コラム
多すぎる仲間が幼虫の発育に与える影響
昆虫の幼虫の一番の仕事は食べることです。それは無事に成虫になることを目的にしています。幼虫の発育には「食物の質」と「温度」が大きく影響しますが、「幼虫密度」も無視できません。限られた量の食物を食べる場合は、密度が高ければ食べる量は減り、生活する空間も狭くなるため、発育に影響が出ます。今回のコラムでは、ノシメマダラメイガの幼虫密度の発育に与える影響を調べた論文を紹介します。
幼虫の密度条件
この論文では、食物に人工飼料(家畜飼料+押麦など)と落花生の2種類を用意しました。それぞれ3gに対して、幼虫を1、2、3、4、5、10、20、40匹投入し、30℃、湿度70%の条件で飼育し、幼虫の発育日数と成虫の体重を調べています(Mbata, 1990)。
遅延する発育
図1に幼虫密度と平均発育日数の関係を示しました。幼虫密度が上がるに従って、発育日数は長くなりました。人工飼料は、落花生よりも常に短期間で成虫になり、食物の違いは密度の違いよりも影響が大きいことがわかります。40匹の場合は1匹に比べ、人工飼料で10.5日、落花生で12.9日も遅くなりました。
Mbata, 1990のデータをもとに作成
軽くなる体重
図2には、幼虫密度と雌成虫の体重の関係を示しました。幼虫密度が上がるに従って、雌成虫の体重は軽くなりました。人工飼料と落花生の間で体重の大きな差はありませんでした。40匹の場合は1匹に比べ、人工飼料と落花生の両方とも4.7mg軽くなりました(約3割減少)。一般に雌成虫の体重の減少は産卵数の減少を意味しますので、次世代への影響もあるでしょう。
多数の幼虫が出てきたら・・・
もし、食品から多数の幼虫が発見された場合、数匹の時と比べて発育が遅れた可能性があるので、幼虫の混入時期の推定には注意が必要と思います。虫を発見したときは、顔をそむけて捨ててしまいがちですが、どれだけの匹数がいたのか冷静に観察することも必要です。
多すぎる仲間は発育にとっては損だけど
仲間が多すぎると、幼虫の発育にとって損をすることが多そうです。生存率の低下も報告されています。しかし、成虫になった時に、交尾相手を探す手間は省けそうです。また、高密度で幼虫が発育した成虫は、活動力が高まり積極的に分散するトノサマバッタのような昆虫もいます。もしかすると、幼虫密度はノシメマダラメイガの成虫にも影響があるかもしれませんね。
参考文献
- Mbata, G. N. (1990) Studies on the intraspecific larval interaction in a laboratory culture of Plodia interpunctella (Hubner) (Lepidoptera: Pyralidae) on two food. Insect Sci. Applic. 11: 245-251.
関連情報
- 図鑑:ノシメマダラメイガ
更新日:2019年02月19日