モモシンクイガ (= モモヒメシンクイ), Carposina sasakii Matsumura
チョウ目 (Lepidoptera)、 シンクイガ科 (Carposinidae)

形態・生態

加害部位 果実  
加害形態 幼虫
発生回数・時期 年1-3回(地域により異なる)
越冬形態 繭(土中、越冬後蛹化)
形態 成虫開張 12-20 mm、幼虫体長 12 mm、卵 径0.3mm
分布 九州以北

 幼虫   卵  幼果上に産卵された卵

    成虫

    成虫 フェロモントラップに誘引された雄成虫

モモシンクイガが重要害虫である理由
1) 成虫が6月から8月にかけてだらだらと発生するため,薬剤防除を頻繁にする必要がある.
2) 幼虫は果実中に潜り込むため,通常の薬剤散布では退治できない
3) 果実から脱出した休眠態の幼虫は球形の冬繭を形成し越冬、
     老熟幼虫・蛹は地中に潜るため,通常の薬剤散布では退治できない
冬繭:地表から6cmまでの地中で形成.
翌年5〜6月頃に休眠を終了した幼虫が冬繭から脱出し、
紡錘形の繭(夏繭)を形成し、その中で蛹化。
夏繭: 砂土や植壌土で0-2cmの深さ(96-98%は0-1cmに分布)
夏繭は地表面の小石,小枝,枯れ葉などに付着して作られる性質が強く,
冬繭はこれら物質から独立して作られる


被害

    被害果   果実内

 成熟期の果実被害   幼果の被害

防除

殺虫剤による防除は果実上の卵か,羽化した成虫が対象
・モモシンクイガは発生回数が年1〜2回と少なく,成虫の寿命は7日程度と短い
・成虫の羽化時期は3ヶ月もの長期にわたる
・成虫の羽化が認められる時期には定期的に殺虫剤の散布が必要
・幼虫・蛹は果実中や土中にいる→殺虫剤による防除ができない

防除剤
薬剤には弱いので,有機リン剤,カーバメート系剤、ネオニコチノイド系剤のいずれでも防除可能
ネオニコチノイド系剤はアブラムシキンモンホソガにも効果高 .
合成ピレスロイド系殺虫剤の中には1ヶ月くらい残効があるものもある
ただし,合ピレ剤は ハダニ類リンゴワタムシの異常増殖を引き起こすことがある

※ かつては袋掛けによる物理的な防除が行われてきたが、労力がかかることや、近年有力な
殺虫剤・交信攪乱剤が実用化されたことで無袋栽培が可能となった。