農作業安全コラム

トラクターのシートベルトリマインダー

R6年9月 紺屋 秀之

 9月になりました。8月中は農業機械研究部門の所在地であるさいたま市では、日中は猛暑日が続き、夕方は激しい雷をともなうゲリラ豪雨となる日も複数回あり、快適に過ごしやすい日はほとんど無かったかと思われます。皆様のお住まいの地域ではいかがでしたでしょうか?

 さて、話は変わりますが、R5年4月の安全コラムにて「ヘルメットとシートベルト、着用していますか?」という記事を掲載させていただきました。今回は農用トラクター(乗用型)(以下、トラクター)のシートベルトに関して新たな情報を紹介させていただきます。
 農業機械乗車時のシートベルトの着用については、現状におきましても法的には義務でも努力義務でもありません。しかしながらシートベルトは追突や転倒・転落事故による死亡、重症化のリスクを軽減する機構であることから、農林水産省の農作業安全検討会において、特に死亡、重症化事故の多いトラクターには走行時にシートベルトの着用を促す「シートベルト非着用時の警報装置」(以下、シートベルトリマインダー)を装備することが望ましいということになりました。そこで、農機研が実施しています農業機械や農業施設を対象にして実機を確認しながら安全性が確保されているかどうかを検査する安全性検査において、R7年度からトラクターの検査基準の中に「シートベルトリマインダーを装備すること」という要件が追加されることになりました。具体的にシートベルトリマインダーとは、乗員がシートベルトを着用していない時に、その旨を警報等によって運転者等に知らせる装置です。既に、一般の乗用車等については運転席だけではなく助手席、後方座席への装備も義務化されています。皆様もシートベルトを装着し忘れて走行し「ピーピーピー」といった警報音が鳴ることはご存じかと思われます。
 なお、安全性検査におけるトラクターのシートベルトリマインダーの基準の概要(案)は以下のとおりです。

  1. 第1レベル警報として、イグニッションスイッチが入っているときに運転者のシートベルトが着用されていない場合は、ランプ等による赤色の点灯や点滅の表示を30秒以上にわたって行うこと。
  2. 第2レベル警報として、走行中に運転者のシートベルトが着用されていない場合は60秒以内に、ランプ等による赤色の点灯や点滅の表示と警報音の吹鳴を30秒以上にわたって行うこと。

 最後になりますが、当然これまでもトラクター乗車時にはシートベルトを自主的に着用されている方もいらっしゃると思います。しかしながら、そうでなかった方にとりましては、もしかしたら最初は警報音等が煩わしいと感じられるかもしれません。一般の乗用車等にシートベルトリマインダーが装着義務となった時にも同じように感じた方はいらっしゃったと思われますが、今ではシートベルトを着用することが普通となっており、何よりも安全面で大きな効果を発揮しています。トラクターにおきましても遠くない将来、多くの方がシートベルトを着用することが普通となる日が来ることを切に願うところです。

 

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