公募課題
2012年6月26日更新
人為的変異を利用したイネ実験系統群の作出 (略称:人為的変異、AMR)
概要
ガンマ線等の放射線照射やT-DNA挿入によってもたらされる人為的変異を有する多種多様なイネ実験系統群を作出する。次に、それら系統の形質評価、変異の原因遺伝子の同定法の開発や機能解析を行う。イネ人為的変異系統群の整備と評価の過程で、有用農業形質を持つ系統を選抜し、有望育種素材の開発につなげる。また、これら変異リソースを多様な研究開発に提供することで、有用遺伝子の機能解明や活用研究の加速化に貢献する。
研究目的
- 各種イネ人為的変異導入実験系統群の作出、後代種子や表現型情報を収集する。
- 人為的変異リソース群のデータベースの構築と公開を実施する。
- 人為的変異リソースを用いて、有用イネ遺伝子の同定や機能解明、その分子育種への利用などに関する研究の加速化、効率化に寄与する。
達成目標
- 放射線照射イネ系統群を整備し、同系統群に生じた変異の特徴を明確にし、本リソースの活用法を提示する。
- イネ転写因子(TF)等のcDNA過剰発現イネ系統群の作出、表現型の評価等を行い、遺伝子の機能解明と有用遺伝子の活用に資する。
- イネTF cDNAキメラリプレッサー過剰発現イネ系統群の作出と特性評価を行い、遺伝子の機能解明、有用遺伝子の探索等に資する。
- 各種イネcDNA過剰発現系統群から、塩や乾燥等の環境ストレスに耐性の系統を選抜し、原因遺伝子の適切な組み合わせにより、高ストレス耐性系統を得る。
研究内容
- 遺伝子機能解析の加速化を助ける放射線照射変異リソースの整備と評価
・イオンビームやガンマ線を照射した機能欠失型変異イネ系統群において、放射線の照射条件と誘発される突然変異の種類、部位、頻度等の因果関係をつかむ。
・それらの情報の集積から、有用遺伝子(候補)の正・逆遺伝学的スクリーニングに適した手法(各種PCR、マイクロアレイ、TILLINGなど)の組み合わせを探索する。
- イネTFの包括的機能解明のためのトランスジェニックリソースの整備と評価
・1000種類以上のイネTF cDNAを個別に過剰発現するイネを作出し、各TFの機能獲得型変異系統群の整備と評価を行う。
・同時に、各TFの標的(下流)遺伝子群の発現を抑制する遺伝子サイレンシング系(CRES-T)のイネへの適用により、ドミナントネガティブ型リソースであるTFキメラリプレッサー過剰発現変異系統群を作出し、表現型を調査する。
・上記トランスジェニック系統群から、生育特性の優れたものや、バイオエタノール生産に適した系統などの選抜を行い、有用遺伝子の同定や育種素材の開発に結び付ける。
・この過程で各形質転換イネ系統の後代種子を採種し、配布体制を整えると共に、各系統の表現型などの特性情報を紹介するデータベースを構築して公開する。
- 包括的および戦略的イネFOX hunting系を駆使したストレス耐性関連遺伝子の探索手法の確立と活用
・従来の包括的イネFOX hunting系により作出されたFOXイネ系統や、既存のFOXアグロバクテリウムライブラリーをイネに導入して取得するFOXイネ再分化系統を、塩や低温等に対する耐性検定に供し、ストレス耐性候補系統を選抜する。
・別に、約100種類のストレス耐性関連遺伝子群を選び、各cDNA をイネで過剰発現させ、各形質転換イネ系統のストレス耐性を評価する(戦略的FOX hunting系)。
・上記の研究から、ストレス耐性関連遺伝子を効率的に絞り込む手法を開発し、ストレス耐性候補遺伝子のイネへの単独導入あるいは複数遺伝子の共導入により、高度なストレス耐性を獲得したイネ育種素材の開発につなげる。
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実施課題一覧(〜平成24年度)
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課題番号 | 実施課題名 | 課題責任者 所属機関 |
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AMR0001 | 転写因子cDNA等を過剰発現するトランスジェニックイネ系統の作出・評価及び利用 | 農業生物資源研究所 |
AMR0002 | FOX系統を利用したストレス耐性関連遺伝子の探索と利用 | 名古屋大学 |
AMR0003 | 放射線を利用した変異体の作出・評価及び利用 | 農業生物資源研究所 |
AMR0004 | イネ転写因子キメラリプレッサーを用いた変異体の作出・評価及び利用 | 産業技術総合研究所 |