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農業と環境 No.187 (2015年11月1日)
国立研究開発法人農業環境技術研究所

MARCOワークショップ 「アジアの作物生産システムと水資源問題のためのSWATの適用と適応」 開催報告

農業環境技術研究所は、2015年10月20日から23日まで、農林水産技術会議事務局つくば農林ホール(茨城県つくば市)などにおいて、MARCOサテライトワークショップ2015「アジアの作物生産システムと水資源問題のためのSWATの適用と適応」( MARCO Satellite International Workshop 2015 “Adoption and adaptation of SWAT for Asian crop production systems and water resource issues”) を開催しました。

開催日時: 2015年10月20日(火曜日)〜 23日(金曜日)

開催場所: 農林水産技術会議事務局つくば農林ホール

開催趣旨

アジアでは急激な人口増加に伴う食糧増産と土壌・水資源保全が喫緊の課題となっています。流域レベルでの水・物質動態予測モデル SWAT(Soil and Water Assessment Tool)は、作物生産予測や土壌・水資源管理シナリオ策定などに世界中でもっとも広く使用されている、汎用性の高い流域モデルです。しかし、このモデルは水田を多く含む農業流域などアジアモンスーン地域に特有の農業実態に即したモデルではなく、アジアの食糧問題や環境問題の解決に向けて活用するためには、アジアモンスーン地域における SWAT の適用と改良をさらに推進する必要があります。

本ワークショップでは、水田流域への SWATの適用と改良に関する発表・議論を中心に、アジアモンスーン地域のさまざまな農業流域への SWATの適用を進めるための講演・議論を行い、アジアの農業実態に即した SWATの適用と改良についての世界最先端の情報交換および意見交換をおもに行いました。

なお、本ワークショップは、これまで2年に1回の頻度で東南・東アジアで3回開催されてきた国際 SWAT 会議をアジア全域を対象に拡大して、第4回国際 SWAT アジア会議(International SWAT-Asia Conference IV、略称 SWAT-Asia IV)と位置づけて実施しました。

主催: 国立研究法人農業環境技術研究所 (農環研)

共催: 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター (JIRCAS)

後援: 農林水産省農林水産技術会議事務局国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構国立大学法人東京農工大学茨城県米国農務省農業研究局(USDA-ARS)世界土壌水保全機構(WASWAC)テキサス農工大学日本土壌肥料学会農業農村工学会日本水環境学会水文・水資源学会土壌物理学会

参加者: 合計82名
(内訳: マレーシア8、中国7、ベトナム6、インド3、フィリピン3、米国3、インドネシア2、カナダ1、ドイツ1、日本47(うち、日本在住の留学生等として中国2、チュニジア1、ベトナム1を含む、農環研からの参加は16))

シンポジウム参加者(集合写真)

20日(会議1日目)

農環研 宮下理事長の開会あいさつ、農環研 阿部薫物質循環研究領域長による SWAT-Asia IV の概要紹介があり、その後、セッション1「地球規模の SWAT 適用とアジアでの展望」において、基調講演と3題の研究報告が行われました。昼食後にはポスターセッションがあり、その後、セッション2「土地利用変化と気候変動が流域プロセスに及ぼす影響」において、6題の研究報告が行われました。会議後には、SWAT を習得するためのトレーニングワークショップ(1日目)を、初心者コースと上級者コースに分かれて行いました。

21日(会議2日目)

セッション3「土壌・水資源の合理的管理のための水田流域におけるSWATの適用と改良」において、基調講演と9題の研究報告が行われました。また、昼食後にはポスターセッションが行われました。

22日(会議3日目)

セッション4「非SWATと新SWAT:流域スケールモデルの更なる必要性と挑戦」において、基調講演と3題の研究報告が行われました。昼食後にはポスターセッションが行われ、ベストポスター賞として2件が提示されました。午後のセッション5「アジアの流域における土壌の資源と機能」では、1題の研究報告が行われました。次に、総括討議セッションが行われ、会議の総括と、今後の研究方向についての意見交換を行いました。また、ベストポスター賞の授与式が執りおこなわれ、2年後の SWAT-Asia V の開催国としてマレーシアの紹介がありました。続いて、閉会式があり、JIRCAS の小山理事より、ごあいさつを頂きました。

閉会式後には、セッション5の続きとして、農環研のインベントリー展示館の土壌モノリス等を見学しました。その後、SWAT を習得するためのトレーニングワークショップ(2日目)を、初心者コースと上級者コースに分かれて行いました。

23日(エクスカーション)

霞ヶ浦流域内における水利用や水質変化の実態と変動要因を理解するため、筑波山麓の水田流域(逆川流域)、霞ヶ浦湖岸のハス田地帯(JA土浦れんこんセンター)、茨城県霞ケ浦環境科学センター、霞ヶ浦ふれあいランド、および鉾田川流域内のハウス野菜栽培農業地帯を見学しました。

茨城県霞ケ浦環境科学センターの見学(集合写真)
茨城県霞ケ浦環境科学センターで

本ワークショップの詳細報告が 農業と環境189号 に掲載されています。また、当日の配布資料(Program & Abstracts)[PDFファイル] も公表されていますので、ご利用ください。

江口定夫 (物質循環研究領域)

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