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食の広場

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第3話 『優子、お料理します!』

 『母の日』も近いっていうのにお小遣いをみんな使っちゃって、プレゼントを買うお金がなくなったの。それで「おかあさんの代わりに晩ご飯の支度を全部やる」なんて言ったんだけど、おねーちゃんにも手伝ってもらおう.....

優子「というわけで、昨日は私たちが夕ご飯を作ったのよ。」

勇太「どうせこの前の弁当とおんなじで、どうせお姉さんがやったんだろ。おまえと違ってお姉さん、とっても料理がうまいからな。」

優子「それは認めるけど、私もサラダとか作ったんだからね。」

勇太「もしかしたらカット野菜を洗っただけとか。」

優子「ちゃんとお皿も拭いて、盛り付けまでやりました!」

先生「やあ、君たち、今日も遊びに来ているのかい。」

ともよ「はい。ところでちょっと教えていただきたいことがあるのですが。」

先生「なんでしょう。」

陽一「この研究所に野菜の研究をしているところはありませんでしょうか。」

先生「野菜の何が知りたいんだい。」

優子「実は昨日、『どうして野菜がしおれちゃうのか』って話しをしてたんですけど・・・」

先生「ああ、野菜の貯蔵の話ですか。だったらうちの部屋でやってますから、よろしければ説明しますが。」

優子「お願いします。」

先生「えっと、野菜にしても果物にしても根から取り込んだ水分や葉っぱで合成した養分が植物全体に回っているんだけど、農家で収穫された後にはそういう栄養分がどこからもやってこなくなることはわかるよね。」

陽一「はい。」

先生「それでも肉や魚と違って、野菜は収穫後も生き続けているんだ。だからタマネギとかじゃがいもなんか油断していると芽が出たりするだろ。でも自分の体の中に蓄えた養分とか水分を使って生き続けているんだから、だんだん栄養素が減ってくるし、水分が減ってしおれてくるんだよ。」

ともよ「ええ、わかりますわ。」

先生「そこで何とかして収穫された後も味や香りがあまり変わらないようにするにはどうしたらいいか、いろいろと調べてみたんだ。君たちならどうやったらいいと思うかな?」

陽一「多分、冷蔵庫にでも入れて冷やしたらいいんじゃないですか。」

先生「冷やしすぎると逆に悪くなる野菜なんかもあるけど、たしかに大抵のものは低温の方が長持ちするよね。あと、空気の中には水蒸気とか酸素、二酸化炭素なんかが入っているのは知っていると思うけど、これらのガスの比をうまく調節してやることができれば、野菜の呼吸がコントロールできるから、長い間保存することができることがわかったんだ。」

優子「でも実際にはどうやっているんですか。」

先生「収穫地なんかでたくさんの量の野菜を保存しているところなら、炭酸ガスなんかを倉庫の中全体に吹き込んで調節するとことができるんだよ。これをCA貯蔵って呼んでいて、たとえばリンゴなんかは半年近く保存できるそうだよ。」

陽一「でもこんなものは普通のスーパーなんじゃあ使えませんよね。」

先生「たしかにそうだけど、これと同じ原理のものは実際にスーパーなんかでも使われているんだ。例えば君たちはカット野菜がこういう袋に入れて売っているのを見たことはないかい。」

優子「カット野菜なら昨日使いましたけど、それってただのビニール袋じゃあないんですか。」

先生「実はこの袋には小さい穴がたくさん開いていて、その大きさや数を変えるとガスの出入りをコントロールすることができるんだ。だから袋の中の水蒸気や二酸化炭素なんかの量をちょうどよい具合に保つことができるんだよ。」

ともよ「すごいですわ。」

先生「ただ、こういうものもコストの問題があるから全ての野菜に使われているわけでもないんだよ。だからせっかく新鮮な野菜を買ってきたなら、冷蔵庫に入れっぱなしにしないで、できるだけ早く食べるようにした方がいいと思うよ。」

優子「わかりました。」

---博士からのコメント---

 野菜や果物など植物は収穫後も呼吸や水分の蒸散を続けています。そこで周囲の酸素濃度・二酸化炭素濃度および水蒸気量をコントロールすることで品質の低下をある程度まで防ぐことができます。種々のガス通過性をもつフィルムが市販されているために最適なフィルム、温度を設定すれば、それぞれの野菜に一番よい条件を作ることができ、より長い期間の保存が可能となります。
 植物は生育促進や老化防止のための物質を作ることで自らの成長をコントロールしていると考えられ、その働きをうまく利用することができれば、収穫後の品質をよりよく保つことができるかもしれません。

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