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昆虫の脱皮に新たなメカニズムを発見- 脱皮ホルモンの抑制に神経系が関与 -【要旨】 東京大学大学院 新領域創成科学研究科及び(独)農業生物資源研究所を中心とした研究グループは、世界で初めて、昆虫が神経系を介してステロイドホルモンの一種である脱皮ホルモン生合成を制御する機構を有することを分子レベルで解明しました。 昆虫の脱皮は昆虫の体内で脱皮ホルモンというステロイドホルモンが合成されると開始しますが、従来、昆虫では脳から血液中に分泌される別のペプチドホルモンによってのみ、その合成が促進または抑制されていると考えられていました。 しかし、本研究では、中枢神経系から神経を介してFMRFamideペプチドという低分子のペプチドが直接前胸腺に運ばれ、これが脱皮ホルモン合成を抑制する機構も存在することを明らかにしました。これは昆虫において神経支配によるステロイドホルモン合成制御機構を分子レベルで解明した初の例です。 ヒトなどの脊椎動物でも神経と血液中にそれぞれ分泌されるペプチドホルモンによってステロイドホルモン合成が制御されていますが、両者がどのように協調して内分泌器官のはたらきを制御しているかについてはあまり解明されていませんでした。 一方、昆虫は脊椎動物に比較して細胞数が少ない単純な系であるため、神経と血液中にそれぞれ分泌されるペプチドホルモンによる内分泌器官の活性制御機構を解明する上で、良いモデル実験系となると予想されます。そのため、今回の発見は、ヒトのステロイドホルモン合成御機構に関する研究にも新たな展開を生むと期待されます。 なお、この成果は、6月6日発行の米科学アカデミー紀要23号に掲載され、巻頭で研究の概要が紹介されるとともに、23号の表紙を飾りました。さらに、同24号には、昆虫研究の第一人者であるアメリカ・ワシントン大学 Jim Truman 教授によって、この成果に関する解説記事が掲載されました。
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