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イネゲノム完全解読10周年
イネ
 挨拶
president_hirochika

農業生物資源研究所は、農林水産先端技術研究所の協力の下、イネゲノム解析研究に中核機関として取り組んできました。1991年から1997年までの第一期では基盤的研究を進め、1998年から2004年までの第二期では、イネゲノム全塩基配列解読を目標として取り組みました。1997年には、我が国の主導のもと、10ヶ国から構成される国際コンソーシアムが結成され、国際協力の下で解読が進められ、2004年12月に完全解読が終了しました。ゲノムの完全解読により、イネ研究の重要な基盤が確立され、現在に至るその後の10年間には、極めて重要な成果が得られており、我が国の研究者が大きく貢献をしています。農業生物資源研究所においても、出穂期、収量性、環境ストレス耐性、耐病性、耐虫性等に関与する農業上重要な多数の遺伝子の同定・機能解明が進展しました。これらの遺伝子の同定・機能解明とゲノム情報を活用した効率的な育種技術の開発により、品種開発の効率化や画期的な新品種の開発が可能になっています。既に、従来技術では困難であった、美味しく、いもち病に強いイネ品種を開発する等の成果を上げています。2004年に解読されたのは、品種「日本晴」のゲノムですが、その後の次世代シーケンサーの登場により、多様なイネ品種のゲノムの解読が可能となりました。しかし、精度の極めて高い日本晴のゲノム情報なくしては、多様な品種の正確なゲノム情報を得ることはできません。ここでも、2004年に達成された完全解読の成果が活用されています。現在、我が国のみならず世界中のイネ品種のゲノム解読が進められており、今後もこれらの品種が有する重要な遺伝子の同定・機能解明が進むものと期待されています。イネは、世界の人口の50%が主食として利用しており、我が国のみならず、世界においても最も重要な作物です。今後予想される、食糧問題の解決にも、イネゲノム情報を活用した品種開発が大きく貢献するものと期待されています。イネゲノム解読の成果は、他の作物のゲノム研究へも波及をしており、農業生物資源研究所でも、イネゲノム研究の成果を受けて、オオムギやコムギ、国産ダイズのゲノム解読を進めてきました。その成果は、これらの作物の品種開発に活用されつつあります。また、次世代シーケンサー、DNA多型解析技術やゲノム編集技術等の画期的な新技術の開発もあり、今後もゲノム情報を基盤として、大きな研究の展開が期待されています。

イネゲノム解読10周年を迎えるにあたり、これまでの10年の研究の進展をふりかえり、今後の研究の展開について考えるきっかけとしていただければ幸いです。

署名

イネ
国立研究開発法人 農業生物資源研究所
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