価するため、導入遺伝子の環境中での追跡手法の開発、遺伝子拡散実態の解明を行う。また、開放系利用が可能となった組換え作物の長期モニタリングに取り組む。
b 寄生蜂等の導入生物が農業生態系の生物相に及ぼす影響の評価手法を開発する。
(ウ)農業生態系の構造と機能の解明
a 農業生態系内の生物の生育阻害・促進に関わり個体群動態を規定する環境要因を解明するため、菌核性糸状菌の増殖と土壌微生物相との関係及びハムシ等の昆虫個体群動態と植生構造との関係を解明する。
b 農薬散布や他感作用を持つ植物の導入等の農業生産活動が生物群集に及ぼす影響をモニタリングするとともに、生物群集の構造と遺伝子等の多様性に及ぼす影響を解明する。
イ 地球規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明
(ア)地球規模の環境変動が農業生態系に及ぼす影響解明
a 地球規模の環境変動に伴う穀物生産力の変動予測手法を開発する。
b 気候変化、二酸化炭素の濃度上昇が農業生産及び農業生態系に与える影響のモニタリング手法とモデルを開発する。
(イ)農業が地球環境に及ぼす影響解明と対策技術の開発
a 農耕地利用形態とメタン・亜酸化窒素等の発生要因の関係並びに農業生態系における微量ガス、花粉、ダスト等の放出・拡散過程を解明する。
b 窒素負荷の増加による土壌・水系の酸性化及び農業由来有機物の環境負荷ポテンシャルの定量化手法を開発する。
ウ 生態学・環境科学研究に係る基礎的・基盤的研究
(ア)環境負荷物質の分析技術の高度化
a ダイオキシン類のうち、現在毒性等価係数が定められている物質以外のものを含めて、作物・農耕地土壌中の含量を精密に測定するための手法を開発する。また、カドミウム、ホウ素等微量元素の定量法を開発する。
b 作物・農耕地土壌における137Cs等のモニタリングを継続するとともに、127I等の土壌中分布調査を行い、農業生態系における放射性同位元素の挙動を解明する。
(イ)環境資源情報の計測・解析技術の高度化
(ウ)農業環境資源情報の集積
a 土壌・水・大気及び生物資源に関する既存調査・研究成果・標本試料等のデータベース化と情報ネットワーク化を行い、農業環境資源インベントリーシステムのフレームを構築する。
b 微生物・昆虫については、独立行政法人農業生物資源研究所が実施するジーンバンク事業のサブバンクとしてセンターバンク(独立行政法人農業生物資源研究所)と連携しつつ、当該生物の収集、評価及び保存を行う。
(エ)公立試験研究機関等との研究協力
2 専門研究分野を活かした社会貢献
(1)分析、鑑定
(2)講習、研修等の開催
(3)行政、国際機関、学会等への協力
3 成果の公表、普及の促進
(1)成果の利活用の促進
(2)成果の公表と広報
(3)知的所有権等の取得と利活用の促進
第4 財務内容の改善に関する事項
1 収支の均衡
適切な業務運営を行うことにより、収支の均衡を図る。
2 業務の効率化を反映した予算計画の策定と遵守
経費節減目標を踏まえた運営費交付金の交付を受けることを前提に中期計画の予算を作成し、当該予算による運営を行う。
第5 その他業務運営に関する重要事項
人事に関する計画
(1)人員計画
(2)人材の確保
平成13年4月2日付け(13農会第16号)で、農林水産大臣から独立行政法人農業環境技術研究所理事長あてに、「独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第28条第1項の規定に基づき、平成13年4月1日付け農環研企第2号で申請のあった独立行政法人農業環境技術研究所業務方法書は、申請のとおり認可する。」旨の連絡が入った。業務方法書の内容を以下に示す。
目次
第1章 総則(第1条−第2条)
第2章 業務に関する事項(第3条−第12条)
第3章 業務委託の基準(第13条−第14条)
第4章 競争入札その他契約に関する基本的事項(第15条−第17条)
第5章 雑則(第18条−第19条)
附則
(目的)
第1条 この業務方法書は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第28条第1項及び独立行政法人農業環境技術研究所の業務運営並びに財務及び会計に関する省令(平成13年農林水産省第44号)第1条の規定に基づき、独立行政法人農業環境技術研究所法(平成11年法律第194号。以下「法」という。)第10条に規定する独立行政法人農業環境技術研究所(以下「研究所」という。)の行う業務の方法について基本的な事項を定め、もってその業務の適正な運営に資することを目的とする。
(業務運営の基本的方針)
第2条 研究所は、法に定められたその設置の目的及び業務内容の重要性にかんがみ、関係機関と緊密な連携を図り、その業務の適正かつ効率的な運営を期するものとする。
(中期計画)
第3条 研究所は、法第10条各号に掲げる業務を農林水産大臣の認可を受けた中期計画に従って実施するものとする。
(調査及び研究)
第4条 研究所は、法第10条第1号に掲げる基礎的な調査及び研究の実施に当たっては、研究所が有する各種の研究資源の効率的な活用を図るとともに、他の独立行政法人、都道府県、大学や民間の試験研究機関その他関係機関との連携の確保に留意するものとする。
(分析、鑑定)
第5条 研究所は、法第10条第1号に掲げる分析及び鑑定については、依頼に応じて、研究所が有する高度な専門知識を必要とするものについて実施する。
2 研究所は、前項の業務を実施するときは、別に定めるところより、所要の対価を徴収することができるものとする。
(緊急時の要請)
第6条 研究所は、法第12条第1項に規定する要請があったときは、同条第2項の規定により、速やかにその要請された基礎的な調査及び研究又はこれに関連する分析若しくは鑑定を実施するものとする。
(受託による業務の実施)
第7条 研究所は、法第10条第1号に掲げる基礎的な調査及び研究の業務の実施に支障のない範囲内で、依頼に応じて、受託による業務を実施することができる。
(受託契約)
第8条 研究所は、前条の規定による受託をしようとするときは、委託しようとする者と受託に関する契約を締結するものとする。
2 前項の契約においては、次の事項を定める。
(1)受託により実施する業務(以下「受託業務」という。)の課題
(2)受託業務の内容に関する事項
(3)受託業務を実施する場所及び方法に関する事項
(4)受託契約の期間及びその解除に関する事項
(5)受託業務の結果の報告に関する事項
(6)受託費の額並びに支払いの時期及び方法に関する事項
(7)受託業務の実施の結果の取扱方法及びその結果が知的所有権の対象となったときのその帰属に関する事項
(8)その他必要な事項
(共同研究)
第9条 研究所は、試験及び研究並びに調査を効率的に実施するために必要な場合には、他の者と試験及び研究並びに調査を分担し、技術及び知識を交換し、並びにその費用を分担して行う試験及び研究並びに調査(次条において「共同研究」という。)を行うことができる。
(共同研究契約)
第10条 研究所は、共同研究を実施しようとするときは、共同研究を行おうとする者と共同研究に関する契約を締結するものとする。
2 前項の契約においては、次に掲げる事項を定める。
(1)共同研究の課題
(2)共同研究の内容に関する事項
(3)共同研究に係る業務を実施する場所及び方法に関する事項
(4)共同研究の期間及びその解除に関する事項
(5)共同研究に要する費用の分担に関する事項
(6)共同研究の結果の取扱の方法に関する事項
(7)共同研究の結果が知的所有権の対象となったときのその帰属に関する事項
(8)その他必要な事項
(成果の普及)
第11条 研究所は、次の各号に掲げる方法により、成果の公表、普及を図るものとする。
(1)成果に関する発表会を開催すること
(2)成果に関する報告書等を作成し、これを頒布すること
(3)成果を研究所のホームページに掲載して、提供すること
(4)その他事例に応じて最も適当と認められる方法
(知的所有権)
第12条 研究所は、重要な研究成果については、積極的に国内外において知的所有権を取得するとともに、民間等に対し、その実施を許諾する等により、研究成果の普及を推進するものとする。
2 研究所は、知的所有権の実施の許諾等については、我が国の農林水産業等の振興に支障を来すことのないよう考慮の上、決定するものとする。
(業務の委託)
第13条 研究所は、その業務の効率的かつ効果的な運営に資すると認めるときは、法第10条に掲げる業務について、研究所以外の者に委託することができる。
(委託契約)
第14条 研究所は、前条の規定により業務を委託しようとするときは、当該委託業務に関し、受託者と委託に関する契約を締結するものとする。
2 前項の委託契約においては、次の事項を定める。
(1)委託業務の課題
(2)委託業務の内容に関する事項
(3)委託に係る業務を実施する場所及び方法に関する事項
(4)委託契約の期間及びその解除に関する事項
(5)委託に係る業務の結果の報告に関する事項
(6)委託費の額並びに支払いの時期及び方法に関する事項
(7)委託業務の実施の結果の取扱方法及びその結果が知的所有権の対象となったときのその帰属に関する事項
(8)その他必要な事項
(契約の方法)
第15条 研究所における売買、賃貸、請負その他の契約は、すべて一般競争契約の方法によるものとし、当該契約の目的に従い、最高又は最低の価格による入札者と締結するものとする。ただし、次の各号に掲げる場合には、指名競争契約又は随意契約に付することができるものとする。
(1)契約の性質又は目的から一般競争に付することが適当でないとき又は一般競争に付し得ないとき
(2)災害その他緊急を要するために一般競争に付し得ないとき
(3)予定価格が少額であるとき
(4)その他一般競争に付することが不利と認められるとき
(政府調達に関する協定に係る物品等の契約手続き)
第16条 政府調達に関する協定(平成7年条約第23号)に係る物品等の調達手続きについては、同協定の規定に則してこれを行うものとする。
(会計規程への委任)
第17条 この章に定めるもののほか、研究所が行う契約に関して必要な事項は、通則法第49条の会計規程で定める。
(施設等の貸与)
第18条 研究所は、研究所の業務運営に支障のない範囲において、研究所の施設・設備の一部を他の者に貸与することができるものとする。
2 研究所は、前項により貸与を実施するときは、別に定めるところより、所要の対価を徴収することができるものとする。
(その他の業務の方法)
第19条 この業務方法書に定めるもののほか、業務に関し必要な事項については、理事長が別に定める。
この業務方法書は、農林水産大臣の認可のあった日から施行する。
平成13年4月2日付け(13農会第9号)で、農林水産大臣から独立行政法人農業環境技術研究所理事長あてに、「独立行政法人農業環境技術研究所の中期目標を達成するための計画(中期計画)の認可について:独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第30条第1項の規定に基づき、平成13年4月1日付け農環研企第1号で申請のあった独立行政法人農業環境技術研究所中期計画は、申請のとおり認可する。」旨の連絡が入った。中期計画の内容を以下に示す。
T 業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置
運営費交付金で行う事業については、中期目標の期間中、毎年度平均で、少なくとも前年度比1%の経費節減を行う。
1 評価・点検の実施
(1)外部専門家・有識者等を活用し、毎年度の報告に先立ち、自ら点検を行う。
(2)主要な研究については、研究の推進方策・計画及び進捗状況の点検を行うとともに、外部専門家・有識者等の意見を聞いて成果の評価を行い、その結果は研究資源の配分に反映させるとともに公表する。
(3)評価項目、評価基準を定める等公正さを確保しつつ、研究職員の業績評価を行い、その結果は処遇、研究資源の配分に反映させる。
2 研究資源の効率的利用
(1)中期目標達成に有効な競争的資金には積極的に応募し、研究資源の充実を図る。
(2)研究資源の効率的・重点的な配分を行う。
(3)施設・機械の有効利用を図るため、共同利用に努めるとともに、共用等が可能な機械については、その情報をインターネットを介して広く公開する等、有効かつ効率的利用に努める。
3 研究支援の効率化及び充実・高度化
(1)特許等の知的所有権の取得・移転に係る支援態勢を強化する。
(2)農林水産省研究ネットワーク等を活用して、研究情報収集・提供業務の効率化、充実・強化を図る。
(3)施設、機械等の保守管理については、業務の性格に応じて外部委託に努める。
4 連携、協力の促進
(1)他の独立行政法人との連携、協力
他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、研究目標の共有、共同研究、人事交流を含めた連携、協力を積極的に行う。また、独立行政法人農業技術研究機構が行う多様な専門知識を融合した総合研究に必要に応じて協力する。
(2)産学官の連携、協力
(1) 国公立機関、大学、民間、海外機関、国際機関等との共同研究及び研究者の交流等を積極的に推進する。
(2) 研究を効率的に推進するため、行政との連携を図る。
(3) 科学技術協力に関する政府間協定等を活用し、先進国等との共同研究を推進する。
(4) 国の助成により公立機関等が実施する研究等への協力を行う。
(5) 毎年定期的に、関係独立行政法人、行政部局、都道府県等の参加を求めて、研究推進のための会議を開催し、相互の連携・協力のあり方等につき意見交換等を行う。
5 管理事務業務の効率化
事務の簡素化と迅速化を図るため、LAN等を有効に利用するとともに、会計処理、発注業務の電子化を進め、事務処理に係わる新たなソフトウエア等の導入を行う。
光熱水の節約等により、管理経費の節減を図る。
6 職員の資質向上
(1) 業務上必要な各種の研修に職員を積極的に参加させるほか、必要な研修を実施し、職員の資質向上に努める。また、業務上必要な資格取得を支援する。
(2) 各種制度を積極的に活用し、職員の在外研究の機会の増加に努める。
(3) 博士号の取得を奨励し、適切な指導を行う。
U 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置
1 試験及び研究並びに調査
A 農業生態系の持つ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保
1)環境負荷物質の動態解明と制御技術の開発
(1)ダイオキシン類のイネ等による吸収、移行及び特定集水域水田土壌から農業排水系への流出実態の解明
イネ等へのダイオキシン類の汚染経路を解明し汚染軽減を図るため、土壌、大気等の農業環境及び作物体から検出されるダイオキシン類の異性体パターンを解析する。また、各種異性体の物理化学的特性に基づいてイネ等による吸収、体内移行、蓄積性との関係を解明する。さらに、土壌粒子や水生・湿性植物によるダイオキシン類の保持及び分解等の特性に基づいて、ダイオキシン類の水田から農業排水系への流出実態を解明する。
(2)カドミウム等微量元素の土壌集積経路及びイネ・ダイズ子実への移行過程の解明
(3)土壌・水系における硝酸性窒素等の動態解明と流出予測モデルの開発
硝酸性窒素等の流出を予測するため、土層内及び地下水中の移動過程を解明するとともに、硝酸性窒素の中規模流域におけるモニタリング手法を開発する。また、農業生態系における硝酸性窒素の脱窒機能等を評価し、負荷軽減技術を開発する。さらに、硝酸性窒素の負荷流出予測を中規模流域に対しても適用可能にするため、総合的な予測モデルを開発する。
(4)難分解性有機化合物分解微生物の分解能解析技術の開発及び汚染環境中への分解菌接種技術の開発
微生物のもつ農薬等の有機化合物分解能を利用した汚染環境修復技術等を開発するため、芳香族塩素化合物分解菌等を対象に、分解能、分解経路、分解酵素と分解関連遺伝子の構造と機能等を解析するための技術を開発する。また、トリアジン系除草剤等を対象に、分解菌の集積・単離技術の開発、分解経路や分解能の解析と評価、汚染環境への分解菌接種技術の開発、及び分解菌の環境中での動態解析技術の開発を行う。
(5)農薬の水生生物等に対する影響評価法の開発
農薬による環境負荷の軽減を図るため、水田に施用された水田用除草剤の動態解明の一環として、農耕地周辺水系への拡散移行経路の解明とその流出量の評価法の開発、水生生物における濃縮過程の解明及び水生生物に対する影響評価法の開発を行う。また、生態系で重要な位置を占める微生物や昆虫等に与える含窒素農薬の影響を解明する。
2)人為的インパクトが生態系の生物相に及ぼす影響の評価
(1)遺伝子組換え生物による生態系かく乱機構の解明と影響評価手法の開発
導入された遺伝子組換え作物が近縁の作物や野生植物との交雑等によって生態系に及ぼす影響を評価する。また、組換え作物が産生するBtトキシンの環境への影響の評価手法を開発する。さらに、開放系利用が可能となった組換え農作物(ナタネ、ダイズ)の長期栽培モニタリングを実施する。遺伝子組換え微生物については、導入遺伝子の伝達と再編成及び環境中における遺伝子拡散の遺伝学的解析手法及び組換え体の安全性評価手法を開発する。
(2)導入寄生蜂等による生態系かく乱の実態とかく乱機構の解明
3)農業生態系の構造と機能の解明
(1)環境要因が微生物の増殖、個体群変動に及ぼす影響の解明
(2)昆虫の個体群動態に及ぼす餌資源、昆虫放出物の影響の解明
ハムシ等の昆虫個体群動態と餌資源の質・量・空間的配置との相互作用を解明する。また、昆虫が放出し、昆虫個体群や群集の移動・繁殖行動に影響を及ぼす化学物質の構成及び構造を決定するとともに、これら化学物質に対する成虫の反応性を解明する。
(3)農業生産活動が農業生態系の生物群集の構造と多様性に及ぼす影響の評価
スルホニルウレア系水田除草剤の連用による除草剤抵抗性植物の出現、他感作用をもつ植物の導入及び耕作放棄に伴う水田生態系の植生空間分布の変化等、農業生産活動が農業生態系及びその周辺生態系に生息する生物群集に及ぼす影響の実態を調査する。また、農業生産活動が生物群集の構造と遺伝子の多様性に及ぼす影響を生理・生態的、生化学的特性に基づき解明、評価する。
(4)畑地及びその周辺に生息する線虫の動態解明
B 地球規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明
1)地球規模の環境変動が農業生態系に及ぼす影響解明
(1)地球規模の環境変動に伴うコメ生産地域の生産力変動予測手法の開発
(2)気候変化、二酸化炭素の濃度上昇に伴う農業生産への影響の解明
(3)気候変化が生態系のフラックス変動に及ぼす影響の解明
2)農業が地球環境に及ぼす影響解明と対策技術の開発
(1)農業活動が温室効果ガスへ及ぼす影響解明と対策技術の開発
(2)農業生態系における炭化水素、花粉、ダスト等大気質の放出・拡散過程の解明
(3)人間活動に伴う環境変動が農業生態系における物質循環及び空間構造の特性に及ぼす影響の解明
人間活動に伴う物質の動き及び土地利用変化が農業生態系における物質循環及び空間構造の特性に与える影響を定量的に評価する。このため、農業由来の窒素負荷物質、土地資源、生物種の広域的な移動等を指標としながら、システムダイナミクス等の観点からの解析手法を開発する。また、地域バイオマスエネルギー生産システムのLCA等の環境影響評価手法を確立する。
C 生態学・環境科学研究に係る基礎的・基盤的研究
1)環境負荷物質の分析技術の高度化
(1)農業環境中におけるダイオキシン類等化学物質の超微量分析法の高度化
農作物、土壌の試料について、分析精度の向上のため、分析用試料の調製方法、抽出・精製方法を検討するとともに、高分解能GC/MS等の高感度機器を利用した高精度分析法を開発する。また、カドミウム、ホウ素等による環境負荷の拡大防止に資するため、これらの元素の土壌中の形態別定量法を開発する。
(2)作物・農耕地土壌における137Cs等放射性同位元素のモニタリング
2)環境資源情報の計測・解析技術の高度化
農業生態系の広域的計測手法及び多変量解析手法の高度化
人工衛星等多様なリモートセンシング計測によって、植物・土壌等環境資源の量的変動や広域的分布を高精度で評価する方法を開発する。また、農業環境資源から計測されたデータを、インベントリー等に蓄積・利用するため、データを分類・検証するための新たなコンピュータ多用型解析手法や多変量解析手法を開発する。
3)農業環境資源情報の集積
(1)農業環境資源の分類・同定及び機能の解明に基づくインベントリーフレームの構築
(2)昆虫・微生物の収集・特性評価とジーンバンク登録
独立行政法人農業生物資源研究所が実施するジーンバンク事業に参画し、サブバンクとしてセンターバンク(独立行政法人農業生物資源研究所)と連携しつつ当該生物の収集・評価及び保存を行う。また、適当と認められた遺伝資源については、随時、センターバンクに移管する。
4)公立試験研究機関等との研究協力
2 専門研究分野を活かした社会貢献
(1)分析、鑑定
(2)講習、研修等の開催
(1) 講習会、講演会等を積極的に開催するとともに、国や団体等が主催する講習会等に積極的に協力する。
(2) 他の独立行政法人、大学、国公立機関、民間等の研修生を積極的に受け入れ、人材育成、技術水準の向上、技術情報の移転を図る。また、海外からの研修生を積極的に受け入れる。
(3) 外部に対する技術相談窓口を設置し対応する。
(3)行政、国際機関、学会等への協力
わが国を代表する農業環境研究に関わる研究機関として、行政、国際機関、学会等の委員会・会議等に職員を派遣するとともに、政府の行う科学技術に関する国際協力・交流に協力する。特に、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等の国際会議に積極的に職員を派遣する。また、行政等の要請に応じて、技術情報を適切に提供する。
3 成果の公表、普及の促進
(1)成果の利活用の促進
(1) 研究成果の中で生産現場等に利活用できる(普及に移しうる)成果を外部の評価により、中期目標の期間内に10件以上を選定し、普及を図る。
(2) 行政、生産者等が利用可能な各種のマニュアル、データベース等の作成、農林水産省研究ネットワーク等の活用、研究成果の他独立行政法人や行政機関等への移転等を通じて、成果の普及、利活用の促進に努める。
(2)成果の公表と広報
(1) 研究成果は国内外の学会、シンポジウム等で発表するとともに、中期目標の期間内に810報以上の論文を学術雑誌、機関誌等に公表する。
(2) 研究成果については、その内容をインターネットや「つくばリサーチギャラリー」、「土壌モノリス館」、「昆虫展示室」の展示等を通じて公開に努めるとともに、重要な成果に関しては、適宜マスコミに情報を提供する。また、パブリックアクセプタンスの確保に努める。
(3)知的所有権等の取得と利活用の促進
(1) 知的所有権の取得に努め、中期目標の期間内に10件以上の国内特許等を出願する。また、海外で利用される可能性、我が国の農林水産業等への影響を配慮して、特許等の外国出願を行う。
(2) 補償金の充実等により、知的所有権取得のインセンティブを与える。
(3) 取得した知的所有権に係る情報提供はインターネットを通じて行うとともに、研究成果移転促進事業等を活用し、知的所有権の利活用を促進する。この場合、知的所有権の実施の許諾等については、我が国の農林水産業等の振興に支障を来すことのないよう考慮の上、決定する。
V 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画
1 予算
区 分 |
金 額 |
収入
運営費交付金
施設整備費補助金
受託収入
諸収入
版権及特許権等収入
その他の収入
計 |
17,434
426
4,569
12
9
3
22,441 |
支出
業務経費
施設整備費
受託経費
試験研究費
管理諸費
一般管理費
研究管理費
管理諸費
人件費
計
|
2,247
426
4,569
4,076
493
4,618
526
4,092
10,581
22,441
|
[人件費の見積り] |
|
期間中総額8,506百万円を支出する。 |
|
但し、上記の額は、役員報酬並びに職員基本給、職員諸手当、超過勤務手当、休職者給与及び国際機関派遣職員給与に相当する範囲の費用である。 |
[運営費交付金算定のルール] |
|
1.平成13年度については、積み上げ方式とする。 |
|
2.平成14年度以降については、次の算定ルールを用いる。 |
|
運営費交付金=
|
(業務経費+一般管理費)×α×β+人件費−諸収入±γ |
|
|
α:消費者物価指数 |
|
|
β:効率化係数 |
|
|
γ:各年度の業務の状況に応じて増減する経費 |
|
人件費=
|
基本給等+退職手当+休職者・派遣者給与+公務災害補償費+児童手当拠出金+共済組合負担金 |
|
基本給等=
|
前年度の(基本給+諸手当+超過勤務手当)×(1+給与改定率) |
|
(注)1.
|
運営費交付金額には、中期目標の期間中の常勤職員数の効率化減員分を反映させる。 |
|
2.
|
消費者物価指数及び給与改定率については、運営状況等を勘案した伸び率とする。
ただし、運営状況等によっては、措置を行わないことも排除されない。 |
[注記]前提条件 |
|
1. |
期間中の効率化係数を年99%と推定 |
|
2.
|
給与改定率及び消費者物価指数についての伸び率を、ともに0%と推定 |
2 収支計画
平成13年度〜平成17年度収支計画 |
(単位:百万円) |
区 分 |
金 額 |
費用の部
経常費用
人件費
業務経費
受託経費
一般管理費
減価償却費
財務費用
臨時損失
収益の部
運営費交付金収益
諸収入
受託収入
資産見返運営費交付金戻入
資産見返物品受贈額戻入
臨時利益
純利益
目的積立金取崩額
総利益
|
22,281
22,281
10,581
1,764
4,569
4,618
749
0
0
22,281
16,951
12
4,569
315
434
0
0
0
0
|
[注記] |
|
1. |
収支計画は予算ベースで作成した。 |
2.
|
当法人における退職手当については、役員退職手当支給基準及び国家公務員退職手当法に基づいて支給することとなるが、その全額について、運営費交付金を財源とするものと想定している。 |
3.
|
「受託収入」は、農林水産省及び他省庁の委託プロジェクト費を計上した。 |
3 資金計画
平成13年度〜平成17年度資金計画 |
(単位:百万円) |
区 分 |
金 額 |
資金支出
業務活動による支出
投資活動による支出
財務活動による支出
次期中期目標の期間への繰越金
資金収入
業務活動による収入
運営費交付金による収入
受託収入
その他の収入
投資活動による収入
施設整備費補助金による収入
その他の収入
財務活動による収入
|
22,441
21,532
909
0
0
22,441
22,015
17,434
4,569
12
426
426
0
0
|
[注記] |
|
1. |
資金計画は予算ベースで作成した。 |
2.
|
「受託収入」は、農林水産省及び他省庁の委託プロジェクト費を計上した。 |
3.
|
「業務活動による収入」の「その他の収入」は、諸収入額を記載した。 |
W 短期借入金の限度額
中期目標の期間中の各年度の短期借入金は4億円を限度とする。
想定される理由:運営費交付金の受け入れの遅延
X 重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画
計画なし。
Y 剰余金の使途
農業環境インベントリー研究の強化のため、標本収集とデータベース構築の加速を目的として、研究用機器の更新・購入等に使用する。
Z その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項
1 施設及び設備に関する計画
業務の適切かつ効率的な実施の確保のため、業務実施上の必要性及び既存の施設、設備の老朽化等に伴う施設及び設備の整備改修等を計画的に行う。
平成13年度〜平成17年度施設、設備に関する計画 |
(単位:百万円) |
施設・設備の内容 |
予定額 |
財 源 |
実験棟排水処理施設改修
侵入昆虫・導入天敵隔離飼育室新築
農業生態系ガス動態解析実験室改修
温室効果ガス発生制御施設増改修
|
|
施設整備費補助金
〃
〃
〃 |
合 計
|
426±δ
|
|
(注)δ:各年度増減する施設、設備の整備等に要する経費 |
2 人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)
1)人員計画
(1)方針
(2)人員に係る指標
期末の常勤職員数は期初を上回らないものとする。
(参考:移行職員相当数198名、期末の常勤職員数193名)
(参考:中期目標の期間中の人件費総額見込み8、506百万円
但し、上記の額は、役員報酬並びに職員基本給、職員諸手当、超過勤務手当、休職者給与及び国際機関派遣職員給与に相当する範囲の費用である。)
2)人材の確保
(1) 職員の新規採用については、国家公務員採用試験の活用及び選考採用により行う。研究職員については任期付任用の拡大を図る。また、中期目標達成に必要な人材を確保するため、ポストドクター等の派遣制度を活用する。
(2) 広く人材を求めるため、研究を行う職については公募の導入を図る。
上記の独立行政法人農業環境技術研究所の中期計画をもとに、平成13年度の計画を作成した。内容は以下のとおりである。
T 業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置
1 研究業務の効率化
(1)評価・点検の実施
(1)「運営・評価委員会」の開催
業務及び運営の改善に資するため、外部委員を加えて、研究所の研究推進方策、研究資源配分、運営管理、研究計画・成果について評価・点検する「運営・評価委員会」を開催する。また、その結果をインターネット等で公開する。
(2)研究課題の検討会の開催
研究の推進方策・計画、進捗状況、成果を的確に把握するとともにそれらを評価するため、全ての実行課題を対象に研究所内部で検討会を開催する。
(3) 研究職員の業績審査委員会の開催
研究職員の業績評価を行い、その結果を適正に処遇、研究資源配分等に反映させるため、研究職員の業績審査委員会を開催する。
2 研究資源の効率的利用
(1)研究資源の充実
農水省のパイオニア特別研究、他府省、生物系特定産業技術研究推進機構等の競争的資金に係る研究課題に積極的に応募する。
(2)高額機器の利用計画
高額機器の利用計画を作成し、効率的な利用の促進を図る。
3 研究支援の効率化及び充実・高度化
(1)研究情報の収集、提供
農林水産省研究ネットワークを活用して、研究情報の収集、提供の充実強化を図る。
(2)外部委託計画
アイソトープ施設、精密機器類の保守・管理及び研究本館・実験棟の一般保守管理について、業務の性格に応じて外部委託により効率化を図る。
4 連携、協力の促進
(1)他の独立行政法人との連携、協力
他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、研究目標の共有、共同研究、人事交流を含めた連携、協力を積極的に行う。特に、開発途上地域における農業環境研究の推進に当たっては、独立行政法人国際農林水産業研究センターのセンター機能を活用するとともに、研究の推進に参画する。また、独立行政法人農業研究機構が行う総合研究に協力する。さらに、森林総合研究所、水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所、農業環境技術研究所の3研究機関が設置した「環境研究三所連絡会」を活用し、環境研究の情報交換を行う。
(2)産学官の連携、協力
(1)国内共同研究の実施
環境省地球環境総合研究推進費による国立環境研究所との共同研究、文部科学省革新的な技術開発研究推進費による(株)フィルドサイエンス、九州大学、福岡県農業試験場との共同研究を実施するほか、組換え植物の隔離ほ場試験を電力中央研究所、社団法人農林水産先端技術産業振興センターと共同で行う。
(2)外国との共同研究の実施
地球温暖化に伴う北極域陸域生態系の温室効果ガス収支の変動解明とデータの総合化の研究、水田農業の持続性と公益機能に関する日韓共同研究を実施する
(3)行政との連携
農水省大臣官房統計情報部、農村振興局資源課との交流会を行うとともに、農業環境研究推進のための会議を開催し、行政部局との連携・協力について意見交換を行う。
(4)研究情報の提供
農業と環境に関する研究情報について「情報:農業と環境」を毎月発行し、他研究機関及び行政との情報の共有、研究の連携、協力に努める。
5 管理事務業務の効率化
(1)会計システムの導入
会計システムを導入する。人事管理システム及び健康管理システムの導入のための準備を行い、次年度以降の早い時期に導入できる体制を確立する。
(2)事務処理の電子化
事務処理の電子化により、より一層のペ−パ−レス化を進める。
(3)戦略的な研究推進、運営方針に即した研究所の運営の円滑化
戦略的な研究推進、運営方針に即した研究所の運営の円滑化を図るため、総務部の係等の見直しを行い、企画調整部門に一般職員を重点的に配置する。
6 職員の資質向上
(1) 業務上必要な各種の研修に職員を積極的に参加させるほか、必要な研修を実施し、職員の資質向上に努める。また、業務上必要な資格取得を支援する。
(2) 国際研究集会派遣実施要領を作成し、30名程度を目途に職員を派遣する。
(3) 博士号の取得を奨励し、適切な指導を行う。
U 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置
1.試験及び研究並びに調査
A 農業生態系の持つ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保
1)環境負荷物質の動態解明と制御技術の開発
(1)ダイオキシン類のイネ等による吸収、移行及び特定集水域水田土壌から農業排水系への流出実態の解明
(1)イネ等におけるダイオキシン類の吸収、移行特性の解明
担当:化学環境部・環境化学分析センター
研究計画:安定同位体標識ダイオキシン類を用いたトレーサ実験によりイネ作物体における動態を解明する。さらに、野菜をダイオキシン類汚染土壌で栽培し、野菜の各部位におけるダイオキシン類濃度と温度条件との関係を解析する。
(2)牛久沼集水域における水田から農業排水系へのダイオキシン類の流出実態の解明
担当:化学環境部・地球環境部・生物環境安全部・環境化学分析センター
研究計画:水田から流出する土壌粒子及び排水路底質などに収着されているダイオキシン類濃度を把握し、土壌粒子特性とダイオキシン類濃度との関係を解明する。さらに土壌粒子等浮遊物に対する各種凝集剤の機能を評価する。
(2)カドミウム等微量元素の土壌集積経路及びイネ・ダイズ子実への移行過程の解明
(1)カドミウム等の土壌中における存在形態と吸収抑制機構の解明
担当:化学環境部
研究計画:水稲栽培期間に、経時的にポーラスカップで採取した土壌溶液中及び玄米中のカドミウム濃度の相関を検討する。
(2)農耕地におけるカドミウム等負荷量の評価とイネ・ダイズ等による吸収過程の解明
担当:化学環境部・環境化学分析センター
研究計画:肥料及び再生有機質資材等のカドミウム、鉛、その他の重金属含量に関する文献デ−タを収集するとともに、デ−タが不備な資材については全量分析を行い、重金属含量に関するデ−タベースを作成する。
(3)カドミウム吸収能の低いイネ・ダイズ品種の検索
担当:化学環境部
研究計画:異なる品種のダイズを重金属汚染土壌で栽培し、子実中のカドミウム濃度を測定し、カドミウム濃度の低い品種を検索する。
(3)土壌・水系における硝酸性窒素等の動態解明と流出予測モデルの開発
(1)硝酸性窒素等の土層内移動の解明
担当:化学環境部
研究計画:黒ボク土畑土壌による硝酸性窒素の吸着と移動遅延に関わる土壌要因を不飽和水分条件下の溶質移動実験等により明らかにし、土壌の実効的な溶質吸着能の測定法を開発する。
(2)各種資材等の評価による負荷軽減技術の開発
担当:化学環境部
研究計画:硝酸イオンを吸着する生分解性資材を試作し、資材の分解性や土壌からの硝酸イオン溶脱を抑制する機能を解析する。
(3)硝酸性窒素の中規模流域におけるモニタリング手法の開発
担当:化学環境部
研究計画:対象とする矢作川流域にモデル地区を選定し、水田、樹園地及び生活排水由来の硝酸性窒素負荷の寄与率をエンドメンバーズ法等により推定する。
(4)硝酸性窒素の負荷流出予測モデルの中規模流域への適用
担当:化学環境部
研究計画:水質解析に必要なデータベース化手法の改良と外部データベースのリモートオブジェクト化を図り、さらに矢作川について、流域特性、水質のデータベース化に取り組む。
(4)難分解性有機化合物分解微生物の分解能解析技術の開発及び汚染環境中への分解菌接種技術の開発
(1)クロロ安息香酸分解菌等の分解能解析技術の開発
担当:化学環境部
研究計画:クロロ安息香酸等の分解菌のクロロ安息香酸ジオキシゲナーゼ等分解酵素の遺伝子群を大腸菌発現ベクターで発現させること等により、分解活性や基質特異性を解析する方法の開発に取り組む。
(2)木質炭化素材を用いたトリアジン系除草剤汚染環境への分解菌接種技術の開発
担当:化学環境部
研究計画:土壌中に混和した木質炭化素材中に土壌還流法を用いてシマジン分解菌を集積させ、そこから分解菌を単離する。さらに、分解菌を形態学・生化学・分子生物学的手法を用いて同定する。
(5)農薬の水生生物等に対する影響評価法の開発
(1)水田用除草剤の水系における拡散経路の解明と藻類等水生生物に対する影響評価法の開発
担当:化学環境部・環境化学分析センター
研究計画:水系における除草剤の質量分析計付き高速液体クロマトグラフを用いた高感度分析法の開発に取り組み、水生態系の一次生産者である藻類の各種除草剤に対する感受性及び藻類の生育回復性について検討する。
(2)新規資材による生体防御機能等の活性化機構の解明
担当:化学環境部
研究計画:非殺菌性の抵抗性誘導物質施用によって発現する抵抗性関連タンパク質のキュウリ、ナシからの検出・同定に取り組み、ほ場での抵抗性誘導効果を確認する。また、雑草制御微生物の氷核活性機能の利用法開発に取り組む。
2)人為的インパクトが生態系の生物相に及ぼす影響の評価
(1)遺伝子組換え生物による生態系かく乱機構の解明と影響評価手法の開発
(1)組換え作物の栽培が農業生態系における生物相に及ぼす影響評価並びに導入遺伝子の拡散に関する遺伝学的解析手法の開発と遺伝子拡散の実態解明
担当:生物環境安全部
研究計画:組換えナタネと交雑の可能性のある近縁野生種の生態学的特性とこれらの混生群落個体間での遺伝子交流の実態を解明する。また、飛散したトウモロコシ花粉の植物葉上への堆積量を実測するとともに、ほ場周辺への堆積量を推定する。
(2)導入寄生蜂等による生態系かく乱の実態とかく乱機構の解明
(1)ハモグリバエ等に対する導入寄生蜂等が非標的昆虫に及ぼす影響の評価
担当:生物環境安全部
研究計画:マメハモグリバエに対する導入寄生蜂等が土着寄生蜂等非標的昆虫に与える影響の事前評価を行う。また、クリタマバチに対する導入・土着寄生蜂集団間の類縁関係を分子マーカー等を用いて解析する。
3)農業生態系の構造と機能の解明
(1)環境要因が微生物の増殖、個体群変動に及ぼす影響の解明
(1)土壌微生物相等の要因が菌核性糸状菌等の動態に及ぼす影響の解析
担当:生物環境安全部
研究計画:培養可能な土壌微生物を形態的特徴に基づいて同定するとともに、培養できない菌を含めた土壌糸状菌相を変性勾配ゲル電気泳動法により明らかにする。
(2)微生物及び植物の二次代謝物等が微生物の増殖に及ぼす影響の解析
担当:生物環境安全部
研究計画:農業環境に適応した植物共生細菌、植物寄生細菌及びウイルス等が生産する毒素、タンパク等を検索し、それらが生物間相互作用に及ぼす影響について評価、解析する。
(2)昆虫の個体群動態に及ぼす餌資源、昆虫放出物の影響の解明
(1)寄主植物の空間分布がハムシ等の個体群動態に与える影響の解析
担当:生物環境安全部
研究計画:寄主植物であるブタクサの分布状態を人為的にコントロールし、寄主植物の分布状態の違いがブタクサハムシ個体群の増殖に及ぼす影響をほ場試験によって明らかにする。
(2)カメムシ、ハマキガ等の放出物が周辺昆虫に及ぼす影響の解明
担当:生物環境安全部
研究計画:ツヤアオカメムシの放出物中の集合活性成分を分析する。また、クリシギゾウムシの誘引物質を野外においてスクリーニングする。さらに、交信かく乱剤に感受性及び非感受性のチャノコカクモンハマキについて性フェロモン微量成分を比較する。
(3)農業生産活動が農業生態系の生物群集の構造と多様性に及ぼす影響の評価
(1)スルホニルウレア系水田除草剤施用が水田周辺の植物群落の種多様性に及ぼす影響
担当:生物環境安全部
研究計画:感受性生物型と抵抗性生物型の交配試験とその後代の検定により、スルホニルウレア系除草剤抵抗性雑草の遺伝様式を明らかにし、抵抗性遺伝子拡散モデル作成のための基礎資料を得る。
(2)カテコール関連化合物を放出する植物の導入が周辺の植物や土壌環境に及ぼす影響解明
担当:生物環境安全部
研究計画:植物から農業環境中にカテコール化合物等の生理活性物質を放出する植物を探索する手法を開発し、この手法を用いてこれらの生理活性物質を放出する導入・侵入植物の検索を行う。
(3)農地管理形態の変化に伴う農地及び周辺植生の変動予測
担当:生物環境安全部
研究計画:絶滅危惧植物タコノアシ群落について、立地や人為条件の異なる地区において群落調査を行い、その成立要因を解析するとともに、植生変化把握のフレームを構築するため、数値地図情報等を用いて農業生態系の類型化を行う。
(4)畑地及びその周辺に生息する線虫の動態解明
(1)畑地及びその周辺に生息する線虫の属・種構成の解明並びに昆虫病原性線虫等の特性解明
担当:生物環境安全部
研究計画:Mononchida目、Dorylaimida目等捕食性線虫、Rhabditida目等細菌食性線虫の属・種レベルでの同定を行う。昆虫病原性線虫の寄主範囲、感染に好適な条件などの特性の解明を進める。
B 地球規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明
1)地球規模の環境変動が農業生態系に及ぼす影響解明
(1)地球規模の環境変動に伴うコメ生産地域の生産力変動予測手法の開発
(1)地球規模の環境変動に伴う生育阻害要因を考慮した東アジアのコメ生産力の変化予測
担当:地球環境部
研究計画:水資源変動、土壌劣化、害虫発生等の生産力制限要因の解明のため、東アジア周辺地域を対象に、将来の気候の推定に適した統計的ダウンスケーリング手法の基礎を開発する。
(2)日本周辺地域の水稲栽培における脆弱性評価及び影響緩和技術の提示
担当:地球環境部
研究計画:温暖化に対する日本の水稲栽培の脆弱性評価の基礎として、潜在収量を規定する要素を明らかにし、それらの関係から将来の気候条件における栽培適期の変化が収穫量に及ぼす影響を推定する。
(2)気候変化、二酸化炭素の濃度上昇に伴う農業生産への影響の解明
(1)気候変化や二酸化炭素の濃度上昇による農業気候資源量の変動特性の解明と影響評価法の開発
担当:地球環境部
研究計画:気候変化や二酸化炭素の上昇による農業水資源への影響を評価し、予測手法を開発するために必要なデータベースの構築を行う。
(2)二酸化炭素の濃度上昇がアジアのコメ生産性に及ぼす影響のモデル化
担当:地球環境部
研究計画:FACE(開放系大気CO2増加)実験結果とイネ生長モデルによるシミュレーションの結果を比較して、モデルの検証及び高度化を図る。
(3)気候変化が生態系のフラックス変動に及ぼす影響の解明
(1)農耕地や自然生態系におけるフラックス変動の評価
担当:地球環境部
研究計画:水田のフラックス観測サイトにおいて、渦相関法を適用したCO2や水蒸気フラックスの連続観測を行い、2001年の気象条件下における現作付け体系水田の炭素収支を明らかにする。
2)農業が地球環境に及ぼす影響解明と対策技術の開発
(1)農業活動が温室効果ガスへ及ぼす影響解明と対策技術の開発
(1)農地の利用形態と温室効果ガス等の発生要因の関係解明及び発生抑制技術の開発
担当:地球環境部
研究計画:農地における土地利用変化、バイオマス燃焼等による温室効果ガス等の発生実態を調査するとともに、発生要因の関係解析に取り組む。
(2)農業生態系における炭化水素、花粉、ダスト等大気質の放出・拡散過程の解明
(1)農業生態系における炭化水素、花粉、ダスト等大気質の放出・拡散過程の解明
担当:地球環境部
研究計画:農業生態系において放出される大気質について、大気中濃度の動的な評価手法を、気象条件等を考慮しつつ比較検討する。
(3)人間活動に伴う環境変動が農業生態系における物質循環及び空間構造の特性に及ぼす影響の解明
(1)窒素負荷の増大等による農業生態系の酸性化と窒素等の動態把握手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:降水、土壌水の窒素、イオウ、塩基等の濃度の調査を実施し、その結果に基づいて集水域モデルを改良し、農業生態系内の物質循環を定量的に評価する。
(2)物質収支算定システムの構築と環境負荷の定量化手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:食料の生産と物流に関わる農業関連情報を収集し農業生産に伴う養分のフロー・ストックの評価システムの構築に取り組む。
(3)GISを活用した農業生態系の空間構造変動の定量的把握手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:土地利用変動域を定量的に評価するために、基準となる明治初期に測量された迅速測図とその後作成された地形図、土地利用図を精度よく重ね合せる。
(4)中国における砂漠化に伴う環境資源変動評価のための指標の開発
担当:地球環境部、生物環境安全部、環境化学分析センター
研究計画:中国内モンゴルにおける砂漠化プロセスに関連する資料・文献等を収集し、指標開発の基礎となるデータベースを構築する。また、自然的土地条件等に関する現地調査を行い、砂漠化モニタリングを実施する地区を選定する。
C 生態学・環境科学研究に係る基礎的・基盤的研究
1)環境負荷物質の分析技術の高度化
(1)農業環境中におけるダイオキシン類等化学物質の超微量分析法の高度化
(1)塩素化ダイオキシン類等有機化学物質の超微量分析法の開発
担当:環境化学分析センター、化学環境部
研究計画:超臨界・高速溶媒抽出装置などを用い、農作物や土壌中のダイオキシン類を効率的に抽出・精製する方法を検討するとともに、高分解能質量分析計による精度の高い測定法の開発に取り組む。
(2)農業環境中のカドミウム等の超微量分析法の開発
担当:環境化学分析センター、化学環境部
研究計画:農業環境中の水試料に含まれるカドミウム等の重金属類を分離、濃縮する手法を検討し、誘導結合プラズマ質量分析法を用いた重金属類の超微量分析法の開発に取り組む。
(2)作物・農耕地土壌における137Cs等放射性同位元素のモニタリング
(1)リスク評価のための137Cs等放射性同位元素の平常時モニタリング
担当:環境化学分析センター
研究計画:特定ほ場の米、麦並びに水田・畑土壌中の137Cs、90Sr、つくば地区の農作物中の131I、137Csの年次変動を測定してバックグラウンドデータを蓄積する。
2)環境資源情報の計測・解析技術の高度化
(1)農業生態系の広域的計測手法及び多変量解析手法の高度化
(1)衛星情報のデータベース化と画像解析手法の高度化
担当:地球環境部
研究計画:農林水産研究計算センターにある地球観測衛星データベースを利用して東及び東南アジアの植生モニタリング手法を検討し、環境資源の把握を試みる。
(2)リモートセンシングによる植被動態の広域的検出・評価手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:可視・近赤外領域を主とする反射スペクトル計測とモデリングにより、植生の量及び構造情報を評価するための計測・評価手法の開発に取り組む。
(3)環境資源・環境負荷データの分類手法及び多変量解析手法の開発
担当:地球環境部
研究計画:多変量データ解析の基礎となる多次元正規分布に関して、効率的な確率計算法の理論的検討を行う。また、形質状態の変化を定量的に評価する手法を検討し、生物資源の系統分類における祖先形質の状態復元への応用を試みる。
3)農業環境資源情報の集積
(1)農業環境資源の分類・同定及び機能の解明に基づくインベントリーフレームの構築
(1)機能に基づく土壌の分類及びインベントリーのためのフレームの構築
担当:農業環境インベントリーセンター
研究計画:野外や実験室からのネットワークによる土壌情報の閲覧を可能にするため、既存の土壌情報をデータベース化するとともに、新しい情報を入力するシステムの開発に取り組む。
(2)所蔵タイプ標本等のデータベース化及びインベントリーのためのフレームの構築
担当:農業環境インベントリーセンター
研究計画:タイプ標本データベースのフレーム作成のため、コウチュウ目を対象として画像化に適した有用形質情報及び情報取得手法を比較検討する。チョウ目については幼虫識別のための分類形質を抽出する。
(3)主要イネ科植物に常在する微生物相の分類、同定及び機能解析並びにインベントリーのためのフレームの構築
担当:農業環境インベントリーセンター
研究計画:イネ等から経時的に分離した微生物(糸状菌、細菌)を分類するため、形態や性状の調査及び遺伝子の解析を行う。
(2)昆虫・微生物の収集・特性評価とジーンバンク登録
独立行政法人農業生物資源研究所が実施するジーンバンク事業に参画し、サブバンクとしてセンターバンク(独立行政法人農業生物資源研究所)と連携しつつ当該生物の収集・評価及び保存を行う。また、適当と認められた遺伝資源については、随時、センターバンクに移管する。
担当:生物環境安全部、農業環境インベントリーセンター
研究計画:天敵等有用昆虫を収集し特性評価を行って、ジーンバンクに登録する。栽培及び野生植物体上の常在菌及び病原微生物を分離・同定し、ジーンバンクに登録する。
4)公立試験研究機関等との研究協力
指定試験事業及び国の助成により公立機関等が実施する研究への支援等の協力を行う。
2 専門研究分野を活かした社会貢献
(1)分析、鑑定
行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、高度な専門的知識が必要とされ、他の機関では実施が困難な分析、鑑定を実施する。
(2)講習、研修等の開催
(1)講演会・シンポジウム等の開催計画
農業環境シンポジウムをはじめ、気象環境研究会、土・水研究会、有機化学物質研究会、植生管理研究会等のシンポジウム、研究会を開催する。
(2)研修生の受け入れ
他の独立行政法人、大学、国公立機関、民間等の研修生を積極的に受け入れ、人材育成、技術水準の向上、技術情報の移転を図る。また、海外からの研修生を積極的に受け入れる。
(3)外部に対する技術相談
企画調整部研究企画科を技術相談窓口として外部からの技術相談に対応する。また、統計解析指導、昆虫同定等を実施する。
(3)行政、国際機関、学会等への協力
わが国を代表する農業環境研究に関わる研究機関として、行政機関の専門・評価委員会、国際機関の委員会・会議、国際協力事業団、学会等へ職員を派遣するとともに、政府の行う科学技術に関する国際協力・交流に協力する。
3 成果の公表、普及の促進
(1)成果の利活用の促進
(1) 研究成果の中で生産現場等に利活用できる(普及に移しうる)成果を評価のうえ選定し、普及を図る。また、農業環境研究成果情報を発行する。
(2) 行政、生産者等が利用可能な各種のマニュアル、データベース等の枠組みを作成する。
(2)成果の公表と広報
(1) 研究成果は国内外の学会、シンポジウム等で180件以上発表をするとともに、150報以上の論文を学術雑誌、機関誌等に公表する。
(2) 農業環境技術研究所報告、農業環境技術研究所資料、農業環境技術研究所叢書を発行し研究成果の公表を行うとともに、農業環境技術研究所年報、英文年報及び農業環境技術研究所ニュースを発行し研究活動の積極的な広報を行う。
(3) 研究成果については、その内容をインターネットや「つくばリサーチギャラリー」、「土壌モノリス館」、「昆虫展示室」の展示等を通じて公開に努めるとともに、主要な成果に関しては、適宜マスコミに情報を提供する。
(3)知的所有権等の取得と利活用の促進
(1) 知的所有権の取得に努める。また、海外で利用される可能性、我が国の農林水産業等への影響を配慮して、特許等の外国出願を行う。
(2) 補償金の充実等により、知的所有権取得のインセンティブを与える。
(3) 取得した知的所有権に係る情報提供はインターネットを通じて行うとともに、研究成果移転促進事業等を活用し、知的所有権の利活用を促進する。
V 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画
1 予算
区 分 |
金 額 |
収入
運営費交付金
施設整備費補助金
受託収入
諸収入
版権及特許権等収入
その他の収入
計
|
3,571
35
924
2
2
0
4,532
|
支出
業務経費
施設整備費
受託経費
試験研究費
管理諸費
一般管理費
研究管理費
管理諸費
人件費
計
|
458
35
924
824
100
942
107
835
2,173
4,532
|
2 収支計画
区 分 |
金 額 |
費用の部
経常費用
人件費
業務経費
受託経費
一般管理費
減価償却費
財務費用
臨時損失
収益の部
運営費交付金収益
諸収入
受託収入
資産見返運営費交付金戻入
資産見返物品受贈額戻入
臨時利益
純利益
目的積立金取崩額
総利益
|
4,509
4,509
2,173
359
875
942
160
0
0
4,509
3,472
2
875
14
146
0
0
0
0
|
3 資金計画
区 分 |
金 額 |
資金支出
業務活動による支出
投資活動による支出
財務活動による支出
次期中期目標の期間への繰越金
資金収入
業務活動による収入
運営費交付金による収入
受託収入
その他の収入
投資活動による収入
施設整備費補助金による収入
その他の収入
財務活動による収入
|
4,532
4,349
183
0
0
4,532
4,497
3,571
924
2
35
35
0
0
|
W その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項
1 施設及び設備に関する計画
実験棟排水処理施設改修を行う。
2 人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)
1)人員計画
(1)方針
管理業務の効率化に伴う適切な職員の配置に努める。また、重点研究領域への職員の重点配置等を行うことにより、研究業務の効率的、効果的な推進を行う。
(2)人員に係る指標
常勤職員数については、独立行政法人移行時は198名とし、年度末は197名とする。
2)人材の確保
(1) 職員の新規採用については、国家公務員採用試験の活用及び選考採用により行う。研究職員については任期付任用も視野に入れる。また、中期目標達成に必要な人材を確保するため、ポストドクター等の派遣制度を活用する。環境省地球環境総合推進研究費によるポストドクターを2名受け入れるとともに、科学技術振興事業団重点研究支援事業の支援者を14名受け入れる。
(2) 広く人材を求めるため、研究を行う職については公募制の導入を図る。
鶴田治雄氏:平成13年度農林水産大臣賞を受賞
阿江教治氏:平成13年度文部科学大臣賞を受賞
牧野知之氏:2001年度日本土壌肥料学会奨励賞を受賞
|
当研究所の職員、鶴田治雄、阿江教治および牧野知之氏は、それぞれ農林水産大臣賞、文部科学大臣賞および日本土壌肥料学会賞をこの春に受賞した。受賞課題、所属および研究概要は、次の通りである。
農耕地における温室効果ガスの排出削減対策技術の確立及び技術指導
|
鶴田治雄:地球環境部・温室効果ガスチームリーダー |
研究の概要
農耕地の土壌からはメタンや亜酸化窒素などのガスが発生している。これらのガスは、地球温暖化やオゾン層破壊に深く係わっている。このため、これらのガスの分析法や実態解明のために世界中の研究者が多くの努力を費やしている。鶴田技官は、農耕地から発生するガスの自動連続測定システムを世界で初めて開発し、発生量と発生要因を明らかにした。
これらの結果をもとに、構造改善局資源課及び農産園芸局農産課が実施した「日本の農耕地からの温室効果ガスの排出実態調査」を指導した。また、その結果の解析も行い、日本の農耕地全体からの発生量を初めて明らかにした。これらの結果は、環境庁の温室効果ガス排出目録やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書にも活用され、その結果は広く国内外に知られるところとなった。さらに、鶴田技官は、農耕地からの亜酸化窒素の削減技術に関する研究を進めており、現在、この分野における我が国およびアジアの指導的な立場にある。この間2回にわたり、亜酸化窒素等のガスの発生をテーマに国際ワークショップを組織・開催し、これらのガスの発生要因および抑制技術開発の研究の重要性をアピールした。
特異なリン酸獲得機構を有する植物の発見と
これら機構の解明・利用に関する研究
|
阿江教治:化学環境部・重金属研究グループ・土壌生化学ユニットリーダー |
研究の概要
植物の主要な栄養素の一つであるリン資源は、今後50〜100年で枯渇すると危惧されている。しかし農耕地土壌中には、鉄と結合した通常の植物が利用できない形態の難溶性リンが蓄積しており、これを利用する技術の開発が課題であった。
阿江氏は、インドに生育するキマメは、リン肥料がなくてもよく生育することに着目した。このキマメの生育特性は、根から有機酸(ピシヂン酸)が分泌し、キレート作用によって鉄とリンを解離し、溶解したリンがキマメへ吸収される機構にあることを明らかにした。また、落花生も難溶性リンを利用できる能力に優れているが、キマメとは異なり、根細胞壁表面に組み込まれたキレート性基質(2-hydroxymethy1-2, 4-dihydroxypentanedioic acid)が土壌粒子と反応し難溶性の鉄型リンが溶解され、そのリンを獲得することを明らかにした。この成果を基盤にして、難溶性リンを溶解し利用できる特異的な植物を利用して、土壌に蓄積した難溶性リンを回収する技術を開発した。
多くの国際農業研究機構では、阿江氏の研究成果をもとに、難溶性の土壌リンを特異的に吸収利用できる植物を導入し、広範囲なリン欠乏土壌における作物生産の向上を図るための技術開発の指針としている。また、先進国にあっては、この成果を活用し、土壌に蓄積したリンの循環利用を促すことにより、持続型農業や循環型社会の創出に寄与することが期待されている。
土壌中におけるマンガンの酸化還元機能と動態に関する研究
|
牧野知之:化学環境部・重金属研究グループ・土壌化学ユニット |
研究の概要
マンガンは必須微量要素としての重要な役割がある。この元素は、土壌における酸化還元反応に深く係わっている。この研究は、マンガン酸化物に起因する土壌酸化能の定量的評価手法を開発するとともに、マンガン酸化物とフェノール酸の挙動との関係を明らかにし、さらに土壌乾燥にともなうマンガンおよびマンガン酸化物に吸蔵された重金属の化学的形態変化のメカニズムを解明したものである。
これらの一連の研究では、まず土壌のマンガン酸化物に起因する土壌酸化能の評価法を確立し、黒ボク土の酸化能は他の土壌に比べ特異的に低いことを示した。次に、本法を用いて土壌におけるフェノール酸の酸化反応を解析し、フェノール酸に対して吸着型の黒ボク土と酸化型のその他土壌が大別できること、そしてフェノール酸に対する酸化能は土壌の乾燥によって低下することを明らかにした。これまでの土壌化学的研究では合成マンガン酸化物を用いたモデル研究が多かったが、酸化能の定量的評価手法を土壌に適用することで、吸着と酸化が同時に生じる複雑な実際の土壌における解析を可能とした意義は大きい。
さらに、土壌乾燥にともなうマンガン過剰症という物理化学的には説明不可能な現象に関して土壌化学的な要因解明を行い、土壌乾燥によってマンガン酸化物が溶解して可給性のマンガンが増加することを示した。また、このメカニズムは土壌殺菌効果で増加した中性糖による還元反応によることを明らかにした。さらにマンガン酸化物に吸蔵された重金属も同時に溶出してくることを示した。これらのことは、乾燥にともなうマンガン過剰症発現への明快な理論的説明を与えるとともに、微量要素の可給性に関する新たな視点を導き、そして未知のメカニズムを解明した研究として高い価値を持っている。
このように、これらの一連の研究は土壌マンガン酸化物の酸化還元反応とマンガンの動態に関する基礎的な反応のメカニズムおよびその特性を解明している。特に糖とマンガン酸化物の関係に注目した研究は世界的にも例がなく、新たな研究分野の創造にもつながる画期的な研究である。
農業環境技術研究所は、農業生産のための環境管理に関する基礎技術、農業活動に伴って農用地系外に影響を及ぼす環境負荷軽減技術、および国土を保全する農業の持つ環境保全機能の発揮に関する研究を行い、農業生産と環境負荷を調和させるための技術開発を目指している。さらに、農業活動が地球環境に及ぼす影響や地球環境変動が農業生産に及ぼす影響など地球規模の問題まで研究対象にしている。
当所は、農業生産環境を含む農業環境の制御・保全・利用に関する先行的・基盤的技術開発を行う機関として、昭和58年に発足以来、これまでもその時々の情勢を踏まえた「農林水産研究基本目標」に合わせて、昭和60年、平成2年および平成8年に研究基本計画を改定してきた。
一方、平成11年7月に「食料・農業・農村基本法」が公布・施行された。この基本法では、従来からの農業所得や農業生産性の向上のみならず、食料の安定供給や自然循環機能の維持増進による農業の持続的な発展がうたわれている。これを受けて平成11年11月には、我が国の農林水産研究の重点的・効率的な推進を図るため「農林水産研究基本目標」が策定された。農業環境技術研究所では、この「農林水産研究基本目標」に沿って、今後10年間の農業環境研究の研究計画を策定した。
この間、「農業と環境」は国内外においてますます重要な問題になってきている。ひとつは、グローバリゼーションの問題である。WTOやOECDなどで、農産物貿易や農業政策の論議において環境保全が重視され、さらに、IPCCの温暖化防止など地球規模の環境問題も重要となり、その中でも農業と地球の関わりが避けて通れない現実がでてきた。
一方では、20世紀後半に急速に発達した鉱工業や革新的技術を用いた農業の集約化により発生した問題などがある。それは、有害重金属による農地の汚染、環境ホルモンなど微量化学物質の食物連鎖を通した生物相における汚染、さらには遺伝子導入作物の生態系への影響など、もともとわれわれ人類が作り出したものによる環境へのマイナス影響の問題である。さらには、農業生産の集約化・規模拡大や耕作放棄地の拡大などに伴う農業環境資源の劣化と多面的機能の低下の問題もある。
いずれにしても、21世紀に予想される様々な環境問題は、農業問題と密接に関わっていることが明らかにされてきた。環境問題は人口問題の解決をぬきにしては考えられない。人口問題は即ち食料問題であるし、食料問題はまさに農業問題である。したがって、環境問題はとりもなおさず農業問題なのである。いうなれば、21世紀は「農業と環境」の時代といっても過言ではない。
このような状況のもとで、「農業と環境」の研究はますます重要性が増している。大地と水と大気と生物に悪い影響をあたえないで食料を供給するためには、農業生態系の持つ自然循環機能を活用し、健全な食料を生産することがきわめて重要である。当所は、今後もこうした視点に立って、食と環境の安全を確保する研究を進める。
ここにお届けする当所の平成11年度の活動をまとめた年報が、少しでも「農業と環境」のために役立てば幸いである。巻末に所員の研究成果などのリストを掲載した。関心のある方はいつでも必要
な資料をご請求いただきたい。
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目 次 |
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1. |
研究実施の概要 |
|
1.企画調整部 2.環境管理部 3.環境資源部 4.環境生物部 5.資材動態部 |
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2. |
平成11年度研究課題 |
1. |
研究課題一覧 |
2. |
プロジェクト研究課題分担一覧 |
3. |
農林水産業特別試験研究費(応用研究)補助金による研究課題一覧 |
4. |
所内プロジェクト研究実施課題一覧 |
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3. |
研究成果と展望 |
1. |
地球温暖化による農業生態系の脆弱性評価−研究の現状と展望 |
2.
|
窒素肥料を投入した畑地からの亜酸化窒素(N2O)と一酸化窒素(NO)の発生とその発生抑制技術 |
3. |
SPOT/HRVによる佐賀平野の農業モニタリング |
4. |
大気微量気体(メタン、一酸化炭素、水素)の畑地への吸収 |
5.
|
土壌乾燥に伴うマンガンおよびマンガン酸化物に吸収される重金属の形態変化 |
6. |
野菜収穫残渣からの亜酸化窒素発生 |
7. |
アゼトウガラシにおけるスルホニルウレア系除草剤抵抗性の遺伝様式 |
8.
|
昆虫病原性線虫 Steinernema 属および Heterorhabditis 属の日本における分布 |
9. |
チャバネアオカメムシの集合フェロモン |
10. |
ヒトメビウンカの薬剤抵抗性の地域性と抵抗性要因 |
11. |
ホウ素及びストロンチウムの安定同位対比によるコメの生産国の判別 |
|
|
4. |
研究成果の発表と広報 |
|
1.農業環境技術研究所の刊行物 2.国公立機関及び大学の刊行物 3.学会・研究会刊行物 4.学会口頭発表 5.商業・協会刊行物・図書等 6.その他 7.広報 |
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|
5. |
研究・技術協力 |
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1.会議・研究会議 2.技術協力 3.研究・研修等 4.共同研究等 5.昆虫の同定依頼 |
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6. |
総務 |
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1.機関 2.人事 3.会計 4.図書 5.視察・見学者数 6.委員会 |
廃水処理汚泥中の微量元素の存在形態 |
川崎 晃・木村 龍介・新井 重光 |
(2000年10月16日受理) |
要約 |
発生源を異にする排水処理汚泥22種類中の微量元素36元素(Li,Be,Sc,V,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,As,Rb,Sr,Y,Ag,Cd,Sb,Cs,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Tl,Pb,Bi,Th,U)の存在形態を逐次抽出法で調査した。化学工場、食品工場、し尿処理場および下水に含まれる、Li,Be,Sc,V,Ga,Rb,Y,Ag,Sb,Cs,ランタノイド(La〜Lu),Tl,Pb,Bi,Th,Uは、いずれも残渣態が主たる形態であり、CuとAsは有機態が主たる形態であった。これらの形態はいずれも難溶性である。Co,Ni,Zn,Sr,Cdは鉄・マンガン酸化物結合体の比率が高かったが、炭酸塩結合態及び交換態を主たる形態とするものは認められなかった。この3画分の合計(易溶性画分)濃度を火山灰土壌と比較すると、Ni,Cu,Zn,As,Cd,Sbは、ほとんどの汚泥において火山灰土壌を上回っており、汚泥連用に伴う土壌中の易溶性画分濃度の上昇が示唆された。
目次
1 はじめに
2 試料及び分析方法
1 供試試料
2 分析方法
3 廃水処理汚泥中の微量元素の存在形態
1 化学工場汚泥
2 食品工場汚泥
3 し尿処理場汚泥
4 下水汚泥
5 おがくず豚ぷん堆肥及び火山灰土壌
6 廃水処理汚泥と火山灰土壌との比較
7 形態による微量元素の分類
4 終わりに
引用文献
参考までに,これまでの資料(第1〜第24号)の内容を以下に示す。
第1号:
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全国の試験研究機関で飼育されている昆虫・ダニ類,環境生物部昆虫管理科(1986.8) |
第2号:
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メッシュデータ総合管理システム(GEM)の作成と利用法,織田 健次郎・三輪 睿太郎(1987.3) |
第3号:
|
日本産アザミウマ文献・寄生植物目録,宮崎 昌久・工藤 巌(1988.2) |
第4号:
|
農業用リモートセンシング解析装置(ARSAS),渡辺 利通・堀江 正樹・芝山道郎 |
|
ランドサットMSSデータを用いた九州地方における水稲収量推定の試み,渡辺 利通(1988.3)
|
第5号:
|
農業環境技術研究所構内の植物目録−1986年現在−,内島 立郎(1989.3) |
第6号:
|
パーソナルコンピュータによるポリゴン型地図情報の入出力システム(KMPLOT)と利用の手引き,松森 堅治・徳留 昭一・加藤 好武(1989.2) |
第7号:
|
農業環境とリモートセンシング−ランドサットTMデータによる農業環境資源の解析−,秋山 侃・福原 道一・石田 憲治・山形 与志樹・宮地 直道・冨士田 裕子(1989.3) |
第8号:
|
アメダスデータの処理と気象要素の動的表示法,川島 茂人(1990.3) |
第9号:
|
リレーショナル・データベースによる有用植物の病害診断支援システムの開発,濱屋 悦次・大久保 博人・佐藤 豊三(1990.3) |
第10号:
|
農業環境技術研究所生態系保存実験ほ場の植生と群落構造,井出 任・守山 弘・原田 直國(1990.3) |
第11号:
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農業環境技術研究所累年気象表(1980年〜1989年),奥山 富子(1990.3) |
第12号:
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農耕地土壌分類改善のための土壌断面データ集,三土 正則(1991.2) |
第13号:
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筑波地区における降雨の化学的性状に関するモニタリングデータ(1985年〜1990年)岡本 玲子・大嶋 秀雄・山口 武則・尾崎 保夫・川上 一夫・藤井 國博(1992.2)
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第14号: |
主要農薬のマススペクトル,飯塚 宏栄・大崎 佳徳(1992.3)
|
第15号:
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農業環境技術研究所所蔵植物標本目録−1993年現在−,江塚 昭典(1994.3)
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第16号:
|
Micrometeorological Data and their Characteristics over the Arctic Tundra at Barrow, Alaska during the summer of 1993, Yoshinobu HARAZONO, Mayumi YOSHIMOTO, Akira MIYATA, Yohei UCHIDA, George L.Vourlitis and Walter C. Oechel(1995.3)
|
第17号: |
農耕地土壌分類 第3次改訂版,農耕地土壌分類委員会(1995.3)
|
第18号:
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エコトロン−施設の概要と研究例−,山口 武則・大浦 典子・山川 修治・竹澤 邦夫・福原 道一(1995.3)
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第19号:
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パソコンを用いた植物病原細菌同定システム「簡易同定96」の使い方,西山 幸司(1996.12)
|
第20号:
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農村地域における地下水の水質に関する調査データ(1986年〜1993年),藤井 國博・岡本 玲子・山口 武則・大嶋 秀雄・大政 謙次・芝野 和夫(1997.3)
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第21号:
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日本産昆虫,ダニ,線虫の発育零点と有効積算温度,桐谷 圭治(1997.3) |
第22号:
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A check list of Japanese Cinara CURTIS (Homoptera:Aphidiae)with keys to the species V.F. EASTOP, Masahisa MIYAZAKI and Masato SORIN |
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マメハモグリバエ寄生蜂の図解検索,小西 和彦(1998.3)
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第23号:
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農業環境技術研究所累年気象表(1990年〜1996年),林 陽生・鳥谷 均・後藤 慎吉・横沢 正幸・清野 豁(1998.3)
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第24号:
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Micrometeorology of Dune and Vegetation at the Semi-Arid Area at Naiman in Inner Mongolia, China, Yoshinobu HARAZONO, Shenggong LI, Jianyou SHEN, Zongying HE, Xinmin LIU, Halin ZHAO, Kentaro TAKAGI and Masashi KOMINE(1999.3) |
Annual Report, April 1999 - March 2000,
National Institute of Agro-Environmental Sciences
刊行
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The worlds expanding population and economic activity places ever-greater loads upon the environment. The content and quality of the load has changed with the times. In the former high economic growth period, the pollutants abundantly discharged from mining and manufacturing industries caused bad effects to humans and agricultural products. These pollution problems were what are called the point source pollution.
However, this pollution problem has been solved by the efforts of many people. What was generated next is so called non-point source, or what I call the plane source pollution. Though the discharged concentration from each source is low, the load to the environment is very high in the total amount, since the area is broad and there are many sources. The eutrophication of lakes and marshes by the nitrogen and the phosphorous derived from agricultural and daily life drainage is representative of plane source pollution.
Next, humanity has generated the environmental problems of three-dimensional space. It is the phenomenon of global warming with greenhouse gases such as carbon dioxide, methane and nitrous oxide derived from the combustion of fossil fuels, paddy fields, and animal rumen and nitrogen fertilizer. It is also the phenomenon of the ozone hole that provided shocking evidence of the atmospheric effects of chlorofluorocarbons (CFCs) used for industrial and agricultural products.
Recently, even more complex environmental problems demand our attention. A wide range of manmade chemicals, especially hormone-disrupting chemicals, affect our fertility - our children. At present, the environmental problems have exceeded our conventional perception of time and space.
There seems to be the illness of the separation of complex systems in the present society. They are "the separation of knowledge from knowledge", "the separation of knowledge and feeling" and "the separation of knowledge and action".
It can be said that present science is also the same. That is to say, we must always think about how to connect individual research, and ask whose individual research brings about greater progress, and whose individual research is actually utilized.
We want agriculture to ensure not only food production but also environmental conservation and green space for people even in the present age of complex systems. To achieve this aim, individual results introduced here should be connected with each other and linked to further research and practice.
This Annual Report introduces the research and other activity in fiscal 1999 of the National Institute of Agro-Environmental Sciences. Since the research topics are introduced only very briefly, the reader may have questions about these topics or other research carried out at NIAES. Please feel free to contact our staff at the addresses provided. We welcome all criticisms and suggestions. I hope that this annual report will stimulate discussion and collaboration among scientists and institutes who are concerned about agro-environmental issues.
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CONTENTS |
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Organization |
Research Objectives |
Research Overviews and Topics |
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Global Agro-Environment Research Team |
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Division of Environmental Planning |
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Division of Information Analysis |
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Division of Agrometeology |
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Division of Soil Science |
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Division of Water Quality Science |
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Division of Vegetation Science |
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Division of Microbiology |
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Division of Entomology |
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Division of Pesticides |
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Division of Fertilizers |
Symposia and Workshops |
Projects |
Foreign Visitors and Participants of International Meetings |
Appendix |
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Research Papers |
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Research Staff |
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Budget, Staff Numbers, Library Holdings |
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Internet Home Page |
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Meteorological Information |
資料:Climate Variability and Its Impacts on
Paddy Rice Production in Japan and South Korea
- Background for Assessment of Agricultural Vulnerability
to Climate Change in East Asia -,
Hayashi, Y. (Ed.)
National Institute of Agro-Environmental Sciences 刊行
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温暖化といった、空間的にも時間的にも大きなスケールで起こるトレンドのなかに、地域固有の異常気象が潜在している。食料生産への影響を考える際に、相対的に大きな変動幅をもつ異常気象の理解を深めることは、これまでにも増して重要な研究課題である。この視点から東アジアに卓越する気候システムに注目し、その特徴と水稲栽培との関係を明らかにする目的で、1996年から1998年に韓国との共同研究を実施した成果のノートブックである。
第1章では東アジア固有の気候的背景、第2章では変動する気候条件での水稲生産についてまとめた。
○ 気候的背景
1 東北日本のヤマセ
2 韓国で発生するノプセ
3 日本と韓国における北東気流の観測
○ 変動する気候条件における水稲生産
付録 ヤマセに関する論文リスト
資料:商業化組換え作物の世界情勢 1999年
社団法人農林水産先端技術産業振興センター (2001)
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International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications (ISAAA) の標記報告書(No.17-2000)の全訳が、社団法人農林水産先端技術産業振興センターから発刊されたので、その概要を紹介する。なお、原文はインターネット( (対応するURLが見つかりません。2010年5月) ) に掲載されている。本報告書は世界における商業化組換え作物の普及状況の特徴をまとめたISAAAシリーズ報告書の4番目のものである。
第1章では、世界中の組換え作物の商業栽培状況に関する1996〜1999年のデータベースが紹介される。ここではグローバルな視点から、国、作物および形質別に1999年のデータが分析されている。世界の1999年の主要作物4種(ダイズ、ナタネ、ワタおよびトウモロコシ)の総作付け面積は、2億7300万haであるが、その15%に当たる3990万haが組換え作物であった。この栽培面積は1996年の組換え作物栽培面積の実に23倍に相当する。1996〜1999年の間に商業用に組換え作物を栽培した国は、先進国8ヶ国、開発途上国4ヶ国、合計12ヶ国である。1999年の国別の組換え作物栽培面積は、米国が2,870万ha、アルゼンチンが670万ha、カナダが400万haおよび中国が30万haであった。作物別栽培面積は、ダイスが710万ha、トウモロコシが280万ha、ワタが120万haおよびナタネが100万haであった。1999年における組換え作物の全栽培面積に対する作物別割合をみると、除草剤ダイズが54%、害虫抵抗性トウモロコシが19%、除草剤耐性ナタネが9%、Bt除草剤耐性トウモロコシが5%、除草剤耐性ワタが4%、除草剤耐性トウモロコシが4%およびBt除草剤耐性ワタが2%であった。
第2〜4章では、世界の組換え作物種子の市場規模およびゲノミックス関連産業を含めたバイオテクノロジー産業の現状と将来展望が述べられている。組換え作物種子の世界市場価格は、100万ドル(1995年)から、推定27〜30億ドル(1999年)に急速に成長している。しかし2000年以降は、このような組換え作物の作付け面積の急速な拡大は見込めず、安定水準期に入ると予想している。しかし、その中でもアルゼンチンでは若干拡大が、中国ではBtワタの作付け面積の拡大が見込まれる。また、南アフリカと東欧でも栽培面積の拡大と多様化の動きが続くであろう。ところが、2000年以降の組換え作物の作付け面積を左右する問題に、市場の需要に連動する社会の受容、規制および価格等がある。とくにEU諸国においては、組換え作物の商業栽培面積動向及び組換え食品の消費に、これらの問題と食品のラベル表示が大きな影響を与えるであろう。
組換え作物の開発方向は、これまでの除草剤耐性作物や害虫抵抗性作物のような「インプット」形質作物から、品質の向上・改善を目的とした「アウトプット」形質作物に移行するであろう。これによって、栄養食品や動物飼料が作られ、付加価値のついた商品市場の需要が満たされるであろう。また、穀物や油糧種子の市場外流通に弾みがつくであろう。とくに、従来よりも健康的で栄養豊富な組換え作物から作られる食品の登場は、社会の受容度に大きな影響を及ぼすかもしれない。
生体内での一切の遺伝子の構造と機能を決定するゲノム地図の作成、配列決定、分析操作等のゲノム研究(ゲノミックス)は、組換え作物の開発にとって重要である。このため、植物分野におけるゲノミックスは、今後も中心的な重要性を担い続けるであろう。しかし、1999年におけるバイオテクノロジー産業界の整理統合のスペースは、それ以前よりも遅くなっている。巨大多国籍企業は、将来の計画について見直しを行っている。また各企業は、事業再編、分離独立および合併を計画している。
第5章では、アジア主要開発途上国における組換え作物の果たす役割を、人口と食料確保および栄養不良の観点から考察している。とくに、中国について詳しく解説している。Chenによると、中国の主要作物(イネ、コムギ、トウモロコシ、ダイズおよびワタ)の総栽培面積は、9,880万haであるが、これから10年以内にこの総栽培面積の20〜50%は、組換え作物にとって代わると予測している。また、1999年のBtワタの栽培面積は245千haに達し、今後も急速な拡大が予測される。
第6章では、近々、商品化されようとしている「インプット」ならびに「アウトプット」形質組換え作物の種類と形質について解説している。
第7章では、世界におけるコムギ、イネおよびトウモロコシの品種改良の現状についての解説があり、従来の育種技術がこれまで世界の食糧確保に大きな貢献をしたことが述べられている。さらに、今後は遺伝子組換え技術を導入することによって、2025年の世界の穀物需要がまかなえるとしている。他方、組み換え作物の栽培規制に関するEU諸国の「予防原則」について言及している。
第8章では、将来の食料を確保するためには、バイオテクノロジーによる品種改良の技術が最も効率的であり、また環境に対しても安全で、かつ持続的な食料生産を行うためにも有効な手段であることを強調している。
目次
はじめに
1.1996〜1999年の商業化組換え作物の世界情勢と普及状況の概観
1.1 国別に見た組換え作物の普及状況
1.2 作物別に見た組換え作物の普及状況
1.3 形質別に見た組換え作物の普及状況
1.4 1999年の主要な組換え作物
1.5 1998〜1999年に生じた重要な変化のまとめと注目される点
2.1995〜1999年の世界の組換え作物種子の市場規模
3.作物バイオテクノロジー産業における発展
3.1 農業バイオテクノロジー産業における買収、提携、合併、分離独立および事業再編
3.2 ゲノミクス
4.商業用種子産業の概観
5.アジアの主要開発途上国における組換え作物の情勢
5.1 中国の作物バイオテクノロジー
5.2 インドにおけるBtワタ
5.3 ロックフェラー財団の国際イネバイオテクノロジープログラム
5.4 まとめ
6.バイオテクノロジーによる将来の形質
6.1 インプット形質
6.2 アウトプット形質
7.主要作物であるコムギ、イネ、トウモロコシの生産性向上のためのバイオテクノロジーを含む品種改良の過去と成果と将来の可能性
7.1 コムギの改良
7.2 イネの改良
7.3 コムギとイネに関するまとめ
7.4 トウモロコシの改良
7.5 2025年時点での世界の穀物需要−品種改良が直面する困難
8.組換え作物の将来展望