コラム
映画『アントマン』に見る昆虫の侵入経路
身長1.5cmのヒーロー
最近、映画『アントマン』(2015,アメリカ)を見に行きました。スパイダーマンやアイアンマンなどのヒット作品を制作したマーベル・スタジオの最新作です。前科持ち、バツイチ、無職の男が、特殊なスーツを着用することでアリサイズ(1.5cm)となり、娘のため人生をやり直したくて、ある仕事を引き受けることになります。
アントマン・スーツを開発したピム博士は、アリの嗅覚中枢を刺激する電磁波を発して、アリと交信できる装置も開発しました。この装置を使って、アントマンはアリに指示を送り共に戦うことができるのです。 アントマンは、人間サイズからアリの背中に乗れるサイズまで、自由に大きさを変えることができます。企業の研究施設に忍び込むために、排水管の中へアリを引き連れて侵入するシーンは、映画の見所でもあります。 私はこのシーンを見たとき、昆虫型ヒーローの特徴はやはりそのサイズなのだと思いました。小さな体で隙間を通り抜け、神出鬼没に任務を遂行できるからです。最新の撮影技術で、映像は大変リアルに作られていて、アリの目線を感じることができます。
昆虫の侵入経路
穀物貯蔵庫や食品加工施設に侵入する昆虫を防止することは、食品への昆虫混入を減らす第一歩になります。アントマンの行動を見れば、建物への昆虫の侵入経路を学ぶことができるでしょう。 映画では、通気口、排水管、鍵穴、ドアの下の隙間といった狭い隙間を通り抜けるシーンがあります。実際に、通気口からは小型のハエやカの仲間、排水管からはチョウバエ類、ドアの下の隙間からは歩行性のアリや甲虫類が侵入することが多いです。そのため、通気口や排水管の出口には、細かい網目のシートを張ったり、ドアの下の隙間には、ブラシを付けたりして、侵入を防止する必要があります。
ティッシュペーパーの箱に侵入するアリ
箱から取り出したティッシュペーパーに、生きたアリが付着していたという事例が知られています。4種類のアリを用いた侵入実験では、開封したティッシュ箱には48時間以内に全て侵入が起こりました(篠田,1992)。
この論文では、箱内のティッシュペーパーの構造がアリの営巣状態に近いのではないかと推察しています。また、4種類の中で、ヒメアリは直径0.3mmの穴から侵入可能であることが実験的に示されました。
参考文献
- 篠田一孝(1992)ティッシュに侵入するアリ-その原因の実験的解析-.ペストロジー学会誌 7: 55-57.
更新日:2019年02月19日