国立研究開発法人農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター
遺伝子組換え研究推進室 | ![]() |

サイエンスキャスティング2015が開催 中高生の研究体験を受け入れました
2015年8月7日(金)・8日(土)の2日間、つくば国際会議場と株式会社JTBが主催する「サイエンスキャスティング2015」が開催されました。つくばの研究者を訪問し、講義や実験を通して研究内容を調査するというサイエンスキャスティング。農業生物資源研究所では 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニットと 昆虫機能研究開発ユニットで中高生を受け入れました。
遺伝子組換えカイコ研究開発ユニットでは「遺伝子組換え技術で光るカイコを徹底調査する」という調査テーマで、高校1年生2人と中学1年生1人が調査隊となり参加しました。瀬筒秀樹ユニット長の講義では、今いる建物が世界一の研究施設だということや、世界で初めてカイコの遺伝子組換えに成功した研究室だという説明がありました。TVなどでもたくさん取り上げられているカイコの最先端の研究紹介に興味深く耳を傾けていました。
実習ではまず、ノーベル賞受賞対象にもなったGFPタンパク質の抽出です。光るタンパク質に対し、調査隊員たちは何枚も写真を撮っていました。つづいて遺伝子組換えカイコの解剖です。遺伝子組換えにより、絹糸腺と呼ばれる、糸を作る組織で蛍光タンパク質が蓄積しています。調査隊員は積極的に解剖を進め、研究室のスタッフからも「上手だ」と褒められていました。観察が難しいアラタ体の観察に挑戦するなど、時間を忘れて解剖・観察に没頭していました。実習の最後は、遺伝子(DNA)を卵に導入するためのインジェクションという操作に挑戦しました。顕微鏡を見ながらとても細い針で卵に穴を開け、続いてDNA(今回は水)を注入するという作業です。繊細な指使いが必要であったため、少し難しかったようです。
実習の後は、遺伝子組換えカイコから得られた蛍光タンパク質を含む絹糸で織られた光るドレスや、江戸時代の繭などの貴重な資料がある展示室に移動し、熱心に見学していました。
昆虫機能研究開発ユニットでは「ネムリユスリカの驚異的な乾燥耐性から学ぶ」という調査テーマで、中学3年生1人と中学1年生2人が調査隊となり参加しました。奥田上級研究員の講義では、ネムリユスリカの生態や、乾燥に強いメカニズムなどを学びました。さらに、乾燥耐性を持つことを利用した宇宙実験やアフリカにおける保護活動についても説明を受けました。調査隊員は全員、漫画や新聞などでネムリユスリカのことは知っていましたが、水戻しされていくユスリカを実際に見ると非常に驚いていました。講義中には積極的に質問する姿が見られ、ネムリユスリカ以外の話でも盛り上がりました。
実習ではユスリカの唾腺染色体の観察に挑戦しました。ネムリユスリカは体長約1cmと小さいため、今回の実習では体長約2cmのアカムシユスリカを使って実験を行いました。まずピペットマンや実体顕微鏡は初めて使う機器だったので、初めに使い方を学びました。その後、アカムシユスリカの唾腺を取り出す作業に入りました。ユスリカの小さな頭をピンセットでつかみ、引っ張り、唾線を取り出すという作業が実習の中で最も大変で、何匹も挑戦していました。最後には全員唾線を取り出すことができたので、取り出した唾線を酢酸オルセインで染め、顕微鏡で観察しました。全ての隊員の試料で3本の染色体とそれぞれの染色体の縞模様がはっきりと観察され、染色体の画像を撮影して調査は終了となりました。
カイコならびにユスリカの調査を行った約4時間はあっという間に過ぎてしまいました。調査隊に感想を伺ったところ、みなさん口を揃えて「楽しかった」という回答で、充実した時間を過ごしてもらえたようです。夏休みの貴重な体験を、学校の友達や先生、ご家族に伝えてもらえればと思います。
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初めてとは思えないほどの手さばき。 | 卵を並べるという細かい作業。 | |
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インジェクションはちょっと難しかった? | 光るドレスに感激の声。 |
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熱心に聞き入る調査隊。 |