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農業と環境 No.124 (2010年8月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

本の紹介 292: 凍った地球−スノーボールアースと生命進化の物語、 田近英一 著、 新潮社(2009年1月) ISBN978-4-10-603625-5

地球は過去、氷河時代と呼ばれる巨大な氷の塊が大陸上に存在する寒冷な時代を何回も経験してきた。その中でも、原生代(2億5千万年前〜5億4千2百万年前)の前期と後期に、地球の表面が全て凍り付くという(全球凍結)、極端に寒い時代があったと考えられている。スノーボールアース仮説と呼ばれるこの考えが提案されたのは1998年と新しい。本書は、スノーボールアース仮説をめぐる経緯、全球凍結が起こり、また、全球凍結から抜け出すメカニズム、全球凍結と生物進化、等について、わかりやすく解説している。

全球凍結では液体の水は存在できず、海洋も表層 1,000 メートルが凍結するような、生物にとってはとてつもなく過酷な条件である。異常な環境条件下でも長期間残存できる細菌(原核生物)はともかく、原生代後期には真核藻類が誕生していた。これらの真核生物はどのようにしてこの長くて厳しい氷河時代を生きのびたのか。

原生代前期のスノーボールアース・イベントに関しては、当時、温室効果はメタンが担っていた。それが、あるときシアノバクテリアが出現し、光合成により酸素が発生、大気中に酸素が供給されるようになると大気中のメタンは速やかに分解されてしまい、その結果全球凍結に至ったとの説がある。原生代後期の全球凍結においても、それまで海底のメタンハイドレードが持続的に分解してメタンを大気に放出していたが、メタンハイドレードが枯渇したためメタンの放出が終わり、温室効果ガスがなくなって地球は全球凍結した、という説である。ここでの主役は、メタン生成菌とシアノバクテリアである。酸素の出現はそれだけでなく、真核生物の誕生を促したと考えられる。

生物は過去において何回も大絶滅を繰り返してきた(本の紹介286:大絶滅)。全球凍結は化石としての証拠はほとんど残っていないが、生物多様性は激減し、それと大気中の酸素濃度の増加が重なり、真核生物や多細胞生物の出現という大きな進化をもたらした。としたら、全球凍結は、結果的に生物の進化にとって決定的な役割を果たしたことになる。

生物と地球の歴史を考えることはある意味ロマンであるが、 「地球と生命の関係は、私たちが想像しているような優しい関係ではない」 というのは、その通りであろう。

目次

第1章 寒暖を繰り返す地球

第2章 地球の気候はこう決まる

第3章 仮説

第4章 論争

第5章 22億年前にも凍結した

第6章 地球環境と生物

第7章 地球以外に生命はいるのか?

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