農作業安全コラム

農機から家族を守るということ

R3年2月 積 栄

 仕事柄、日頃から多くの農作業事故の報告や報道を目にしています。いずれもご本人の無念やご家族、関係者の方々のお気持ちを考えざるを得ず、そのたびに事故低減に向けた努力を惜しんではならないと意を新たにしますが、中でもつらいのは、小さなお子さんが犠牲になったものです。
 昨年も、家族が運転する機械に子供を乗せていて途中で転落し、轢かれてしまった事故や、子供が作業中の機械に近づいたところ巻き込まれてしまった事故が相次ぎました。また、農業ではありませんが、この冬にはフォークリフトや除雪機で、同じような事故でやはり子供の犠牲者が出ています。

 ある生産者の方から、「最近は子供を気軽に農機に近寄らせてしまう人が多くて危ない」と聞きました。報道でも、トラクタに子供を同乗させている様子を、微笑ましい風景として紹介しているものをみたことがありますが、以前のコラム(H27年5月H30年3月)でも書かれているように、同乗する子供が転落して多くの事故が起きており、とんでもないことです。
 ほとんどの乗用農機は一人乗りとして作られており、補助者が乗車する作業機の場合でも、子供の乗車は取扱説明書で禁じられています。子供を乗せることはもちろん、不必要に近寄らせることも、明確な誤使用です。

 お子さんやお孫さんに「乗せて」と頼まれれば、つい少しだけ、と考えてしまうかもしれませんが、それだけ大切な家族だからこそ、農機に近づくのは危険であること、ケガをさせたくないからこそ乗せる訳にはいかないことを、機会を見つけてきちんと伝えていただきたいと思います。そしてこのことは、子供だけでなく、家族や一緒に働く人たち全員に対しても当てはまることは、言うまでもありません。

 冒頭に述べた報道の多くでは、「全身を強く打ち、・・・」「けがを負って意識不明となり・・・」といった表現が多く見られます。しかし事故調査に関わると、実際の現場はこのような言葉からは想像もできないほど悲惨であることを思い知らされます。
 家族や仲間をそのような目に遭わせることが決してないように、そしてご本人も事故に遭われないように、動いている機械には近づかない、近づけないことを徹底してください。

 

キーワード:事故/安全装置・対策/乗用トラクター/その他の機械
サブキーワード: