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水稲湛水作溝同時直播栽培における低コスト作溝装置
[要約]
高精度湛水直播機のフロート後方部に装着する1ピース・シームレスのステンレス製作溝装置は、従来装置と同等以上の作溝性能を示す上、より軽量・低コストで作成でき、装着も容易である。
[キーワード]
作溝同時直播、湛水直播、高精度湛水直播機、新型作溝装置、低コスト
[担当]
岩手県農業研究センター・プロジェクト推進室
[代表連絡先]
電話0197-68-4412
[区分]
東北農業・農業生産基盤(作業技術)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
水稲湛水直播栽培において、播種と同時に作溝を行うポリプロピレン(以下PP)製の作溝装置を平成20年に開発し特許を取得した。この装置は、装着作業がやや煩雑であることや、コスト高になること、圃場がやや硬めの時に作業機に対する田面抵抗が大きくなり播種精度に影響が出ること、などの問題が残されていた。そこで、作溝部品のデザインを根本的に見直し、軽量・低コストで装着が容易な新たな作溝装置を開発し、効果を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 本作溝装置は、高精度湛水直播機(緊プロ機ベース)に装着できる1ピース・シームレスのステンレス製作溝装置である。1ピース当たりの重量は約450gであり、従来のPP製作溝装置の約2000gと比べて軽量である。製作費(試作費実費)は、材料費込みで、1セット4部品(8条用)で約2万円であり、従来のPP製作溝装置(8条用販売価格約24万円)と比べて低コストである(図1)。
- ロート後方下部(従来装置の後方作溝体と同位置)に装着可能であり、側条施肥機能付きの作業機にも、そのまま装着できる(図1)。種子誘導装置は、播種深が深くなりすぎないようにするため、浅型(0.4cm)のタイプを用いる。また、圃場が硬めの場合、純正で装備されている種子覆土板(自動制御)が接地せず、種子が露出することがあるため、改良覆土板(加工品)に付け替えることにより覆土の精度を高めることができる(図1、図3)。
- 従来装置と比較すると、新装置が作溝する溝の形状は、幅が狭く深いが同程度の断面積であり、苗立ち・収量も同程度である。また、種子覆土板等を取り外し、無覆土表面播き仕様にすることにより鉄コーティング湛水直播栽培(条播のみ)にも適応できる(図2、表1)。
[成果の活用面・留意点]
- ステンレス製の作溝装置は、図面の持ち込みで鉄工所等に製作委託が可能であるが、材料費の変動等により製作費用は上下する可能性がある。なお、図面の詳細や加工業者リスト等は岩手農研のHP(http://www.pref.iwate.jp/~hp2088/)に別途提示する。
- 高精度直播機のフロートに、(独)農研機構生研センター緊プロ機ベースの共通品を採用していれば、メーカーを問わず装着が可能である。
- 播種時の圃場硬度はゴルフボール貫入深で平均-0.5〜1.0cmかつ±1cmの範囲に収めることが望ましい。
- 代かき深が12cmより浅くなる場合、作溝装置のサイズを修正し、別途作製することにより、対応できる。
- 従来作溝装置については、(独)農研機構東北農研センターの東北農業研究成果情報URL
(http://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H20/suitou/H20suitou016.html)を参照する。
[具体的データ]




(岩手県農業研究センター)
[その他]
- 研究課題名
- 北東北地域向け非主食用多用途稲の直播品種及び直播栽培等関連技術の開発
- 予算区分
- 実用技術
- 研究期間
- 2010〜2012
- 研究担当者
- 高橋昭喜、寺田道一、臼井智彦、扇良明、伊藤勝浩、日影勝幸