9月4日午後、ベルサール飯田橋 (東京) において、第33回農業環境シンポジウム 「農業からみた生物多様性、生物多様性からみた農業」 が開催されました。
本年10月に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議 (COP10) に向けた検討のなかで、適切な農業生産を通じた生物多様性の保全と持続的な利用の両立に対する関心が高まっています。
このシンポジウムでは、最近の研究成果や農業施策の動向を踏まえながら、農業と生物多様性が相互に及ぼすさまざまな影響について、科学的立場から一般の方々にもわかりやすく解説し、意見交換を行いました。
開催日時: 2010年9月4日(土曜日) 13:15 − 17:30
開催場所: ベルサール飯田橋(東京)
主催: (独)農業環境技術研究所
後援: 農林水産省
参加者数: 236名
(内訳: 試験研究機関 86名(うち農環研37名)、企業・民間団体等 50名、大学 41名、一般市民・NPO等 33名、行政機関(国・県等) 20名、マスコミ関係者 6名)
写真 あん・まくどなるど氏
開催のあいさつと主催者からの本シンポジウムの趣旨説明の後、あん・まくどなるど氏(国連大学高等研究所)による基調講演が行われました。まくどなるど氏はご自身の長年にわたる農村での体験を通して、生物多様性に配慮した農業を実現するためには、単に生物を守るという視点だけではなく、人と人のつながりや長期的な見通しに基づいた取り組みなど、農業生産を含めた全体的なシステム構築の必要性について述べられました。
写真 会場からの質問のようす
その後、農業環境技術研究所の3名の研究者が講演を行いました。山本上席研究員は、水田、あぜ、ため池、里山等からなる複合生態系と生物多様性保全の関係について、田中上席研究員は、農業生産における生物多様性の機能の活用について、藤井上席研究員は、農業における新たな生物資源の利用とリスク管理について、それぞれこれまでの研究成果を具体例をまじえて紹介しました。
農林水産省環境バイオマス課の木内岳志氏からは、生物多様性をより重視した農林水産施策の取り組みの現状と推進方向についてご説明いただき、最後に法政大学の西尾健教授からは、イギリスの先進的な農業環境政策の紹介と日本における今後の農業環境施策に向けた提言をいただきました。
総合討論では、会場からさまざまな意見や要望が出され、生物多様性に対する関心の高さを感じるとともに、今後の研究の展開に向けた多くの示唆をいただきました。アンケートでいただいたご意見とともに、研究所の今後の活動や研究に生かしていきたいと考えています。
写真 講演者のみなさん(総合討論)
以下では、各講演等で使用したプレゼンテーション画像(あるいは講演要旨)をPDFファイルでご覧いただけます。
趣旨説明 [PDFファイル 2.2MB]
安田耕司 (農業環境技術研究所)
基調講演:田園有情 [PDFファイル]
あん・まくどなるど
(国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット)
農業活動による生態系とランドスケープの管理 [PDFファイル 2.4MB]
山本勝利 (農業環境技術研究所)
農業における生物多様性の機能の活用 [PDFファイル 1.4MB]
田中幸一 (農業環境技術研究所)
農業における新たな生物資源の利用とリスク管理 [PDFファイル 5.0MB]
藤井義晴 (農業環境技術研究所)
生物多様性保全をより重視した農林水産施策の推進 [PDFファイル 1.3MB]
木内岳志 (農林水産省環境バイオマス政策課)
農業における生物多様性の利用と保全の調和に向けた提言 [PDFファイル 0.8MB]
西尾 健 (法政大学)