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イネゲノム完全解読10周年
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 イネゲノム解読経過

科学の進歩はめざましく、研究は常に新しい成果を求められます。遺伝学においても例外ではありません。二重らせん構造の発見以来、DNAのどの部分にどのような遺伝情報が存在しているのかを知ろうとする多くの研究が行われています。また、この研究を支える多くの技術が考案され、機器の開発が行われています。イネを対象にした、新たな視点からの遺伝学研究は、1990年代に入り主要な国々で開始されました。わが国でも農林水産省が1991年に「イネゲノム解析プロジェクト」を本格的に開始しました。このプロジェクトには、日本中の主要なイネ研究者が参加すると同時に、多くの人手と機器を必要とするイネゲノム全般にわたる基盤的解析を、農業生物資源研究所と農林水産先端技術産業振興センター先端技術研究所(略称STAFF研究所)が共同チームを形成して担当することが決まりました。このチームは「イネゲノム研究プログラム、Rice Genome Research Program(略称RGP)」と名付けられました。RGPは1991年から1997年に行われた第1期イネゲノム解析プロジェクトにおいて、3000個を超えるDNAマーカーを遺伝解析によりイネゲノム上に正確に位置づけた分子遺伝地図を作成し、酵母人工染色体(YAC)を用いてクローン化したイネゲノムDNA断片中から、これらのマーカーを含む断片を選び出して整列化し、イネゲノムの約60%の領域をDNAで再現することを行いました。また、イネにおいて遺伝子として実際に働いている約20000種類のゲノム領域の部分的な塩基配列も明らかにしました。

1998年からは、第1期の成果に基づいて、さらに深くイネの遺伝現象の本質を明らかにする目的で、「全塩基配列の完全解読」と、その成果を利用した「イネ遺伝子機能解明」が農林水産省の大型プロジェクトとして開始されました。後者は農業生物資源研究所を中心として日本中の大学や研究機関の主要な研究者が取り組む多くの課題で構成されました。RGPもいくつかの課題について目標達成にむけた協力を行っています。前者は国内ではRGPのみが担当しましたが、全12本の染色体の塩基配列解読は「国際イネゲノム塩基配列解読プロジェクト、International Rice Genome Sequencing Project(略称IRGSP)」に参加した10カ国の協力により行われました。RGPは12本のうちの6本、塩基数にして55%の解読を担当しました。2004年12月にIRGSPによるイネ品種「日本晴」ゲノムの完全解読は終了し、その成果の詳細は2005年8月11日号のNature誌に掲載されました。RGPはIRGSPの中心としての責務を十分に果たし、わが国のイネゲノム研究の国際的主導性の確立に大きく貢献しました。

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