コラム
貝殻型パスタ(コンキリエ)とスパゲティを食べる虫
安くておいしいパスタ料理は、多くの人にとって定番メニューのひとつだと思います。パスタは乾燥食品として保存がきくことから、まとめて購入し保管している家庭もあることでしょう。長期間保管する食品は、害虫被害も受けやすく注意が必要です。今回のコラムでは、貝殻型パスタ(コンキリエ)とスパゲティに発生した食品害虫の事例を紹介します。
貝殻型パスタ(コンキリエ)から発生したタバコシバンムシ
ある住居の2階の部屋にある手作りの「壁掛け式写真入れ」から白い粉が出て、床面に落ちているのが発見されました。写真入れの装飾に使われた貝殻型パスタの一部が白く変色し穴が開いていることがわかり(図1)、ここから何か虫が発生したのではと疑われました。そこで、パスタ周辺に両面テープを貼り付けて虫の捕獲を試みたところ、複数のタバコシバンムシの成虫が捕獲されました。
タバコシバンムシは、様々な乾燥食品や畳の稲わらでも発生します。住居内に発生源を探しましたが、見つかりませんでした。「写真入れ」を作る前からパスタに卵や幼虫が付着していたか、野外から家屋内に飛び込んだ成虫が卵を産み付けた可能性があります。パスタにタバコシバンムシが発生する事例は珍しいものではありませんが、装飾品として使われたパスタからの発生事例として面白いと思いました。装飾品として長期間放置されたため、成虫まで発育し、私たちの目に触れたのです。この写真入れは、パパのために保育園で園児が作ったものでした。
スパゲティから発生したココクゾウムシ
ヨーロッパから輸入されたスパゲティに、コクゾウムシが混入したという事例が研究室に持ち込まれました。毎年のように日本では輸入スパゲティからコクゾウムシが発見されています。日本ではコクゾウムシと言えばお米ですが、ヨーロッパではスパゲティなのかもしれません。原料は小麦ですので、その加工品であるスパゲティでコクゾウムシは十分に発育できるのです(図2)。
持ち込まれたコクゾウムシを解剖して調べると、ココクゾウムシという別の種類だとわかりました。この2種類のコクゾウムシは、とてもよく似ていて外見からでは区別できません。輸入スパゲティに発見されたコクゾウムシと呼ばれる虫には、この2種類が混じっている可能性があります。輸入スパゲティの包装には不良なものが含まれ、袋に生じた穴からココクゾウムシが侵入したのかもしれません。
ココクゾウムシとコクゾウムシにとって、スパゲティとお米では、どちらが発育に適しているでしょうか。25℃で飼育すると、両種ともにスパゲティで発育日数が長く、羽化した成虫数も少なくなりました(いずれも統計学的に有意差あり、表を参照)。
今、私がとても気になるのは、スパゲティの直径とコクゾウムシの発育の関係です。どこまで細くなるとコクゾウムシは発育できなくなるのでしょうか?
参考文献
- 宮ノ下明大・今村太郎・村田未果(2006) 手作り壁掛け式写真入れに使用された貝殻型パスタ(コンキリエ)からのタバコシバンムシの発生.家屋害虫 28(2): 139-140.
- Murata, M. , T. Imamura and A. Miyanosita (2008) Infestation and development of Sitophilus spp. in pouch-packaged spaghetti in Japan. J. Econ. Entomol. 101:1006-1010.
関連情報
更新日:2019年02月19日