農作業安全コラム

新年を迎えて一言

H22年1月 中村 利男

 新年明けましておめでとうございます。
 今年は寅年で良きにつけ悪しきにつけ、ドラマチックな変化が起こる年ともいわれておりますが、様々な出来事に一喜一憂することなく、しっかり大局を見据えて着実に歩んでいきたいと考えます。

 農作業のいかなる事故、怪我も農業者の方々の生活、経営の大きなマイナスとなるだけでなく、日本の農業にとって大切な担い手の減少、ひいては農業生産の不安定化、食料自給率の低下にまで影響を与えることになると考えますので、日々の農作業を安全第一に、快適かつ効率よく行っていただくことが何より大切なことと思います。

 新年を迎え、農業機械の取扱・点検、農作業安全の基本動作の励行の重要性について、初心に返って再度お考えいただきたいと思います。

 農業機械の場合、とりわけ、乗用型トラクタ死亡事故では、その約70%を転落・転倒によるものが占めていることから、死亡事故を減らす鍵を握っているのは、転落・転倒時の死亡率を1/8に抑える安全キャブ・フレームの装着であると考えております。

 さらに、安全キャブ・フレームの効果を確保する上で、シートベルトを確実に利用していただけますようお願いします。作業の邪魔になる、面倒などの理由でせっかくのシートベルトが使用されず座席の肥やしになっている場合があるようですが、転倒・転落時に機械から投げ出されて下敷きにならないように皆様の命を守る砦の働きをするのがこのシートベルトなのです。

 また、歩行型トラクタの回転部への巻き込まれや農用運搬車の道路での転倒・転落への注意、刈払機の安全カバー、防護メガネの装着の徹底も特にお願いします。なお、刈払機については当生研センター(現:革新工学センター)とメーカーが共同で開発した低振動型のものが昨年7月から市販されておりますので、ご購入を検討いただければ幸いです(昨年9月の本コラムでも紹介させていただきました)。

 農業機械の操作については、熟練者の方々でも慣れからくる油断、焦りによるミスで思わぬ事故を招くことがありますので、基本動作の励行に十分気をつけていただくとともに、高齢者の方々もまだまだお元気で現役バリバリとお考えかもしれませんが、加齢とともに視力、とっさの判断力、平衡感覚等の心身機能が低下しがちであることから、心得て余裕を持った作業に努めていただきたいと思います。

 一方、女性の方々も最近は補助作業ではなく、主要な農作業を行う方も増えてきたようですので、一般に男性に比べて小柄で、体力も弱く機械操作にも不慣れな方が多いことを自覚して、無理なく安全に農作業を行っていただきたいと考えます。

 本年も関係機関・団体、農業者、メーカー等の方々との連携を密にして、一件でも農作業での事故が減らせるよう、試験、研究、調査に全力で取り組みたいと考えますので、よろしくお願いします。

 

キーワード:事故/安全装置・対策/乗用トラクター/歩行用トラクター/刈払機/点検・整備・清掃
サブキーワード:農業経営体/他業種/高齢者