【豆知識】

コラム

「柿の種」をかじるイモムシ

2016.05.27 宮ノ下明大

 

「ピーナッツ入り柿の種」にノシメマダラメイガの大きな幼虫が入っていた。いつ混入したのか知りたいと相談がありました。この質問に答えるには、いわゆる「柿ピー」で、ノシメマダラメイガ幼虫の成虫までの発育日数を知る必要があります。しかし、誰も調べたことがありません。曖昧な返事しかできなかった私は、発育試験をやってみようと思いました。

複数の食材が幼虫発育に与える影響

「柿ピー」は、米菓子の「柿の種」と油で揚げたピーナッツの複数の食材からなる製品です。それぞれ原料はお米とピーナッツですから、ノシメマダラメイガは両方で発育することができそうです。この製品に幼虫が侵入した場合は、どちらを食べて、何日で成虫になるのでしょうか。

「ピーナッツ入り柿の種」と幼虫
「ピーナッツ入り柿の種」と幼虫

そこで、揚げピーナッツ、「柿の種」、「柿の種」と揚げピーナッツの混合物、「柿の種」の破片の4種類に、ノシメマダラメイガ孵化幼虫を放して、成虫までの発育日数を調べました。砕いた「柿の種」を調べた理由は、製品の輸送中や保管中に砕けた場合はどうなるか知りたかったのです。試験条件は、28℃、湿度70%、明期16時間・暗期8時間です。

幼虫を各食材に投入し発育日数を調べた
幼虫を各食材に投入し発育日数を調べた

幼虫は揚げピーナッツが好き

各食材とその組み合わせによる幼虫の発育日数と成虫羽化率を表に示します。最も速く成虫になったのは揚げピーナッツで平均38日でした。「柿の種」では、成虫になったのは35匹中1匹で、77日かかり、幼虫にとって最も悪い食材でした。「柿の種」と揚げピーナッツの混合物では平均36日で、揚げピーナッツ単独の場合と差はありません。おそらく、混合物では幼虫は主に揚げピーナッツを食べていると考えられました。砕いた「柿の種」では、平均52日で、砕けた状態は幼虫発育に好ましいと思われました。「柿の種」は、堅く焼かれた上に醤油が塗られており、幼虫は育たないかもと思いましたが、成虫羽化率は低いものの、時間をかけて成虫になったことに驚きました。

「柿の種」、揚げピーナッツによるノシメマダラメイガ幼虫の発育

製品に幼虫が侵入したら

「柿ピー」のような混合物の場合、幼虫は「柿の種」よりも揚げピーナッツの方を食べ、温度が28℃付近であれば約40日で成虫になると考えられます。「柿の種」だけの場合は、成虫羽化率はとても低いですが、約80日で成虫になることがあるでしょう。揚げピーナッツ単独は、混合物の場合と差がないと考えられます。砕けた「柿の種」は、幼虫は速く発育して、成虫羽化率も高くなる傾向があるので、商品の輸送、保管、陳列には注意が必要です。

ノシメマダラメイガの幼虫は食材ごとに発育日数は異なる
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参考文献

  • 宮ノ下明大・今村太郎・古井 聡(2016)米菓子「柿の種」と揚げピーナッツにおけるノシメマダラメイガ Plodia interpunctella の発育,ペストロジー 31:1-4.
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関連情報

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更新日:2019年02月19日