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食品ナノテクノロジープロジェクト

(更新:2010年08月25日)

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I-(3)-3 経口摂取されたナノスケール食品素材の免疫学的応答性の解析

(担当:渡辺純)


目的

経口的に摂取されたナノスケール食品素材の安全性をアレルゲン性という観点から評価することを中心に、消化管免疫系への影響を広く解析するとともに、ナノ食品素材の消化管内動態を明らかにすることを目的とする。

図 研究概要

研究内容

  • ナノ素材評価のための各種動物モデルの構築

    ナノ食品素材の抗原性評価のためのマウス経口感作モデル、アレルゲン性評価のためのアレルギー性下痢症モデル、機能性評価のためのアトピー性皮膚炎モデル、臭素酸カリウム誘導腎障害モデルを導入し、種々の評価を可能とした(図1)。

    図 ナノ素材評価のための各種動物モデルの構築
    図1 ナノ素材評価のための各種動物モデルの構築

  • ナノ素材の消化管内動態解析

    サイズのそろった蛍光二重標識ベシクルを調製し、図2に示すCaco-2細胞単層膜を用いた評価系で吸収性を調べた。その結果、50nm以下のサイズのベシクルは経口摂取した場合、消化管よりそのまま吸収される可能性があることが示された(図3)。(課題I-(2)-1と共同で実施した)

    図 Caco-2細胞単層膜を用いた吸収評価系
    図2 Caco-2細胞単層膜を用いた吸収評価系

    図 各種サイズのベシクルのCaco-2細胞単層膜透過性
    図3 各種サイズのベシクルのCaco-2細胞単層膜透過性

    フラボノイド抗酸化性や抗アレルギー性などの機能を有するが、比較的疎水的な物質が多く、水系への溶解や安定な分散化が容易でないため産業分野での利用が限られている。そこで、食品中の機能性成分をナノサイズのベシクルに担持させると、水系への分散性安定性が向上するか、さらには吸収性が向上するか調べた。
    カンキツ類に含まれるフラボノイドであるヘスペレチンを高濃度に含む安定なベシクル懸濁液が作製可能であった(図4)。さらに、ヘスペレチンを適切な条件でベシクルと共存させるとCaco-2細胞単層膜(図2)の透過性が向上することがわかった(図5)。(課題I-(2)-1と共同で実施した)

    図 各種サイズのヘスペレチン担持ベシクル
    図4 各種サイズのヘスペレチン担持ベシクル

    図 ベシクル担持ヘスペレチンのCaco-2細胞単層膜透過性
    図5 ベシクル担持ヘスペレチンのCaco-2細胞単層膜透過性

参考文献