(独)農業環境技術研究所と静岡県農林技術研究所は、2013年1月22日、静岡県コンベンションアーツセンターグランシップ(静岡市)において、農業環境技術公開セミナー in 静岡 「生産性と環境保全を両立する茶園のエコ管理」を開催しました。
このセミナーは、都道府県・市町村と農業環境技術研究所との間の相互理解や連携・交流・協力関係を深めることを目的として開催しています。今回は、平成20年(福島県)、 平成21年(滋賀県)、 平成22年(熊本県)、 平成23年(千葉県) に続く5回目の開催となります。
今回のセミナーでは、茶園における生物多様性を保全する研究や茶栽培の環境負荷を軽減する研究の最新の成果を広く一般市民と農業関係者に紹介し、参加者相互の理解と連携・協力の推進を図りました。
開催日時: 平成25年1月22日 (火曜日) 12時−17時
開催場所: 静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ 10階会議室
(静岡県静岡市駿河区池田79-4)(JR東静岡駅前)
共催: (独)農業環境技術研究所、 静岡県農林技術研究所
後援: (独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
参加者数: 146名
(内訳: 一般参加者(生産者、企業等)59名、静岡県関係者 55名、市町村・JA関係者 10名、大学 8名、行政 3名、野茶研・農環研 11名)
プログラムの概要
セッション1 生物多様性を守り、高品質なお茶を生産する茶園管理
茶園が育む「茶草場」の生物多様性
(独)農業環境技術研究所 生物多様性研究領域 主任研究員 楠本 良延
静岡県における茶草農法の取組
静岡県農林技術研究所 上席研究員 稲垣 栄洋
セッション2 環境負荷低減とともに経済性のある茶園施肥管理
農耕地土壌からの一酸化二窒素発生とその削減
(独)農業環境技術研究所 物質循環研究領域 主任研究員 秋山 博子
茶園土壌からの一酸化二窒素発生とその削減
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 研究員 廣野 祐平
長期の施肥削減が茶の収量に及ぼす影響と茶栽培地域周辺のため池・井戸水の水質推移
静岡県農林技術研究所 茶業研究センター 上席研究員 小杉 徹
総合討議
写真1 ポスターセッションのようす
写真2 講演会場のようす
写真3 参加者から様々な意見・要望が寄せられました
写真4 総合討論のようす
静岡県の茶園では、お茶の品質を高めるため、ススキなどの茶草と呼ばれる草を茶園の畝間(うねま)に敷いています。その茶草を確保するため、「茶草場」 と呼ばれる草地が維持されており、多様な生物が生息する場となっています。セッション1では、茶草場の重要性について、生物多様性および高品質なお茶を生産する観点から、世界農業遺産への登録をめざした取り組みなども交えて紹介されました。セッション2では、茶園での窒素質肥料の施用に伴って問題となる一酸化二窒素の発生と、地下水の硝酸態窒素の負荷に関して、それらの対策事例を交えて紹介されました。
総合討議では、セッション1の茶草場の生物多様性とセッション2の環境負荷低減に関して、それぞれのメリットとデメリットを整理して、互いのトレードオフを考慮した一体的な研究を進めてほしいとの要望がありました。また、茶生産者からは、現場で直接役に立つ研究を進めてほしいとの期待が寄せられました。