飼料作物病害図鑑

オーチャードグラス 黄さび病 リスク評価スコア2.7 (2,3,3)

病徴 夏胞子(菅原ら 2006a)

病徴:2004〜2005年にかけて北海道、岩手県、宮城県、福島県、栃木県で発生した(菅原ら 2005a, 2006b)。1967年に熊本県で発生したともされるが、不確実である(農林水産研究文献解題〜オーチャードグラスの病害)。病徴は黄〜橙黄色の夏胞子堆を葉脈に沿って縞状に生じる。激発すれば病斑は拡大し、感染葉は枯死する。

病原菌:Puccinia striiformoides M. Abbasi, Hedjar. & M. Scholler [= P. striiformis var. dactylidis Manners]、担子菌
春から秋にかけて夏胞子堆を形成し、内部に多数の夏胞子を形成する。冬胞子の形成はきわめてまれで、病原菌の中間宿主は不明である。マーカーを利用して各地域で採集した菌株の個体変異を調査した結果、バンドパターンに多様性があり、ある程度の遺伝的多様性が保持されていると推定された(菅原ら 2007a)。


防除法:オーチャードグラス品種・系統間で明瞭な抵抗性差異が認められ、選抜中の幾つかの系統では0%に抑えられていた(菅原ら 2005b, 2006a)。また、北海道、岩手および栃木県の3地域で抵抗性品種「Lidacta」を栽培したところ、いずれの地域でも強い抵抗性を示し、この抵抗性を侵すレースはこれらの地域では存在していないと推定された。防除法としては、抵抗性品種を用いることが第一であるが、黒さび病などで推奨されている窒素肥料過多を避ける、刈り遅れないなどの方法も有効と思われる。

総論:菅原(2007b), 月星(2009)


畜産研究部門(那須研究拠点)所蔵標本 なし

(菅原幸哉・月星隆雄,畜産研究部門,畜産飼料作研究領域,2021)


本図鑑の著作権は農研機構に帰属します。

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