研究者から一言
ある日、このプロジェクトの共同研究者である内藤研究員が私にこう言いました。「僕ね、Vigna (属)のゲノムが読めてしまえば、ちょっと時代が変わると思ってるんです」 Vigna 属植物のゲノム配列が手に入れば、環境適応性のメカニズム解明や、ストレス耐性作物の開発が可能になり、世界の食糧問題を解決に導けるかもしれない、というわけです。当時の私には、それは壮大な夢物語のように思えましたが、内藤研究員の話を聞き、実際に植物を見せてもらう内に、Vigna 属の野生植物が、その夢を実現させる可能性を十分に秘めていると感じるようになりました。このプロジェクトは、アズキと野生種15種のゲノムを解読し、配列を比較してそれぞれの種の特徴を明らかにし、データベースとして情報を公開する、というものです。同属内で16種ものゲノムを解読したという例はおそらくバクテリア以外ではありません。プロジェクトでは大量のゲノム情報を解析する必要があるため、バイオインフォマティクスの技術が重要な役割を担います。長年バイオインフォマティクス研究に携わってきた私にとって、このプロジェクトは大きな夢の実現に貢献するチャンスでもあります。その第一歩として、「Vigna 属ゲノムデータベース」を世界に公開することを目標に、プロジェクトを進めていきたいと思っています。
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