公募課題
2012年6月26日更新
イネと微生物の遺伝子ネットワークの解明 (略称:微生物相互作用、PMI)
概要
イネは地上部、地下部で無数の微生物と相互作用しつつ生きており、それらの微生物のあるものはイネに病害を引き起こし、またイネと共生して栄養を補給したり抵抗性を与えたりします。本研究では病原菌としてイネいもち病菌を、共生菌として菌根菌、エンドファイトを取り上げ、それらとイネとの相互作用機構を解明することによってイネの病害抵抗性機構、共生菌の受容機構を解明し、病気に強いイネ、より低肥料で育つイネを作るための基礎的研究を行っています。
研究目的
全ゲノム構造が解読済みなどイネの研究材料としての優位性をフルに活用し、イネで単離、機能解明されているいもち病菌、菌根菌等の微生物相互作用に関わる遺伝子を足がかりとして、相互作用の分子機構を支配する遺伝子ネットワークをイネおよび相互作用微生物の双方から明らかにすることを目的としています。これらの研究により食料、環境、エネルギー問題の解決に貢献する作物の開発に必要な病害抵抗性、養分効率利用に貢献する研究の加速を計ります。
達成目標
イネと共生微生物、病原性微生物との相互作用に関わる遺伝子ネットワーク解明について、イネと菌根菌の共生の成立・維持過程に関わるイネ遺伝子の単離と機能の解明、イネに定着して生育促進や抵抗性付与等の有益な効果をもたらすエンドファイトの単離と相互作用の分子機構の解明、イネが本来もっているいもち病抵抗性機構の分子遺伝学的、細胞生物学的解明、イネいもち病菌がその抵抗性機構をかいくぐって感染を成立させる分子機構の解明とその知見を用いた新規抵抗性付与戦略の開発を目標としています。
研究内容
上記目標を達成するため、本研究は以下の内容に沿って推進しています。
- 菌根共生に関わる遺伝子ネットワーク:菌根共生に関わるイネ遺伝子を逆遺伝学等の手法により網羅的に同定し、それらの菌根共生における機能を明らかにする。また、マメ科植物において根粒共生を制御する遺伝子のイネにおける機能を評価する。
- エンドファイト共生に関わる遺伝子ネットワーク:種々の栽培条件下でイネの根に定着する新規エンドファイトを同定するとともにその定着に関わる遺伝子群を明らかにする。また、イネに有用形質を付与する既同定のエンドファイトについてその定着・増殖に関わる遺伝子をイネとエンドファイト両方で同定し、エンドファイトの働きによる養分効率利用に関わるイネ遺伝子ネットワークの全体像を、エンドファイトの知見を加味しつつ解明する。
- イネの非特異的・全身的抵抗性に関わる遺伝子ネットワーク;いもち病菌系に対する特異性が低い圃場抵抗性、誘導抵抗性に関わる遺伝子の作用機構の解明を通じて非特異的ないもち病抵抗性に関わる遺伝子ネットワークを解明する。これらの知見は、4. にも応用可能と考えられる。
- イネの特異的・局所的抵抗性に関わる遺伝子ネットワーク;いもち病菌系特異的に作用する真性抵抗性遺伝子の作用発現に関わる耐病性関連遺伝子群の同定と機能解析、シグナル伝達因子を足がかりとした耐病性に関わるタンパク質複合体の生化学、細胞学的解析により真性抵抗性遺伝子から抵抗性発動に至る経路の全体像を解明する。これらの知見は、3. にも応用可能と期待される。
- イネといもち病菌の初期相互作用に関わる遺伝子ネットワーク;いもち病菌がイネの抵抗性発動を回避・抑制する分子機構を、感染初期過程におけるいもち病菌細胞成分の生化学的、遺伝学的解析、ならびにさまざまないもち病菌系の比較ゲノム学的解析により解明する。これらのいもち病菌の感染戦略に応答するイネの遺伝子ネットワークをいもち病菌の情報を加味しつつ明らかにする。
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実施課題一覧(〜平成24年度)
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課題番号 | 実施課題名 | 課題責任者 所属機関 |
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PMI0001 | イネ・菌根菌共生系の感染応答過程を制御する遺伝子ネットワークの解明 | 農業生物資源研究所 |
PMI0002 | エンドファイト−イネの共生相互作用の解明 | 東北大学 |
PMI0003 | イネにおける菌根共生品種間差とその分子的基盤 | 名古屋大学 |
PMI0004 | イネ−細菌エンドファイト相互作用に働くイネ遺伝子の同定と機能解明 | 東京農業大学 |
PMI0005 | 病害抵抗性関連遺伝子の単離と遺伝子間ネットワークの解明 | 農業生物資源研究所 |
PMI0006 | いもち病菌感染初期の菌糸伸長を抑制するイネ圃場抵抗性遺伝子の単離と機能解明 | 三重大学 |
PMI0007 | 耐病性シグナル伝達に関わるタンパク質複合体の機能解明 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
PMI0008 | イネの誘導抵抗性におけるシグナル・ネットワーク解明 | 農業生物資源研究所 |
PMI0009 | 感染初期におけるイネといもち病菌相互作用の解明 | 農業生物資源研究所 |
PMI0010 | いもち病菌エフェクタータンパク質によるイネ耐病性発現調節機構の解明 | (公財)岩手生物工学研究センター |