ブタゲノムと品種改良の加速化


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ブタは類人猿以上に体重や皮膚の状態、内臓の大きさなどが人間に近い動物である。そのため現在、異種間移植の臓器提供用動物として、研究が続けられている。生産性が高く、食肉としての商品価値の高いブタの育種を進めるためには、肉質や抗病性等の生産上有用な各種の形質を左右する遺伝子を解明しなければならない。そのためには、全ゲノム塩基配列の高精度の情報が必要となる。また、ブタを再生医療や医薬品の前臨床試験等の医学・薬学・生物学分野において有効利用するためには、ゲノム情報をはじめとしたブタの分子生物学的な基盤情報の充実が不可欠である。家畜では、これまでに、ウシやニワトリで全ゲノムのドラフト概要塩基配列が公表されているが、これらと並ぶ食肉生産用家畜であるブタのゲノム塩基配列の全体像はまだ明らかとなっていなかった。

日本におけるブタゲノム研究の拠点は家畜ゲノム解析研究プログラム (AGP)から始められて、ブタのゲノム塩基配列、発現遺伝子解析といった基盤的なゲノム解析研究とともに、ゲノム情報を最大限に利用した免疫遺伝学・抗病性解析研究を通じ、ブタの抗病性育種、家畜衛生、またモデル動物としてのブタの利用促進を目指す研究グループである。またニワトリの抗病性解析についても研究を行っている。全ゲノム解読研究について、国際ブタゲノム解読コンソーシアムに参加し、ゲノム塩基配列の解読に貢献するとともに、ブタゲノム塩基配列上の遺伝子の配列(完全長cDNA)を正確に解読することによって、ブタ遺伝子の数や構造の正確な予測に貢献している。