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2017年5月30日更新
大豆及び畑作物の有用遺伝子の同定とDNAマーカーの開発 (略称:夏畑作物遺伝子)
概要
ダイズおよび夏畑作物の新品種をDNAマーカー選抜育種技術を用いて効率的かつ計画的に開発するために、ダイズでは収量性、モザイク病抵抗性、茎疫病抵抗性、ハスモンヨトウ抵抗性、耐冷性、耐湿性、根粒形成および窒素固定などに関わる遺伝子を、ばれいしょではシストセンチュウ抵抗性及びウイルス抵抗性、かんしょでは立枯病抵抗性及びネコブセンチュウ抵抗性、そばでは自殖性に関わる遺伝子または遺伝子領域を同定し、新品種の開発に利用可能なDNAマーカーを開発する。
研究目的
ダイズおよび夏畑作物において生産者や消費者のニーズに合わせて収量や品質などを飛躍的に向上させた画期的な品種を短期間で開発するため、重要な農業形質に関わる遺伝子又は遺伝子領域を同定し、新品種の開発に利用可能なDNAマーカーを開発する。本課題では、生産性、ストレス耐性、病虫害抵抗性、微生物共生能など、栽培品種が基本的に備えるべき特性の改良に重点を置いて研究を実施する。
達成目標
- 国産品種が有する優れた品質を維持したまま、わが国の大豆生産の安定多収に寄与する重要形質を改良するために、収量性、ストレス耐性、病虫害抵抗性等に関わる遺伝子を8個以上同定し、DNA マーカー選抜育種のメニューに加える。
- ダイズは根粒菌との共生により窒素を、菌根菌との共生によりリンを吸収する。ダイズの収量を最大化するために、窒素固定能や菌根菌応答率などに関わる遺伝子をダイズから同定するとともに、共生微生物も含めた根圏微生物機能の診断ならびに制御技術を開発する。
- ばれいしょではシストセンチュウ抵抗性およびウイルス抵抗性、かんしょでは立枯病抵抗性およびネコブセンチュウ抵抗性、そばでは自殖性に関わる遺伝子または遺伝子領域を同定し、計画的かつ効率的な新品種の開発に利用できるDNAマーカーを開発する。
研究内容
- ダイズの収量性、モザイク病抵抗性、茎疫病抵抗性、ハスモンヨトウ抵抗性、耐冷性、耐湿性、根粒形成および窒素固定などに関わる重要形質について、実験系統群を用いて遺伝解析を行い、原因遺伝子またはその領域を同定し、新品種の開発に利用可能なDNAマーカーを開発する。
- ダイズの多様性を理解し、各実施課題において効率的に利用するために、国産ダイズ品種のゲノム配列データーベースであるDAIZUbaseの精緻化とユーザーインターフェースの改良を行う。
- ダイズ栽培圃場の根圏微生物相を解析し、ダイズの遺伝子型や根分泌物による微生物相の変動を解析する。さらに、ダイズの根粒着生数や窒素固定活性などに寄与する根圏微生物を選抜し、その原因を解明する。
- そばについては自殖性(Sh)遺伝子の単離を進める。ばれいしょについては、ジャガイモYウイルス(PVY)抵抗性遺伝子Rychcについてマッピングを行うとともに、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1について抵抗性と連鎖するマーカーを作出する。かんしょについては、活動型レトロトランスポゾンを用いてサツマイモ立枯病抵抗性の遺伝解析に着手するとともに、育種選抜系統のサツマイモネコブセンチュウ抵抗性を評価する。
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実施課題一覧(〜平成29年度)
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課題番号 | 実施課題名 | 課題責任者 所属機関 |
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SFC1001 | ダイズの収量構成要素制御遺伝子の単離と機能解明、育種的利用ならびにダイズ等のゲノム研究基盤の整備と利用 | 農研機構 次世代作物開発研究センター |
SFC1002 | 日米品種を対象にしたソース能支配形質の解析と育種的利用 | 京都大学 |
SFC1003 | ダイズの開花・登熟関連遺伝子の単離と機能解明、育種的利用 | 佐賀大学 |
SFC1004 | ダイズの発芽時冠水耐性に関わる遺伝子の単離と機能解明、育種的利用 | 北海道大学 |
SFC1005 | ダイズの耐湿性に関与する嫌気耐性遺伝子の単離と機能解析 | 九州大学 |
SFC1006 | ダイズ裂開粒の発生機構解明および裂開抵抗性選抜マーカーの開発 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 十勝農業試験場 |
SFC1007 | ダイズ茎疫病抵抗性に関わるほ場抵抗性遺伝子の単離 | 農研機構 生物機能利用研究部門 |
SFC1008 | ダイズのウイルス病に対する抵抗性遺伝子の単離と機能解明、育種的利用 (平成26年度終了) | 近畿中国四国農業研究センター |
SFC1009 | ハスモンヨトウ抵抗性遺伝子の単離と機能解析およびツルマメ由来の新規抵抗性遺伝子の探索 | 農研機構 九州沖縄農業研究センター |
SFC2001 | 根圏微生物機能を制御する根分泌物の同定 (平成26年度終了) | 京都大学 |
SFC2002 | 固定窒素寄与率における量的遺伝子座の同定 (平成26年度終了) | 農業生物資源研究所 |
SFC2003 | ダイズの共生微生物相と共生系制御システムの解明による持続的生産技術の開発 (平成26年度終了) | 東北大学 |
SFC2004 | 根圏微生物がダイズ根粒数を制御する機構の解明とその根粒への侵入が窒素固定効率に与える影響の評価 (平成26年度終了) | 東京農工大学 |
SFC2005 | 窒素固定増強遺伝子の同定と作物生産への応用の試み (平成26年度終了) | 佐賀大学 |
SFC2006 | 菌根菌応答率に基づくリン酸吸収効率化育種 (平成26年度終了) | 農業生物資源研究所 |
SFC3001 | 高付加価値ソバの品種開発を加速する自殖性選抜マーカーの開発 | 農研機構 次世代作物開発研究センター |
SFC3002 | バレイショ重要病害虫の抵抗性遺伝子を選抜するDNAマーカーの開発及びそれらを利用した育種素材の開発 (平成28年度終了) | 農研機構 北海道農業研究センター |
SFC3003 | 次世代シーケンスを用いた活動型レトロトランスポゾンの挿入多型解析によるサツマイモ高密度連鎖地図の作成と立枯病およびネコブセンチュウ抵抗性マーカーの開発 | 農研機構 九州沖縄農業研究センター |