農業環境技術研究所は、中期目標期間 (平成18−22年度) における研究・技術開発を効率的に推進するため、15のリサーチプロジェクト(RP)を設けています (詳細は、情報:農業と環境 No.77 の 農業環境技術研究所リサーチプロジェクト(RP)の紹介(1) を参照してください)。
ここでは、農業空間情報リサーチプロジェクトについて、リサーチプロジェクト(RP)のリーダーが紹介します。
温暖化や干ばつをはじめ世界の作物生産をおびやかす要因は、近年、ますます増大する傾向にあります。農耕地やその周辺の空間(農業生態系)は、作物を生産する場としてだけでなく、土や水を豊かに保全し、さまざまな動物や植物をはぐくむ場として、大切な役割をもっていますが、その一方で、農業生態系や農業生産活動が水や大気に好ましくない影響を与えることもあります。
このようなさまざまな問題に対処するには、その実態を正確に把握し、因果関係を明らかにし、適切な対策技術や政策を考え出していく必要があります。そのためには、空間的な広がりのなかで多様に変化し、また、たえず変動している作物の生育やその環境や農業生態系を空間的にとらえることが必要不可欠になっています。
波長別の光や電波をさまざまなセンサを使って、地上〜宇宙空間から、生態系を測定しています。
そこで、「農業空間情報」リサーチプロジェクトでは、農業生態系やそれを構成している土・水・植物などを、広域的に正確にとらえるための先進的なリモートセンシング手法*の研究や地理情報システムGIS*を用いた空間の評価法に関する以下のような研究に取り組んでいます。
* リモートセンシングとは、光や電波を感じるさまざまなセンサを使って数m〜数100km離れたところから測定対象の量や成分や機能をはかる方法です。またGISとは、コンピュータ上であらゆるデータや情報を空間的に整理・集積し、分析・表示する方法です。
(1) 時系列観測データ、マイクロ波・超多波長観測データなどから土地利用・作付状況・植被特性などの変動を抽出し、定量化する手法を開発しています。また、 (2) それらを活用した農業的土地利用図や作付状況など広域的な農業情報マップを作成しています。
(3) 野生生物の行動域の変動や新旧の各種地図情報、衛星画像情報などから、土地利用の変化を明らかにします。そして、空間構造から生物の生息域を評価するための指標を開発します。