事故の情報はみんなの財産(その2)
H25年6月 積 栄
先月のコラムの続きです。
現代の機械の安全設計では、「予見できる」誤使用は、基本的に「設計段階で対策すべき」とされています。では、メーカーはどうすれば事故や誤使用を予見できるでしょうか?それにはまず、自分達の製品や類似の製品で、実際にどのような事故が起きているかを知らなければなりません。しかし農業機械の事故で現地調査に行くと、被害にあわれたユーザーの方は、往々にして原因を「自分の不注意(=恥)」と感じており、そうなるとメーカーにはなかなか事故の情報が伝わりません。これではお互いに不幸なままです。
一方、農業機械の事故では、消費生活用製品や産業用機械のような事故情報を収集・公開する制度がなく、公的にも皆が使える事故情報が不十分なのが実情です。
事故の情報は皆で共有しないと、対策につながりません。先月書いたファクスの事故も、メーカーはユーザー(飼い主)の話を聞いたからこそ、原因(猫の尿)を特定でき、対策につなげられたのだと思います。
そこで、まずユーザーの方々には、事故やヒヤリ経験があったら、ぜひメーカーにそれを伝えていただきたいと思います。そしてメーカーの方々は、自らもその声を広く集め、安全設計に生かすと同時に、それでも技術的な理由等で残ってしまった危険は、これまで以上にしっかりとユーザーに伝え、誤使用を減らしてもらうことが大切です。
同時に行政や関係機関でも、事故情報の収集・分析を進め、誰もが共有できる体制づくりと、それを活かした誤使用防止のための重点的な情報発信が必要です。現在、生研センター(現:革新工学センター)でも協力先道県とともに取組みを進めているところです。
事故情報を共有し、皆で対策を考えれば(リスク・コミュニケーションといいます)、きっと現状は変わる―と思いながら、日々取り組んでいます。