(参考)

【この研究を理解するための知識】

玄米の色は、RcとRdの2つの遺伝子で制御されています。どちらもメンデルの法則で遺伝します。大文字のRc, Rdは遺伝子が優性であること、小文字のrc, rdは劣性であることを示します。

ある個体がRcRdの遺伝子の組み合わせを持つ場合には、玄米は赤色、

Rcrdの遺伝子の組み合わせでは玄米は赤褐色、

rcRdあるいはrcrdの遺伝子の組み合わせでは玄米は白色(無着色)になります。

【研究の背景】

   最近、古代米と呼ばれて人気が出ている着色米は、その名のとおり玄米が赤や黒などに着色しています。着色の色素の主な成分はカテキンやアントシアニンであり、抗酸化機能を有することから注目されています。これらの米は日本で稲が栽培されはじめたころから栽培されていた米ですが、白米がいつの時代から栽培されるようになったのかはわかっていません。いずれにしても長い栽培の歴史の中で、栽培は着色米中心から白米に置き換わりましたが、少なくとも明治時代の中頃までは日本の各地で着色米が栽培されていました。現在我々はお祝いの席やお祭りなどで赤飯として食べている米は、精白米に小豆を混ぜて炊飯し、赤色を着色したものですが、これは昔の赤米の食事を偲んでいるためだといわれています。

   赤米、赤褐米の研究は、約60年前から北海道大学で精力的に行われ、イネの第1染色体と第7染色体の2箇所に着色を支配する因子が存在することがわかっていました。しかし、技術的な困難さのためにその遺伝子の実態は全くわからないままでした。2004年に日本が中心となり完全解読したイネゲノム情報を利用することで、赤米、赤褐米の着色についての、長年の謎を短期間に一気に解き明かすことに成功しました。

図:赤米、赤褐米、白米