農作業安全コラム

中国における農作業事故状況について

R6年4月 井上 秀彦

 これまで、アメリカ韓国における農作業事故情報についてご紹介しました。今回は中国の状況についてご紹介いたします。

 中華人民共和国農業農村部により農業機械事故発生状況の報告がとりまとめられており、その中では、道路以外で発生した事故と国道などの道路上で発生した交通事故に分けられて報告されています。
 2021年の国道以外で発生した農業機械事故による死者数を見てみますと、46名の方が亡くなっており、トラクター(乗用型、歩行型どちらかは不明)による事故が41%、コンバインによる事故が44%となっています。日本と比べてみますとトラクターの事故が多いことは共通していますが、中国ではコンバインによる事故が多いことが特徴です。いささか乱暴な結論ではありますが、この農業機械事故のうち65%が操作ミスにより発生したとしています。また、無免許運転や機械の年次点検を怠った事例が多数あると報告されています。
 一方で、トラクターに関わる交通事故の統計に目を移してみますと、2021年に501名もの方々が亡くなっていることが報告されています。交通事故においても、無免許運転やナンバープレートのない違法トラクターであることが主な原因であるとされています。農業農村局と公安局交通警察等で協力して違法トラクターの抜き打ち調査を行うこともあるようで、無免許運転や違法改造トラクターの摘発など事故防止に向けた取り組みを行っています。
 このような状況の中、中国においても農業機械による事故は大きな問題として認識されており、農業機械事故が発生した際に負傷者の救助、事故現場の調査や報告を義務付ける農業機械の事故処理法が2011年に策定されています。

 日本と中国では大きく事情が異なることもありますが、詳細な事故情報が事故防止のための強力なツールとなるという考えは共通しています。日本には事故調査に関する法令はありませんが、我々、農研機構農業機械研究部門では各道県に協力いただきながら、農作業事故調査を行っています。本HPの事故事例検索については、このコラムをお読みの方はご存知かと思いますが、周りの方へも是非情報共有していただけますと幸いです。

 

キーワード:事故/安全装置・対策/乗用トラクター/歩行用トラクター/コンバイン(自脱型/普通型)/運搬・移動
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