【豆知識】

コラム

ニンニクを食べるノシメマダラメイガ

2017.06.27 宮ノ下明大

貯蔵ニンニクの大害虫

メキシコでは収穫されたニンニクの80%はすぐに販売され、残りの20%は次の収穫のために4~6ヶ月間貯蔵されます。ノシメマダラメイガによる被害損失は、貯蔵ニンニク総量の30%以上に達するそうです。しかし、ニンニクにおける本種の発育に関する情報は不十分でした。今回のコラムでは、貯蔵ニンニクでノシメマダラメイガの発育を調べた論文(Mendoza, J. P. and M. A. Pena, 2004)を紹介します。

貯蔵ニンニクの大害虫

貯蔵ニンニクでの発育日数

ニンニク鱗茎(球根)は、複数の小さな鱗茎の集まりで構成されています。発育試験は、この小鱗茎にノシメマダラメイガ孵化幼虫1匹を付けて、その発育を調べました。温度条件は、8月から12月の室温(最高27℃-最低11℃)で行われました。その結果、孵化幼虫から羽化までの平均発育日数は、46.0±0.8日でした。論文の著者は、ホールの小麦、落花生、乾燥タマネギと比較しても大きな差はなく、ノシメマダラメイガにとってニンニクは良好な餌と記しています。

卵期間、発育日数、産卵数

卵期間と産卵数

ニンニクで発育した成虫が産んだ卵の孵化までの期間は、4.7±0.8日、成虫の産卵数は212±34個でした。これらの結果も過去のアーモンドや小麦と大きな差はありませんでした。

ニンニクの防虫効果について

ニンニクの鱗茎(球根)を米びつに入れておくと、防虫効果があると聞いたことがあります。しかし、今回の論文の結果をみると、ノシメマダラメイガには、その効果は期待できそうにありません。一方、コクゾウムシコクヌストモドキに対しては、その揮発性成分に弱い忌避効果が報告されています(Rahman, G. K. M. M. and N. Motoyama, 2000)。ニンニクの防虫効果の程度は、対象とする昆虫の種類で異なると考えられます。

興味のあること

今回紹介したのは、生ニンニクに近いと言えるでしょう。論文の中で、ニンニクの水分含有率は65%とあり、組織が柔らかく幼虫は穿孔しやすいと書かれていました。先日、買い物をしていると、肉料理、ガーリックライス、パスタに使用するスライスニンニクに目が留まりました。生に比べて、薄く乾燥して堅い状態と思われます。幼虫は何日で発育できるだろうかと興味がわきました。それと、ヒトで言われる疲労回復効果のようなものが昆虫にも当てはまるのか?たぶん、ないと思いますけど。

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参考文献

  • Mendoza, J. P. and M. A. Pena (2004) Development, reproduction, and control of the Indian meal moth, Plodia interpunctella (Hubner) (Lepidoptera: Pyralidae), in stored seed garlic in Mexico. J. Stored Prod. Res., 40: 409-421.
  • Rahman, G. K. M. M. and N. Motoyama (2000) Repellent effect of garlic against stored product pests. J. Pesticide Sci., 25: 247-252.
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関連情報

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更新日:2019年02月19日