農作業安全コラム

トラクタ試験方法の国際会議を我が国で開催

H30年2月 冨田 宗樹

 近年、規模拡大等に伴って、海外製のトラクタを目にすることも多くなっています。今後は経済発展が著しいアジア諸国で生産されたトラクタも参入するかもしれません。その際、ユーザーの皆様にとって気がかりな点の一つが、安全性でしょう。

 平成18年6月コラムで述べましたように、安全キャブ・フレームはトラクタの安全上決定的に重要です。もし、この強度の基準が国によって違っていたら、ユーザーの皆様は「〇〇製は安いけど安全性が心配」と思われることでしょう。ですから、どの国でも共通のルールが求められるところです。我々としては、そのルールが世界共通であるだけでなく、小さなほ場や中山間地も多い日本の農業の実情も踏まえたものであることが望まれます。

 そのような国際的なルールを制定する取り組みの1つがOECDトラクタコードです(平成23年10月コラム参照)。海外製トラクタの安全キャブ・フレームも、同コードに適合していれば、一般的に国内の基準と同等以上の強度があると見なされます。

 農業やトラクタの大きさ、試験機関のあり方等は国によって異なっていますから、ルールの制定には、各国の現場での検討が欠かせません。OECDトラクタコードでは、各国を巡回して、現場での検討を行う仕組みとしてエンジニア会議を隔年開催しており、昨年10月、その会議が20年ぶりに我が国で開催されました。

 この会議の意義は、我が国のトラクタや試験設備に加え、その背景にある我が国の農業を取り巻く事情についても、各国の理解を得ることにもあります。会議での様々な実演や討議を通じて、それが果たせたものと考えます。我が国の農業者の皆様にとっても、世界中のトラクタから選択する機会が広がることに繋がりますし、我が国のトラクタの活躍範囲が世界に広がることで、改善が進むことも期待できます。

 このような強度が優れた安全キャブ・フレームの普及拡大を図る国際的な取り組みは、安全な農業機械を求める世界中の農業者の声に支えられています。皆様も、公的な強度試験を受けた安全キャブ・フレームが装着されたトラクタを選択することで、このグローバルな取り組みに加わるとともに、重大事故から身を守っていただければと思います。

 

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