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情報:農業と環境
No.40 2003.8.1

No.40

・環境研究機関連絡会:成果発表会
      −環境研究の連携をめざして− が開催された

・農業環境技術研究所案内(10):古書 その1
      「倭漢三才図会」・「康煕字典」・「本草綱目啓蒙」・
      「本草図譜」・「農政全書」

・生物多様性と生態系の働き:消費者(動物)との関係

・本の紹介 123:地球白書2003−04、
      クリストファー・フレイヴィン編著、
      エコ・フォーラム21世紀日本語版監修、
      家の光協会(2003)

・本の紹介 124:新生物多様性国家戦略、
      環境省編、ぎょうせい(2002)

・本の紹介 125:The State of the Environment in Asia
      2002/2003, Ed. Japan Environmental Council,
      Springer, 2003

・本の紹介 126:環境負荷を予測する
      −モニタリングからモデリングへ−、
      長谷川周一・波多野隆介・岡崎正規編、
      博友社(2002)

・研究、技術開発およびデモンストレーションのための個別計画
     「欧州研究圏の統合、強化」(2002-2006)の決定
      −その4−


 
 

環境研究機関連絡会:成果発表会
−環境研究の連携をめざして−
が開催された

 
 
 環境研究機関連絡会の成果発表会が、「環境研究の連携をめざして」と題して、7月24日につくば国際会議場(エポカルつくば)で開催された。参加者は184名に及び、会は成功裏に終った。
 当日の成果発表会プログラムと開会あいさつ、講演要旨を紹介する。
 

 
プログラム
 
1.開会挨拶 農業環境技術研究所 理事長 陽 捷行 10:00〜10:10
 
司会:神本正行(産業技術総合研究所研究コーディネーター)
 
2.防災科学技術研究所:松浦知徳(総合防災部門 総括主任研究員) 10:10〜10:40
    気候変動に関わる気象・沿岸災害の長期変動予測(大気・気象) [PDF]
 
3.気象研究所:佐藤康雄(環境・応用気象研究部長) 10:40〜11:10
    気象研究所における黄砂研究の現状と展望(大気・物質) [PDF]
 
4.国立環境研究所:野尻幸宏(地球温暖化研究プロジェクト総合研究官) 11:10〜11:40
    海洋の二酸化炭素吸収の観測と解析に関する研究(大気・物質・海) [PDF]
 
司会:高木宏明(国立環境研究所主任研究企画官)
 
5.産業技術総合研究所:山本 晋(環境管理研究部門副部門長) 13:00〜13:30
    炭素循環フィールド観測と対策技術評価(物質動態) [PDF]
 
6.農業環境技術研究所:上路雅子(環境化学分析センター長) 13:30〜14:00
    農業環境におけるダイオキシン類の動態とその制御技術(物質・農地) [PDF]
 
7.国土技術政策総合研究所:藤田光一(河川環境研究室長) 14:00〜14:30
    自然共生型流域圏・都市の再生に関する研究(物質・生物・都市) [PDF]
 
8.水産総合研究センター:中村義治(水産工学研究所水産土木工学部長) 14:30〜15:00
    炭素収支に係る主要貝類の生物機能に関する研究(物質・生物・海) [PDF]
 
 
司会:吉田 等(国土技術政策総合研究所環境研究官)
 
9.港湾空港技術研究所:桑江朝比呂(海洋・水工部主任研究官) 15:20〜15:50
    メソコスム実験による干潟生態系の動態と干潟再生に関する研究
    (生物・海)
[PDF]  
 
 
10.土木研究所:傳田正利(水循環研究グループ研究員) 15:50〜16:20
    新しい調査ツール、マルチテレメトリシステムを用いた野生動物研究 [PDF]
          〜河川工事が野生動物の行動に与える影響評価〜(生物・河川)
 
11.森林総合研究所:尾崎研一(北海道支所生物多様性担当チーム長) 16:20〜16:50
    地域の生物多様性を単一の希少種で代表させることの問題点(生物) [PDF]
 
12.閉会挨拶 国立環境研究所 理事長 合志陽一 16:50〜17:00
 
(注)[PDF] ファイルは、Acrobat Reader 5.0 以降で御覧下さい。   
 

 
開会あいさつ
環境研究の連携と進化をめざして
独立行政法人 農業環境技術研究所 理事長 陽 捷行  
 
 環境研究に携わる国立および独立行政法人の研究機関が情報を相互に交換し、環境研究の連携を緊密にするため、環境研究機関連絡会が平成13年10月に設置されました。この連絡会の目的は、1)環境研究の推進状況の紹介と相互理解、2)環境研究の主要成果の紹介、および3)環境研究およびこれに関連する事項の協力・連携・連絡、にあります。この目的に基づいて、ここに「環境研究機関連絡会成果発表会−環境研究の連携をめざして−」を開催する運びになりました。
 
 環境研究を進めるにあたって、われわれはどのように考えていけばいいのでしょうか。私は、ここで次の四点を強調します。それは、「分離の病」を克服し、「国際・学際・地際」を推進し、「俯瞰的視点」を維持し続け、「自他の共生」を図ることです。
 
 「分離の病」は三つあります。専門主義への没頭や専門用語の迷宮など生きていない言葉を使う「知と知の分離」、理論を構築する人と実践を担う人との分離やバーチャルと現実の分離に見られる「知と行の分離」、客観主義への埋没、知と現実との極端な乖離(かいり)に見られる「知と情の分離」がそうです。時間と空間を越えて「環境を守る」ためには、これらの分離を可能な限り融合することが必要なのです。
 
 国籍、人種、宗教、政治、経済体制、貧富、性別などを差別せず、お互いが相手の立場で思考し、意見の対立が感情の対立にならない交流こそが、「国際」化と考えます。空間を超えて生じている環境問題を解決するためには、この国際化を無視することができません。広く分野や所属をこえて研究を共にする「学際」は、説明の必要がありません。現場のない環境研究はありえません。これが、「地際」の重要な点です。「知と行の分離」にもつながるところがあります。「地際・学際・国際」の融合こそが環境研究の決め手になるでしょう。
 
 「俯瞰的視点」とは、人類が20世紀に獲得した最大の成果です。文明史上、人類が最高の高度から地球を眺め、人類と地球の来し方行く末を認識する視点です。20世紀の人類は月にその足跡をしるし、火星に生き物が生息しないことを確認し、人類のあり方を考える俯瞰的視点をえたのです。
 
 環境研究を一層進化させるために、さらに「自他の共生」が必要です。人類は自分たちの利益を増すことに努力し、今日の繁栄を手に入れました。これは、すなわち「自」の歴史でした。その結果、環境問題が起こり、「自」を主体におけば行き詰まりが見えることを理解しました。歴史は、「自から他へ」に視線を向けなければならないことを教えてくれたのです。われわれは、遅まきながら環境を視野に入れた科学が必要であることに気づきました。「自他の共生」を図らなければ、地球の、ひいては人類の将来がないことを学びました。この原理は、環境問題を研究しているわれわれの組織においてもしかりでしょう。
 
 自然界では「自」と「他」が併存し、両者の共存で全体が成り立っています。併存する「自・他」を含む全体が機能することは「自他の共生」といえます。これによって自然界はうまく運行しています。この自然界の「自他の共生」を、環境を研究している我々の個々の組織にもうまく適用させることが肝要と考えます。
 
 組織と組織の社会ですから、自他の均衡は難しく、そこには「自他の衝突」が待ちかまえています。しかし我々は、知恵と協力と活力を背景に、「自他の共生」のシステムを構築しなければなりません。それぞれの研究所が、単に組織だけを守る共同体ではなく、広く環境を保全できる機能体として働く場をつくる必要があるのです。
 
 このように、「分離の病」を克服し、「国際・学際・地際」を推進し、「俯瞰的視点」を維持し、「自他の共生」を図ろうとする意志の一つが、この環境研究機関連絡会成果発表会だと考えます。この発表会を機に、僅かでも環境研究の進展が期待できれば、大きな喜びとなります。
 
 発表課題は、各研究所のオピニオン・リーダーによる最も今日的なテーマに彩られています。課題のキーワードは、大気(気象、物質、海)、物質(動態、農地、生物、都市、海)および生物(海、河川)に大きく分類できます。各研究所の研究を推進していく過程で、これらの成果発表が参考になることを期待して開会の挨拶とします。
 

 
  講 演 の 要 旨  
  全頁 [PDF] 1,700KB  
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農業環境技術研究所案内(10):古書 その1
倭漢三才図会(わかんさんさいずえ)
康煕字典(こうきじてん)
本草綱目啓蒙(ほんぞうこうもくけいもう)
本草図譜(ほんぞうずふ)
農政全書(のうせいぜんしょ)

 
 
(注:本節は、Webで表示出来ない文字が含まれていますので、[PDF]版も提供しています。)
[PDF] ファイルは、Acrobat Reader 5.0 以降で御覧下さい。)
 
 農業環境技術研究所の歴史は、1893年(明治26年)に設立された農事試験場に始まる。今から110年も前のことである。この間57年の歳月を経た農事試験場は、1950年(昭和25年)に農業技術研究所に改組された。さらに、この組織は22年の歳月を経て再び変貌し、農業環境技術研究所と農業生物資源研究所と農業研究センターに分化した。今から20年前の1983年(昭和58年)のことである。そしてこの研究所は、2001年(平成13年)に独立行政法人農業環境技術研究所として新たな装いのもとに再出発した。この歴史については、機会あるたびに書いてきた。
 
 このような長い歴史をもつゆえ、当所にはさまざまな古い貴重な書籍が保存されている。今回はそれらの書籍名などを紹介し、そのいくつかを簡単に解説する。まず、それらの古書を列記する。
 
● 漢書 欽定戸部漕運全書 巻1〜巻96 48冊 附總目 和裝本
● 漢書 欽定戸部軍需則例 巻1〜9 附目録・官銜 4冊 和裝本
● 漢書 圓鉛総録 巻1〜巻27 附目録 楊慎著 10冊 和裝本
● 倭漢三才圖會 1〜9 全9冊 越智宿?正○書簽
● 漢書 劉氏鴻書 1〜108巻 附目録 劉仲達纂輯 20冊 和裝本
 
● 漢書 廣輿記 巻之1〜巻之24 附目録 蔡九霞 18冊 和裝本
● 漢書 古今治平略 巻1〜33 附目録 ?子強・徽子美原著 18冊 和裝本
● 漢書 群談採餘 巻1〜巻12 維綏甫纂輯 12冊 和裝本
● 漢書 農政全書 巻之1〜巻之60 徐光啓 24冊 和裝本
● 漢書 欽定四庫全書 總目提要 1〜200巻 附巻首 紀ホ等奉勅編 112冊
 
● 漢書 欽定四庫全書簡明目録 1〜20巻 于敏中等 16冊
● 漢書 説郛 1〜120巻 附目録上・下 陶宗儀纂 上海 郁文博
弘冶9年(1563) 122冊
● 漢書 説郛續 1〜46巻 附目録 陶宗儀纂 47冊
● 古事類苑 神宮司庁編 同庁発行 明治41年(1908)
和装 天部1,2 才時部1〜8 産業部1〜10
● 古事類苑 神宮司庁編 同庁発行 明治32年(1899)
和装 泉貨部1,2 稱量部 }式部 1〜14
 
● 古事類苑 神宮司庁編 同庁発行 明治33年(1900)
和装 }式部15,16 姓名部 1〜4 武技部 1〜6
● 古事類苑 神宮司庁編 同庁発行 明治42年(1909)
和装 政治部 1〜19
● 古事類苑 神宮司庁編 同庁発行 明治43年(1910)
和装 政治部 20〜30 服飾部 1〜8 動物部 1〜9
● 漢書 玉海 第1巻〜第204巻 附目録(1) 補刊 康煕26年(1687)
128冊(13帙) 和製本 詩攷1巻 詩地理攷1−6 漢藝文志攷1−10
通鑑地理通繹 1−14
● 漢書 正字通 1〜12集・附序 總目 張自烈 清畏堂藏版 40冊(4帙)
 
● 漢書 文獻通考 1〜348巻 附目録 馬端臨著 96冊 和裝本
● 漢書 續文獻通考 1〜254巻 王圻纂輯 85冊 和裝本
● 漢書 大学衍義補 1〜160巻 附目録 丘濬著 成化23年(1487)
30冊(3帙) 和裝本
● 漢書 盛京通誌 目録・図 巻1〜48 16冊(3帙) 和裝本
● 漢書 新編事文類聚翰墨大全 甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸
后甲・后乙・后丙・后丁・后戊集 附各目録 劉應李編 12冊(2帙) 和裝本
 
● 漢書 登壇必究 第1巻〜第40巻 附目録 王鳴鶴撰 40冊(4帙) 和裝本
● 漢書 楊舛菴全集 巻1〜巻81 附目録1〜4 楊慎著 24冊(2帙) 和裝本
● 漢書 欽定戸部則例 巻1〜巻100 附目録 同治4年(1865)
48冊(5帙) 和裝本
● 漢書 北堂書鈔 巻第1〜160 附目録 虞世南輯 24冊(2帙) 和裝本
● 漢書 戸部廣西司奏案輯要 巻1〜4 光緒30〜32年 京師官書局
4冊(1帙) 和裝本
 
● 漢書 古今類纂 1,2巻 王世懋編 2冊(1帙) 和裝本
● 珠?藪 巻之1〜巻之8 附目録 西湖散人編 4冊(1帙) 和裝本
● 漢書 副墨 1巻〜5巻 4冊(1帙) 和裝本
● 漢書 齋民要術 巻1〜巻10 賈思?撰 4冊(1帙) 和裝本
● 漢書 十科策略 1〜10巻 附年譜 劉文安著 6冊
 
● 漢書 書言故事 巻之1〜12 附目録 胡継宗集・陳玩直觧
天順8年(1458) 4冊(1帙) 和裝本
● 漢書 夢湲筆談 巻第1〜巻第26・補巻第1〜巻第3 續筆談11編・附目録
沈存中著 三槐堂藏版 6冊(1帙) 和裝本
● 漢書 佩文齋廣群芳譜 1〜100巻 附目録 汪?等編勅奉 姑蘇亦西齊蔵版
同治7年(1868) 36冊
● 漢書 萬姓統譜 目録,巻之1〜140 凌稚哲編  
氏族慱攷 巻之1−14 帝王姓系統譜 巻之1−6 和裝本
● 狩谷?斎 箋注倭名類聚抄 縮刷10巻 再版 東京 朝陽会
大正10年(1921) 和製10冊
第1巻 天地部 人倫部
第2巻 形体部 疾病部
第3巻 居処部 舟車部 珍宝部 布帛部
第4巻 束帯部 飲食部 器皿部 燈火部
第5巻 調度部
第6巻  〃
第7巻 羽族部 毛群部 牛馬部
第8巻 龍魚部 亀具部 虫豸部
第9巻 稻穀部 菜蔬部 果?部
第10巻 草木部
 
● 鼇頭音釋 康煕字典 巻之1〜巻之40
● 三椏培養新説 楳原寛重 明治14年(1881)
● 桃洞遺筆 第肇輯 巻上・中・下 第二輯 巻上・中・下
● 有用植物圖説 解説 巻1〜3 目録索引 完 圖? 巻1〜3
● 經濟要録1〜7 佐藤信淵 明治31年(1898)
 
● ことばの泉 日本大字典 首巻・巻壹・巻貳・巻參・巻四
● 校正 地方凡例録 初編・2編・3編 大石久敬 明治2年(1869)
● 農嫁業事 1−5 兒島如水
● 紅茶説 1−4 哥羅尼爾摩尼 明治11年(1878)
● 萩野由之 日本制度通1−3 荻野由之・小中村義家著 東京 吉川半七
明治23年(1890)3冊 和綴本
 
● ?篤児 ?篤児藥小生論 巻3−15 ?篤児著 洞海林疆健卿譯
江戸 和泉屋、山城屋、須原屋 安政3年(1856) 13冊
● 紅茶製法纂要 上・下 多田元吉編
● 農産製造総論 明治43年(1910)
● 農家益 天・地・人 大藏永常 享和2年(1802)
● 農家益 後編 乾坤 大藏永常 文化7年(1810)
 
● 農家益 續編 乾坤 大藏永常 嘉永7年(1854)
● 初P川健増 漆樹栽培書 東京 有隣堂 明治20年(1887)
17折 勸農叢書
● 初P川健増 漆樹栽培書 續編 東京 有隣堂 明治22(1889)
47折 勸農叢書
● 勸業備考 農具便利論 上・中・下 大藏永常
● 種樹園法 上・中・下 佐藤信淵 明治9年(1876)
 
● 廣益農工全書 1−5 宮崎柳條編 明治14年(1881)
● 球荒濟生?苡栽培調理法 完 奈良專二 明治19年(1886)
● 發明 麥作改良新書 齊藤司 明治22年(1889)
● 田圃驅蟲實驗録 全 梅原寛重 明治19年(1886)
● 續田圃驅蟲實驗録 梅原寛重 明治21年(1888)
 
● 藤井徹著 菓木栽培法 一・二・三・四・五・六・七・八
● 家畜醫範
解剖學 一/巻壹 二/巻貳 三/巻三
生理學 一/巻四 二/巻五 三/巻六
藥物學 一/巻七 二/巻八 三/巻九
内科学 一/巻十 二/巻十一 三/巻十二
外科学 一/巻十三 二/巻十四
産科学 一/巻十五 二/巻十六
● 土性辨 佐藤信景著・三毛證校字 一〜四
● 責難録 上・下
● 増續大廣益會玉篇大全 巻1−10 毛利貞齋 嘉永7年(1854)
 
● 増續大廣益會玉篇大全 巻1−10 毛利貞齋 明治5年(1872)
● 本草綱目啓蒙 蘭山小野先生口授 板貯衆芳軒之書蔵
金玉/四 石類/自五至七 山草上/八 山草下/九 芳草/十 
隰草上/十一 隰草下/十二 毒草/十三 蔓草上・下/十四 
水草・石草・苔草・雜草/自十五至十七 
麻麥○・稷粟・菽豆・造釀/自十八至二十一 
葷辛・○滑/自二十二至二十三 ?菜・水菜・芝○/二十四 
五果・山果/自二十五至二十六 夷果・味果・?菓/自二十七至二十九
香木類/三十 喬木類/三十一 灌木類/三十二 
寓木・苞木・襍木・服器/自三十三至三十四 
卵生蟲上、下/自三十五至三十六 
化生蟲・?生蟲・龍・蛇/自三十七至三十九 魚類/四十 
介類/自四十一至四十二 禽類/自四十三至四十四 
禽類・獸類/自四十五至四十六 獸類・人部/自四十七至四十○
● 灌園 岩崎常正著 本草圖譜
山草部 山草部/三 巻之四/山草類 山草部/五
芳草部/六・七・八・九
濕草部/十・十一・十二・十三・十四・十五・十六・十七
毒草部/十八・十九・二十・廿一
蔓草部/廿二・廿三・廿四・廿五・廿六・廿七・廿八・廿九
水草部/三十・三十一
石草部/三十二・三十三・三十四・三十五
雑草部/三十六
穀部/三十七・三十八・三十九・四十・四十一
菜部/四十二・四十三・四十四・四十五・四十六・四十七・四十八・四十九・五十
五十一・五十二・五十三・五十四・五十五・五十六・五十七
果部/五十八・五十九・六十・六十一・六十二・六十三・六十四・六十五・六十六
六十七・六十八・六十九・七十・七十一・七十二・七十三
香木部/七十四・七十五・七十六・七十七・七十八
喬木部/七十九・八十・八十一・八十二・八十三
灌木部/八十四・八十五・八十六・八十七・八十八
 
倭漢三才図会(わかんさんさいずえ)
 これは本邦最初の百科事典である。中国の明の王圻(おうせき)の「三才図会」の編集を倣って、和漢古今にわたる事物を天文、人倫、山地、山水など天・人・地の三部105部門に分け、図、漢名、和名などを挙げて漢字で解説した事典である。動物、植物、鉱物などの絵いりの作品である。
 
 編者の寺島良安(てらじまりょうあん)は、現在の能代市に生まれた。大阪に出て、医学や本草学を修め、医官となり法端位を得た。30年の歳月を費やしてできたこの事典は、正徳3年(1713)に出版されているから、すでに290年の歴史をもつ。
 
康煕字典(こうきじてん)
 これは、中国の清の康煕帝の命により1716年につくられた漢字字典である。約4万7000字が収められている。部首と画でひく字書の形式は、この字典によって完成し、後の字典の手本となった。
 
本草綱目啓蒙(ほんぞうこうもくけいもう)
 小野蘭山(おのらんざん:1729−1810年)によって、1803−1806年に刊行された全48巻にわたるこの日本博物学百科事典は、日本における最大の本草文献で、後の博物学の発展に大きく寄与した。
 
 本草綱目の「本草」の意味は、動物・植物・鉱物の「学」である。薬効のある物もここに記載されているので、古来の医学とも密接に関連している書物である。
 
 たとえば、「本草綱目啓蒙」の雲母、長石および石英の説明は、次の通りである。
●雲母:雲母は、「キラヽノ根ト云説ハ非ナリ雲母アル處ニ陽起石ナシ」と述べ、「玉類」に分類し、「紅毛ノ産上品透明ニテ水精ノ如シ此ヲヘゲバ薄紙ノ如クナル」と記している。
●長石:石膏の硬いものを長石としている。これは現在の硬石膏のことらしいが、ややあいまいで、現在の正長石をさす場合もあったらしい。
●石英:白石英を「本邦ニテ皆水精ト呼フ‥」としている。石英の「英」は、この場合「花」の意味である。
 
本草図譜(ほんぞうずふ)
 これは日本で最初の植物図鑑で、著者は蘭山の弟子である岩崎常正(潅園)(1786−1842年)である。完成は文政11年(1828)である。図画の出来が精密で、彩色も大変鮮明な美しい写本である。図譜を開くと、鮮やかな色が飛び出して来る。この図鑑は植物を主体としたものであるが、その他に岩石や動物などが若干掲載されている。
 
 約2000種の植物が掲載されている。「本草綱目」の分類に従い、山草から灌木について野生種ばかりでなく、園芸種に至るまで登場する。なお本書は、東京大学と千葉大学の図書館のホームページで見ることができる。
 
農政全書(のうせいぜんしょ)
 中国は明代の農書(全60巻)である。選者は徐光啓。農政と水利に関する技術や思想を集成した書である。全体の構成は、農本・田制・農事・水利・農器・樹芸・蚕桑・蚕桑広類・種殖・牧養・制造・荒政の12部門よりなり、それぞれ以下の内容に分かれている。
 
[1]農本門:経史典故・諸家雑論・国朝重農考、[2]田制門:井田考・歴代田制、[3]農事門:営冶・開墾・授時・占候、[4]水利門:総論・西北水利・東南水利・水利策・水利疏・灌漑図譜・利用図譜・泰西水法、[5]農器門:図譜4巻と解説、[6]樹芸門:穀部・?部・蔬部・果部、[7]蚕桑門:総論・栽桑法・蚕事図譜・桑事図譜・織?図譜、[8]蚕桑広類門:木綿・麻苧、[9]種殖門:総論・木部雑種、[10]牧養門:六畜・養魚・養蜂、[11]制造門:常需食品生産、[12]荒政門:備荒・救荒・本草・野菜譜。
 
 著者の徐光啓(嘉靖41年〜崇禎6年:1562〜1633)は、明時代の末に内閣大学士にまでなった政治家である。宣教師マテオ・リッチなどと親しく、自ら洗礼を受けてキリスト教に入信していた。「農政全書」は、徐光啓の死後1639年に刊行された。古来の農学書の諸説を12部門に分類・整理して記述した農政関係の総合書である。本書は農業および農政を考察する上の貴重な資料であるだけでなく、中国でそれまでに作成された農書の集大成としての性格ももっている。
 
 

生物多様性と生態系の働き:消費者(動物)との関係
 
Biodiversity and ecosystem function: the consumer connection
J. Emmett Duffy, OIKOS, 99, 201-219 (2002)
 
 農業環境技術研究所は、農業生態系における生物群集の構造と機能を明らかにして生態系機能を十分に発揮させるとともに、侵入・導入生物の生態系への影響を解明することによって、生態系のかく乱防止、生物多様性の保全など生物環境の安全を図っていくことを重要な目的の一つとしている。このため、農業生態系における生物環境の安全に関係する最新の文献情報を収集しているが、今回は、捕食者が生物多様性を変化させ、このことが生態系の機能(働き)を変化させ、生物の絶滅にも関係することを論じた総説の一部を紹介する。
 
要 約
 
 近年、生物多様性と生態系内の過程(物質の生産・分解や生物群集等の変動など)に関連があることが提唱され、強い関心と論争を呼んでいる。しかし、これまでの実験的な研究のほとんどは、草原の植物や実験室の水槽中の微生物系に注目したもので、動物の多様性の変化が生態系内の過程にどのように影響するかは、ほとんど注目されてこなかった。別の研究において、多くの生態系でトップダウンの強い力が働く(栄養段階が上位(食べる側)の生物が、下位(食べられる側)の生物に大きく影響する)ことは示されたが、生態系内の過程に対する多様性の役割についての考察は、ほとんどなかった。
 
 両方の研究領域における理解を深めるためには、この2つの研究方向を統合する必要がある。いくつかの考察では、多くの段階からなる食物連鎖系において多様性に変化がおこると、植物の多様性が変化する場合とは質的に異なる重大な影響が、生態系に生じる可能性が示されている。
 
 第1に、生物の絶滅は、栄養段階の影響を受けやすい。すなわち、上位の消費者である動物は、野生植物に比べて多様性が低く、個体数が少なく、より強い人為的圧力を受けているため、絶滅の可能性が高い。
 
 第2に、消費者は、植物とは異なり、その個体数に比べて大きな影響を生態系に与える。そのため、多様性の低下による初期の影響として、栄養段階的な構造がゆがむことが多く、これがトップダウンの影響を弱める可能性がある。
 
 第3に、捕食者が多いままで、より下位の栄養段階で多様性が低下した場合は、形質多様性の低下、および同じ栄養段階の生物種による補償能力の低下によって、捕食の影響の変化と栄養カスケード(食物連鎖の上位から下位へ玉突き現象のように影響が伝わること)の変化が生じるかもしれない。
 
 利用できる間接的証拠の多くは、この予測を支持している。だが、動物の多様性の変化が生態系機能の過程にどのように影響するかを確かめる実験は、ほとんど行われていない。生態系の機能への生物多様性の消失の影響を評価するためには、現在行われている実験研究の範囲を多段階の食物連鎖系に広げる必要がある。このような研究を実施し、とくに栄養カスケードの重要性を評価するという中心的な課題は、自然群集の中のどこに強い相互作用があり、それが群集構成とともにどのように変化するかを理解することである。現実の食物連鎖系のほとんどは、非常に複雑な構造を持っている。しかし、この複雑さが、総バイオマス(生物総現存量)や群集の構成に影響する強力で動的な結合に、どのようにかかわっているかはまったくわかっていない。
 
 最後に、現実の生態系から生物種が消失する過程について、さらに詳細なデータを得る必要がある(群集の「分解」の法則)。
 
 

本の紹介 123:地球白書2003−04
クリストファー・フレイヴィン編著、
エコ・フォーラム21世紀日本語版監修、家の光協会
(2003) ISBN4-259-54629-5

 
 
 編著者が、レスター・ブラウンからクリストファー・フレイヴィンにかわってから2冊目の「地球白書」である。問題の取り上げ方や内容の趣が、これまでの「地球白書」とは少し変わってきた。社会の変動がそうしたのか、編著者の個性がそうしたのか、あるいは両方の影響が現れたのかは、今後この「地球白書」が解答を与えてくれるであろう。
 
 例えば、新たに加わった「環境界の1年間の主要動向」では、類型化された概念の中で環境の問題点が時系列で摘出され、きわめて読みやすい。第1章「石器革命から環境革命へ、人類の進化を果たす」では、環境問題にかかわる現代人の苦悩と石器人の苦悩を重ねる。石器人も現代人も、技術的進歩を通して文化的な改革を引き起こそうとしているとみる。著者はまた、石器時代のイノベーションの創始者が行ったように、私たちの遠い子孫も、環境問題の解決によい案を提供するだろうと考えている。
 
 第2章の「自然と人間とを結び付ける鳥類を守る」では、鳥の安全を守り、絶滅を避けることが人類を守ることにつながることを具体的な例で証明する。環境の学問が、関係と関係の学問であることをさまざまな例で解説する。
 
 第8章の「大きなチャレンジ−宗教界と環境団体との協働」は、とくに印象的である。環境を守るには、宗教と科学の協力が必要である。「宗教性の欠如」と「科学性の欠如」といった、これまで両者が対立してきたものを、どう和解させるか。この章は、新たな世紀の新たな革新を予測させる。
 
 第1章の「人類が直面する課題」は、よくまとまっているので、その項目を列記しておく。
 世界の約12憶の人々が1日1ドル以下で暮らす/耕地の不足以上に深刻な水不足/攪乱される地球化学循環/化学肥料と化石燃料の燃焼による攪乱/過剰なリンと固定窒素がもたらす富栄養化/環境に放出される有害化学物質/目に見えぬところで広がる化学的危害/生物が汚染物質の貯蔵所になっていく/貿易拡大のもたらす外来種の脅威/世界が直面する広範な生態学的衰退/世界の漁場で乱獲が続いている。目次は以下の通りである。
 
はじめに/環境界の1年間の主要動向
第1章 石器革命から環境革命へ、人類の進化を果たす
 ◆ 人類が直面する課題
 ◆ 人類のイノベーション史に学び、果敢に取り組む
第2章 自然と人間とを結び付ける鳥類を守る
 ◆ 最大の脅威は人間の土地利用による生息地の消失
 ◆ 生息地が開発によって細分化され、繁殖が困難になっていく
 ◆ 生態系を破壊するさまざまな外来種
 ◆ 狩猟銃弾、鳥かご、釣り針、そして化学薬品
 ◆ 人類の快適なライフスタイルが、無意識のうちに気候変動などの脅威を
 ◆ 鳥類のため、人類のために直ちに取り組めること
第3章 途上国で生態系と共生する女性のエンパワーメント
 ◆ 人口と生物多様性の相互の関連性を考える
 ◆ なぜ女性の地位が問題なのか
 ◆ 求められる統合的対策
 ◆ 次の大改革をめざして
第4章 30秒ごとに子どもの命を奪うマラリアを撲滅する
 ◆ 拡大する現代の脅威−エイズを上回る死亡数
 ◆ マラリアの生活史と進化
 ◆ 撲滅を約束したが、現状はさほど改善されていない
 ◆ 環境と社会の変化がバランスを変える
 ◆ メキシコの取り組み−DDTを減らしていきついに脱DDT
 ◆ アフリカの挑戦
 ◆ 公衆衛生の改善と人々の雇用
第5章 政治の意思として新エネルギー革命を支援する
 ◆ 再生可能エネルギーへのさまざまなシフト
 ◆ 2003年時点での技術の現状
 ◆ 風力でも太陽光発電でも、もっとも先進的なドイツの国家エネルギー政策
 ◆ 世界から−成功した政策と失敗した政策
 ◆ エネルギーの未来の鍵を開ける
第6章 環境の21世紀、錬金術は金属リサイクル
 ◆ 世界の鉱物資源
 ◆ 鉱山が生態系や地域住民にもたらす大きな影響
 ◆ 鉱物資源依存型の国家経済は、なぜ発展しないか
 ◆ 将来世代のため、これ以上は掘らずにリサイクルを
第7章 スラム住民による、スラム住民のための改革
 ◆ 都市化の進む世界の貧困と無能な政府
 ◆ スラムの矛盾
 ◆ ブルドーザーによる強制退去から生活環境の改善へ
 ◆ 住民と職を保障する
 ◆ 自治体行政の開放
第8章 大きなチャレンジ−宗教界と環境団体との協働
 ◆ 宗教界の強大な影響力を動員する
 ◆ 相違点の認識と協力のための寛容さ
 ◆ 神聖な命題としての環境
 ◆ 暴走する大量消費と宗教および倫理
 ◆ 現実を直視して、積極的に「参加」し始める宗教界
 
 原注/さくいん/日本語版あとがき/ワールドウォッチ研究所の動き
 
 

本の紹介 124:新生物多様性国家戦略
環境省編、ぎょうせい
(2002) ISBN4-324-06902-6 C3036
 
 
 「新国家戦略」は、「生物多様性条約」および前回の国家戦略の第2次環境基本計画を受けて策定されたものである。これは、生物多様性の保全が人間生存の基盤に必要であるとともに、豊かな生活・文化・精神の基であることを認識し、これを持続的に維持することを目的としたものである。
 
 「新国家戦略」の対象は、陸域のみならず海域も対象に含んだ日本の国土全体である。また、一体として関連する限りにおいて、アジアの諸外国も分析の対象となる。「新国家戦略」は、狭義の生物多様性のみではなく、広義の生物多様性、すなわち自然環境とこれらに関する施策などの全般を論じたものとなっている。
 
 生物多様性の危機の現状やそれらに対する国民意識の向上や成熟を踏まえて、「新国家戦略」が示している大きな柱は、1)種の絶滅、湿地の減少、移入種問題などへの対応としての「保全の強化」、2)保全に加えて失われた自然をより積極的に再生、修復していく「自然再生」の提案、3)里地里山など多義的な空間における「持続可能な利用」、の3つである。また、前回の国家戦略の目標を再整理するとともに、目標を達成するための道筋、方向性を明らかにし、実効性のある具体的施策が展開されるように、対応の基本方針を提示している。
 
 「新国家戦略」は「第1部 生物多様性の現状と課題」、「第2部 生物多様性の保全及び持続可能な利用の理念と目標」、「第3部 生物多様性の保全及び持続可能な利用の基本方針」、「第4部具体的施策の展開」、「第5部 国家戦略の効果的実施」から構成されている。
 
前文
第1部 生物多様性の現状と課題
 第1章 生物多様性の危機の構造
  1 第1の危機/ 2 第2の危機/ 3 第3の危機
 第2章 現状分析
  第1節 社会経済状況の変化
1 主な社会経済の動向/ 2 国民意識、社会的意識の変化
  第2節 世界における日本の生物多様性
1 世界の生物多様性の概観/ 2 日本の生物多様性の特徴/ 3 日本の自然環境特性と生物多様性
  第3節 生物多様性の現状
1 生物種の現状/ 2 生態系の現状
  第4節 生物多様性に関連する制度の現状
1 自然環境保全に係る地域指定制度の概要/ 2 自然環境の保全に係る地域指定制度の現状
 
第2部 生物多様性の保全及び持続可能な利用の理念と目標
 第1章 5つの理念
1 人間生存の基盤/ 2 世代を超えた安全性・効率性の基礎/ 3 有用性の源泉/ 4 豊かな文化の根源/ 5 予防的順応的態度
 第2章 目標とグランドデザイン
  第1節 3つの目標
  第2節 国土空間における生物多様性のグランドデザイン
 
第3部 生物多様性の保全及び持続可能な利用の基本方針
 第1章 施策の基本的方向
  第1節 3つの方向
1 保全の強化/ 2 自然再生/ 3 持続可能な利用
  第2節 基本的視点
1 科学的認識/ 2 統合的アプローチ/ 3 知識の共有・参加/ 4 連携・共同/ 5 国際的認識
  第3節 生物多様性から見た国土の捉え方
1 生物多様性から見た国土の構造的把握/ 2 植生自然度別の配慮事項
 第2章 主要テーマ別の取扱方針
  第1節 重要地域の保全と生態的ネットワーク形成
  第2節 里地里山の保全と持続可能な利用
  第3節 湿原・干潟等湿地の保全
  第4節 自然の再生・修復
  第5節 野生生物の保護管理
1 種の絶滅の回避/ 2 猛禽類保護への対応/ 3 海棲動物の保護と管理/ 4 野生鳥獣の科学的・計画的な個体群管理システムの確立/ 5 移入種(外来種)問題への対応
  第6節 自然環境データの整備
  第7節 効果的な保全手法等
1 効果的保全のための様々な手法の活用/ 2 環境アセスメントの充実/ 3 国際的取組
 
第4部 具体的施策の展開
 第1章 国土の空間特性・土地利用に応じた施策
  第1節 森林・林業
基本的考え方/ 保全と持続可能な利用への取組/ 1 森林の有する多面的機能の発揮のための森林整備の推進に関する施策/ 2 森林によって供給される財とサービスの提供及び利用の確保に関する施策/ 3 国有林野における取組
  第2節 農地・農業
1 基本的考え方/ 2 環境保全型農業の推進/ 3 環境に配慮した農業農村の整備/ 4 農村の環境の保全と利用
  第3節 都市・公園緑地・道路
1 都市の現状認識と改善の方向/ 2 都市における生物多様性の確保の基本的な考え方/ 3 緑地の保全・創出に係る総合的な計画の策定/ 4 緑地の保全・創出に係る諸施策の推進/ 5 緑の保全・創出に係る普及啓発等/ 6 下水道事業における生物多様性の保全への取組
  第4節 河川・砂防・海岸
1 河川・砂防/ 2 海岸
  第5節 港湾・海洋
1 港湾/ 2 海洋
  第6節 漁業
1 基本的考え方/ 2 国際的な海洋生物資源の保全及び持続可能な利用/ 3 国内の海洋生物資源等の保全及び持続可能な利用/ 4 海洋環境等の保全
  第7節 自然環境保全地域・自然公園
1 自然環境保全法に基づく各種制度/ 2 自然環境保全に関する地方公共団体独自の保護地域制度等/ 3 自然公園法に基づく各種制度
  第8節 名勝・天然記念物
 第2章 横断的施策
  第1節 野生生物の保護と管理
1 絶滅のおそれのある種の保存/ 2 野生鳥獣の保護管理/ 3 移入種(外来種)等生態系への攪乱要因への対策/ 4 飼育栽培下における種の保存
  第2節 生物資源の持続可能な利用
1 生物資源の持続可能な利用/ 2 遺伝資源の保存と提供/ 3 遺伝子組換え生物の利用における安全性確保
  第3節 自然とのふれあい
1 基本的考え方/ 2 自然とのふれあいのための具体的施策
  第4節 動物愛護・管理
 第3章 基盤的施策
  第1節 生物多様性に関する調査研究・情報整備
1 調査研究の推進/ 2 情報整備の推進
  第2節 教育・学習、普及啓発及び人材育成
1 環境教育・環境学習/ 2 普及啓発/ 3 人材の育成
  第3節 経済的措置等
1 経済的助成/ 2 経済的負担/ 3 その他の経済的措置等
  第4節 国際的取組
1 生物多様性条約の下での取組/ 2 生物多様性関連諸条約との連携強化/ 3 国際的プログラムの推進/ 4 開発途上国への協力
 
第5部 国家戦略の効果的実施
1 実行体制と各主体の連携/ 2 各種計画との連携/ 3 国家戦略実施状況の点検と国家戦略の見直し
 
付 録
1 生物多様性国家戦略見直しの背景/ 2 懇談会、審議会の経緯・委員名簿/ 3 パブリックコメントの結果概要/ 4 「生物多様性」10年史/ 5 社会経済指標の推移/ 6 RDB種、保護区(自然環境保全地域、国立公園、国設鳥獣保護区)等に関するデータ/ 7 生物多様性保全に関する自然公園法改正の概要/ 8 移入種対策検討会の検討概要/ 9 生物多様性条約について/ 10 事項索引
 
 

本の紹介 125:The State of the Environment in Asia
2002/2003, Ed. Japan Environmental Council
Springer
(2003)ISBN 4-431-70345-4

 
 
 NGO版「アジア環境白書」シリーズの第一弾として、「アジア環境白書1997/98」(創刊)が世に送り出されたのは、1997年のことである。この白書はSpringer-Verlag 社から "The State of the Environment in Asia 1999/2000" と題して英語版で刊行された。
 
この本 "The State of the Environment in Asia 2002/2003" は、2000年に第二弾として刊行された「アジア環境白書2000/01」の英語版である。日本語版は、この「情報:農業と環境 No.9」の「本の紹介 25」ですでに紹介している。参考までに、英語の目次を以下に示す。
 
Contents
Foreword to the English-Language VersionForewordPrefaceEditors, Writers, Collaborators, and Assistants
 
Part I Asia by Theme
Chapter 1   Energy Policies and Choices Put to the Test
1.   Introduction
2.   Energy Consumption Trends
3.   Coal-Fired Thermal Development and the Environment
4.   Nuclear Power Development and Increased Risk
5.   Asia's Environmental and Energy Policy Outlook
Essay 1
 

 
Japan's Global Warming Mitigation Measures and the Campaign to Promote Nuclear Power
Essay 2   The Kyoto Protocol and North-South Equity
 
Chapter 2   Mining and Its Environmental Damage
1.   Introduction
2.   Nonferrous Metal Mine and Smelter Development in East Asia
3.   Japanese Involvement Throughout East Asia
4.   Environmental Impacts of Mining and Smelting
5.   Conclusion
Essay 1   Asian Mining Pollution and the Japanese Experience
Essay 2   Mercury Pollution on Mindanao, the Philippines
 
Chapter 3   Wandering Wastes
1.   Introduction
2.   Municipal Solid Wastes
3.   Industrial Waste
4.   Hazardous Wastes on the Move
5.   Achieving a Cyclical Society
Essay 1   South Korea's Action on Dioxins
Essay 2   Decommissioned Vessels Set Sail for the Developing World
Essay 3   Toxic Wastes Dumped in Cambodia
 
Chapter 4   Asia's Marine Environment Hangs in the Balance
1.   Introduction
2.   Marine Pollution
3.   Damage to Natural Resources
4.   Marine Conservation Initiatives
Essay 1
 

 
Little Progress on Fisheries Resource Management in Northeast Asian Waters
Essay 2   Shrimp and Mangroves
 
Chapter 5   Conservation and Local Self-Government
1.   Introduction: Why the Focus on Local Self-Government?
2.   Republic of Korea
3.   Thailand
4.   The Philippines
 
Part II Asia by Country and Region
Chapter 1   Republic of the Philippines
1.   Introduction
2.   Severe Deforestation
3.   Environmental Consequences of Economic Growth
4.   Development and Environment in the Cebu-Bohol Region
5.   Legal System for Natural Resource Use and Environmental Protection
6.   Conclusion: Getting the People Involved
 
Chapter 2   Socialist Republic of Vietnam
1.   Introduction: Doi Moi and the Environment
2.   Background
3.   Environmental Damage
4.   Factors that Impede Solutions
5.   Environmental Protection
6.   Summation: Vietnam's Challenge
Essay 1   Impacts of Dioxins on Human Health in Vietnam
Essay 2   Recycling in Hanoi
 
Chapter 3   India
1.   Introduction
2.   Current Environmental Problems
3.   Environmental Legislation, Administration, and Litigation
4.   The Environmental Movement Tradition
5.   Conclusion: Future Prospects
Essay 1   Bhopal Revisited
Essay 2   India's Air Pollution
 
Chapter 4   Country/Region Updates
Japan
1.   Environment Agency Becomes a Ministry
2.   New Environmental Legislation and Policy
3.   Pollution Litigation
Essay 1   Metropolitan Tokyo's Road Pricing Policy
Republic of Korea
1.   Environmental Policy since the Mid-1990s
2.   Bigger Roles and Responsibilities for Local Governments
3.   Development or Environment: Three Examples
Kingdom of Thailand
1.   Continuing Clash over Power Plant Projects
2.   Inland Prawn Farming
3.
 

 
Efforts to Amend the Enhancement and Conservation of National Environmental Quality Act of 1992
Essay 2   Renewed Environmental Quality Act of 1992
Malaysia
1.   Trends on Peninsular Malaysia
2.   Sabah and Sarawak States
Indonesia
1.   Forest Fires
2.   Impacts of Forest Fires
3.   Involving Local People
People's Republic of China
1.   Enforcement Actions and the Need for Social Cooperation
2.   Citizen Initiatives for the Environment
3.   New Developments in Japan-China Environmental Cooperation
Essay 3   China's Environmental Problems as Seen from the Republic of Korea
Essay 4   China's Environmental Business and Diplomacy
Taiwan
1.   Hazardous Waste Management
2.   Dam Construction and Opposition
3.   Kaohsiung's "Green Revolution"
Essay 5   Black-Faced Spoonbill Faces Extinction
Essay 6   Transportation and Air Pollution in Katmandu
 
Part III Indicators
1.   Income Differentials and Growing Consumption
2.   Industrial Safety and Health
3.   Health and Education
4.   Reproductive Health/Rights and Population
5.   The Late Starter's Advantage and Detrimental Legacies
6.   Biodiversity and Genetic Resources for Food and Agriculture
7.   Wood Production and Trade
8.   The State of Forest Resources
9.   Fishing Effort Increase and Marine Fisheries Resources
10.   Protected Areas
11.   The Asian Wildlife Trade as Revealed by Japan's Imports
12.   Biodiversity
13.   Rapid Urbanization
14.   Motorization Rolls On
15.   Expanding Mining Production and Damage
16.   Municipal and Hazardous Wastes
17.   Paper Recycling: The North-South Connection
18.   Water Environment in Crisis
19.   Nuclear Power Proliferation and Nuclear Weapons
20.   Global Warming Policies and Joint Implementation in East Asia
21.   Progress in Environmental Legislation
22.   Environmental NGOs
23.   Environmental Conventions and Agreements in Asia
 
NotesReferencesTranslator's AfterwordIndex
 
 

本の紹介 126:環境負荷を予測する
−モニタリングからモデリングへ−
長谷川周一・波多野隆介・岡崎正規編
博友社
(2002)ISBN4-8268-0188-2

 
 
 広辞苑には「モニタリング」の項はない。「モニター」の項を引くと、「機械などが正常な状態に保たれるように監視する装置。また、調整技術者。」とある。英和辞典の 「monitoring」は、形容詞で「モニターの」の意味である。広辞苑の「モデリング」の項は、「模型制作。彫刻で、肉付けを施すこと。絵画では陰影による丸みの効果を調節すること。肉付け。」とある。英和辞典の「modeling」は、「模型(塑像)制作。(絵画の)立体感表現:(彫刻)の量感表現。モデルの仕事(をすること)」とある。
 
 このように、モニタリングとモデリングがそう簡単な言葉でないためか、編集代表者は、次のような「序」を書いている。「モニタリングとはいろいろな使われ方をするが、本書では、自然の中の物質の濃度や移動を継続的に測定することを意味している。一方、モデリングとはある現象を支配する要因をモニタリングし、その結果とモデルを用いて現象の予測を行うことを意味している。」
 
 さらに、「モニタリングで最も良く知られているのは気象情報であり、天気予報や気象災害予報に使われている。また、河川の水位のモニタリングは利水や洪水に対する人の安全を意図している。いずれもモニタリングデータをモデルに入れ、予報、予測を行っている。」と、言及している。
 
 われわれは、環境が変動していることに気づいてから、いたるところで環境モニタリングを開始してきた。モニタリングそれ自体は監視であるから、これにより汚染などの実態が把握され、それが定量化されてきた。またモニタリングは、ある施策を実行したときに汚染状況が改善されるかどうかの実証試験として用いられてきた。一方では、地球環境の保全という視点からのモニタリングも行われてきた。
 
 このような中で、日本土壌肥料学会では1999年から3年間にわたり、モニタリングとモデリングに関するシンポジウムが開催されてきた。施肥や畜産による地下水を含めた水系の硝酸汚染が行政的にも重要な課題であったため、多くの研究者がこのシンポジウムに大きな関心を示した。
 
 本書は、シンポジウムでの講演に、土壌、環境分野におけるモニタリング、モデリング研究をいくつか追加し、これまでわが国で行われてきたモニタリング・モデリングを多角的な角度から取り上げ、現在の到達点をまとめたものである。
 
 なお、執筆者のうちの谷山一郎および林健太郎氏は当所の職員である。また、長谷川周一および藤井國博氏は元職員である。また、楊宗興氏は当所の元科学技術特別研究員である。
 目次は以下の通りである。
 
  序
1  土壌浸透水のモニタリングと予測
1 はじめに/2 どのようにモニタリングを実施するか/3 モデル化/4 おわりに
2  黒ボク露地畑における硝酸態窒素溶脱のモニタリング
1 はじめに/2 パンライシメータ法について/3 千葉県農業総合研究センターにおけるパンライシメータについて/4 黒ボク露地畑における関東ロームの堆積状況と深さ別の土壌物理性/5 黒ボク露地畑における浸透水の流動/6 各パンにおける塩素および硝酸態窒素の溶脱状況/7 小型パンライシメータによるモニタリング/8 おわりに
3  硝酸態窒素の土層内動態をモニタリングする
1 はじめに/2 硝酸態窒素の有効土層、作土層および作物の主要根域層での動態/3 簡易テンションフリーライシメータによる硝酸態窒素流出のモニタリング/4 硝酸態窒素の流出削減を目的とした深根性作物の活用/5 今後の課題
4  暗渠排水を利用した硝酸溶脱のモニタリングとモデリング
  灰色低地タマネギ畑におけるケーススタディー
1 はじめに/2 モニタリング方法/3 モニタリング結果/4 モニタリングからモデリング/5 おわりに
5  δ15N値を用いて窒素の流出起源を知る
1 はじめに/2 環境中のδ15N値/3 茶園での窒素動態とδ15N値/4 地下水の窒素汚染源の推定
6  畑地からの硝酸態窒素の流出を抑制する―草地緩衝帯の必要幅の算出―
1 はじめに/2 試験方法/3 結果と考察/4 要 約
7  畜産の盛んな農業集水域からの窒素流出
1 はじめに/2 ふん尿処理方法と水質調査地区/3 素堀り貯留池方式/4 堆肥・液肥化地区/5 草地地区/6 処理方法による排出等の違い/7 窒素濃度へ寄与する要因の考え方/8 水田除去機能付き窒素流出モデル
8  農林地からの土砂流出に伴なうリン流出をモニタリングする
1 はじめに/2 農林地からの土壌粒子の発生と移動/3 林地からの流出/4 畑地からの流出/5 水田からの流出/6 リン流出の危険度評価と対策/7 おわりに
9  生物圏におけるリンの動態―河川へのリン流出とその起源を探る―
1 はじめに/2 瀬戸内海におけるPの排出負荷と赤潮発生・漁業被害/3 世界のリン鉱石資源量とその寿命/4 生物圏におけるPの動態/5 土壌中におけるPの集積/6 土壌中Pの環境容量の把握とその増大/7 P負荷量の低域/8 農耕地土壌の保全(表土の流亡防止)/9 おわりに
10 水田におけるメタン放出をモニタリング・モデリングする
1 はじめに/2 モニタリング/3 モデリング/4 おわりに
11 土壌植物系における炭素循環モニタリング
1 はじめに/2 炭素循環物理過程/3 テセラにおける炭素循環モニタリング方法/4 苫小牧広葉樹テセラにおける炭素循環測定例/5 生態系純炭素固定量(NEP)/6 おわりに
12 森林への窒素負荷をモニタリングする
1 はじめに/2 森林をモニタリングする/3 モニタリングの方法/ 4 モニタリング結果/5 モデリングに向けて―今後の課題―
13 土壌微生物モニタリングの現状と問題点
1 はじめに/2 微生物分析手法の紹介/3 微生物モニタリングとその意義/4 微生物モニタリングの問題点と将来展望
14 水田での有機物分解における生物多様性の意味を考える
1 はじめに/2 微生物の土壌中での分布と活性/3 水田における有機物の分解と微生物活性の局在/Hot Spot/4 水田生態系各部位における微生物群集/5 水田土壌生態系における生物多様性/6 水田生態系への有機物負荷と微生物群集の応答/Hot Spotの微生物/7 水田生態系における有機物負荷
15 集水域系におけるNO発生モニタリングとモデリング
1 はじめに/2 施肥起源のNO発生における地下水圏の役割/3 拡散モデルにより示されるNOの放出過程/4 好気的地下水中での脱窒:地下水圏でのガス代謝の証拠/5 森林の窒素飽和とNO/6 水系でのNOの生成/おわりに
16 プランクトンと物質循環
1 海水中の栄養塩と分布/2 栄養塩とプランクトン種/3 プランクトン種と物質循環/4 高栄養塩・低クロロフィル海域/5 ケイ素と地球温暖化問題
17 地下水の硝酸性窒素、ふっ素、ほう素の環境基準を巡る最近の動向
1 はじめに/2 新環境基準物質に関する基準化の経緯/3 環境基準化後の行政の動向/4 おわりに
18 東京の酸性沈着―臨界負荷量を決める
1 酸性沈着とは/2 スクリーニングの重要性/3 臨界負荷量とは/4 臨界負荷量の算出方法/5 東京における土壌酸性化に伴う森林衰退の可能性のスクリーニング/6 まとめ
 索 引
 
 

研究、技術開発およびデモンストレーションのための個別計画
「欧州研究圏の統合、強化」(2002−2006)の決定
−その4−

 
 
 EU(欧州連合)は、20026月に欧州共同体研究・技術開発第6次枠組み計画(2002-2006)を決定した。さらに、この枠組み計画に示された「欧州共同体の研究の集中と統合」と「欧州研究圏の基盤の強化」について、欧州委員会による間接的な推進戦略を具体的に定めた「個別計画」が20029月に採択され、実施されている。
 
 ここでは、欧州官報に掲載された文書(OJ L 294, 20021029, 1-43ページ)、"Council Decision of 30 September 2002 adopting a specific programme for research, technological development and demonstration: 'Integrating and strengthening the European Research Area' (2002-2006)"(2002/834/EC) (研究、技術開発およびデモンストレーションのための個別計画「欧州研究圏の統合、強化」(2002-2006)を採択する2002930日の欧州連合理事会の決定):
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2002:294:0001:0043:EN:PDF (最新のURLに修正しました。2010年5月)
から、研究の優先テーマ領域のうち、「持続可能な開発、地球変動および生態系」と「知識基盤社会における市民と統治」に関する部分を仮訳して紹介する。仮訳するに当たって、不明な用語については、参考になる資料をウェブサイトから検索し、それらを基に訳した。これらの用語には*印を付け、参照した資料の中から、いくつかの資料を掲載した。また仮訳した内容が適切に表現されていない部分もあると思われるので、原文で確認していただきたい。
 
 なお、この決定の本文、および附則(個別計画)の前の部分は、「情報:農業と環境」の第37号(20035月)、第38号(20036月)、第39号(20037月):
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/mgzn037.html#03714
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/mgzn038.html#03815
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/mgzn039.html#03913
に紹介されているので、あわせてご覧いただきたい。
 
官報 L 29429/10/2002 P.0001-0043
研究、技術開発およびデモンストレーションのための個別計画
「欧州研究圏の統合、強化」(2002-2006年)を採択する
2002年9月30日の理事会決定
(部分)
 
... 持続可能な開発、地球変動*1および生態系
 
 持続可能な開発は欧州共同体の中心的な目的であることを、欧州共同体設立条約では確認している。これは、イエーテボリにおける欧州理事会*2で強調され、第6次環境行動計画をはじめとする持続可能な開発のためのEU戦略に反映されている。このようなことから、地球変動、エネルギーの安全保障、持続可能な輸送、欧州の天然資源の持続可能な管理、そしてこれらと人間活動との相互関係は、この研究優先テーマの提案理由になる。この優先テーマにおいて実施する活動は、その社会、経済および環境の側面を統合して、欧州が短期、長期において持続可能な開発モデルを実施するために科学技術的能力を強化することをめざし、そして現在の傾向を軽減あるいは、さらに逆転にさせるために、また地球変動を解明、抑制し、生態系の平衡を維持するために、国際的な取り組みにも重要な貢献をする。
 

*1: http://www.s-ws.net/tenki/pdf/49_05/p051_054.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://web.sfc.keio.ac.jp/~masudako/class/geoinfo/globenv/ (対応するページが見つかりません。2011年5月)
*2: http://jpn.cec.eu.int/japanese/press-info/4-2-18.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
 
.... 持続可能なエネルギーシステム
 
 この戦略目的は、温室効果ガスと汚染物質の排出削減、エネルギーの安定供給、再生可能エネルギーの利用・拡大に取り組むことであるが、欧州産業の競争力の強化を達成することについてももちろん取り組む。短期間にこれらの目的を達成するには、すでに開発中の技術の導入を促進し、そしてエネルギー効率の向上と、エネルギーシステムに再生可能エネルギーを組み込むことによって、エネルギー需要パターンや消費行動の変化を促進させる大がかりな研究の取り組みが必要である。持続可能な開発を長期的に行うには、経済的に魅力があり、利用可能なエネルギーを確保し、また更新可能なエネルギー源、新たなエネルギー媒体(carrier*1、および本質的に汚染のない水素や燃料電池などの技術を採用するために起こりうる障害を克服する主要なRTDの取り組みも必要である。

*1: http://energy.coe21.kyoto-u.ac.jp/koho/koho01_09_01.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
研究の優先項目
 
(i) 短中期で効果のある研究活動
 
 欧州共同体のRTD活動は、エネルギー分野の新たな法律的手段の実行を支援し、とくに都市の環境における消費者と利用者の行動に明らかに影響する新たな技術的解決策を与えることによって、輸入化石燃料への依存度の増大、上昇し続けるエネルギー需要、輸送システムの混雑の増加およびCO排出量の増加という、現在の持続不可能な開発のパターンをはっきりと変えることができる極めて重要な手段になる。
 
 目標は、革新的で、価格競争可能な技術的解決策を市場をめざしたデモンストレーションとその他の研究活動によって、できるだけ早く市場に提示することであり、これらの活動では、試行的環境において消費者と利用者が参加し、また、技術的問題ばかりでなく、組織的、制度的、財政的そして社会的な問題にも取り組む。
 
汚染のないエネルギー、とくに再生可能エネルギー源、および貯蔵、配給、利用を含むエネルギー・システムへのこれらの統合。
 
たとえば、再生可能エネルギーの供給割合が高い「持続可能な共同体」の設立に取り組む利害関係者を支援することによって、改善された再生可能エネルギー技術を市場に導入し、再生可能エネルギーをネットワークやサプライチェーン*1として統合することがねらいである。このような活動では、「グリーン電力*2」、熱、あるいは生物燃料、そして従来の大規模なエネルギーの配給との組合せを含め、エネルギーの配給ネットワークやサプライチェーンにこれらのエネルギーを統合するための革新的技術あるいは改良技術の方法と社会・経済的方法またはその一方を取り入れる。
 
研究は、次のことに重点をおく: 主要な新エネルギー(new and renewable energy*3源の費用効果、成績および信頼性の向上; 再生可能エネルギーの統合、分散型エネルギー源*4とより清浄な従来の大規模発電の効果的な組合せ;エネルギーの貯蔵、配給および使用のための新たな構想の検証。
 

*1: http://premium.nikkeibp.co.jp/crm/glossary/scm.shtml (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://interstage.fujitsu.com/jp/word/jp.html (対応するページが見つかりません。2011年1月)
*2: http://www.natural-e.co.jp/pdf/dai3_03.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*3: http://www.eic.or.jp/term/syosai.php3?serial=255 (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*4:  http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt025j/0304_03_feature_articles/200304_fa02/200304_fa02.html (対応するURLが見つかりません。2012年8月)
     http://www.pref.ehime.jp/050keizairoudou/200kigyouricchi/00002564030319/52s0209062e.pdf (対応するURLが見つかりません。2014年12月)

 
再生可能な原料の利用によって達成できるものを含む、省エネルギーとエネルギー効率。
 
欧州共同体全体の目的は、気候変動に取り組み、エネルギーの安定供給を高めるというEUの公約を達成することに貢献するために、2010年までにエネルギー需要を18%削減することである。研究活動は、省エネルギーになり、環境の質のほかに居住者の生活の質もまた向上させるために、とくにエコ・ビルディング(Eco-Buildings*1に重点をおく。「複合発電(Polygeneration*2」事業では、EU発電の熱電併給量(CHP*3の割合を2010年までに9%から18%に倍増するという欧州共同体の目標に貢献し、燃料電池など新たな技術を用いて、電気、冷暖房供給の同時生産の効率を向上させ、新エネルギー源に統合するだろう。
 
研究は、次のことに重点をおく: 熱電複合システムや地域冷暖房システムなどの新たな構想や技術の最適化および実証によって、おもに都市環境で、とくに建造物内のエネルギーの節減と効率を向上させること; 建造物内のエネルギー効率を向上させるために、再生可能エネルギーをその現場で生産し、利用する時機。
 

*1: http://www-iam.nies.go.jp/impact/7/7-2-2.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*2: http://www.nedo.go.jp/iinkai/singi/shindenryoku/2/5.pdf (対応するページが見つかりません。2011年5月)   (p.9参照)
*3:  (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/qa/00/sin-ene/03-018.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
自動車用代替燃料
 
欧州委員会は、2020年までに道路輸送部門におけるディーゼルやガソリン燃料の20%を代替燃料によって置き換えるという高い目標を設定した。目的は輸入液体炭化水素への依存を減らすことによって、エネルギーの安全供給を向上させ、輸送による温室効果ガス排出の問題に取り組むことである。道路輸送用代替燃料に関する文書に従って、短期のRTDでは、かなりの市場割合を占める可能性がある生物燃料、天然ガスおよび水素の3種の代替自動車燃料に集中する。
 
研究は、次のことに重点をおく: 代替自動車燃料*1を輸送システム、とくに汚染のない都市輸送に組み込む; 代替自動車燃料の、費用対効率が高く、安全な生産、貯蔵および配給(燃料供給施設を含む); エネルギー効率のよい乗り物という新たな構想における、代替燃料の最適利用; 代替自動車燃料についての市場移行手続きを管理するための方策とツール。
 

*1: http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/foreigninfo/html9912/12119.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
(ii) 中長期で効果のある研究活動
 
 水素*1は購入しやすく汚染がなく、また定置型の装置と輸送用の装置の両方の関連で、長期的に持続可能なエネルギーの供給と需要に十分に組入むことが可能な新たなエネルギー媒体であり、中長期の目的では、新エネルギー源とこのような新たなエネルギー媒体を開発する。さらに、化石燃料を使用し続けると、近い将来、COを処分するための費用効率のよい解決法が必要になる。目標は、京都議定書の最終期限2010年以降の温室効果ガス排出量のさらなる削減を提示することである*2。これらの技術が将来、大規模に発展するか否かは、それらを導入する社会・経済全体と制度との関係から、経費と従来のエネルギー源との競争力のその他の面が、明らかに改善されるか否かにかかっている。
 

*1: http://www.eguchi-lab.ehcc.kyoto-u.ac.jp/coremoval-j.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*2: http://www.mhi.co.jp/tech/pdf/401/401008.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
燃料電池*1とその応用装置: 燃料電池は、効率が高く、汚染水準が低く、低コストの見込みがあるので、長期的には、工業、建造物および道路輸送における現行の燃焼システムの大部分を取って代わることが期待される先端技術の代表である。長期的コスト目標は、道路輸送では50ユーロ/kW、耐久性の高い定置型の装置や燃料電池/電気分解装置では300ユーロ/kWである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 燃料電池の生産と、建造物用、輸送用および分散型発電用*2の装置のコスト削減; これらの装置のための低温型と高温型の燃料電池に関係する先端材料。
 

*1: http://www.fcdic.com/ja/cell.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://www.paj.gr.jp/html/fuelcell/ (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*2: http://eco.goo.ne.jp/ecoword/files/word/487.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
エネルギーの媒体/輸送と貯蔵のための新技術、とくに水素について*1 ねらいは水素と汚染のない電気が主要なエネルギー媒体とみなされるような長期に持続可能なエネルギー供給の新たな構想を開発することである。H(水素ガス)については、従来の燃料と同等のコストでの安全な使用を確保するための方法を開発しなければならない。電気については、安全で信頼できる、高品質の電気を供給するために、分散型の新規エネルギー源、とくに再生可能なエネルギー源を相互に結合した欧州、地域および地方の配電ネットワークにもっとも適切になるように統合しなければならない。
 
研究は、次のことに重点をおく: 汚染のない費用対効果の高い水素の生産; 輸送、配給、貯蔵および利用を含む、水素の基本施設*2 電気について、電力供給と配電の分析、計画、制御および監視のための新たな構想、ならびに貯蔵、双方向送電と配電ネットワークを可能にする技術を重視する。
 

*1: http://www.enaa.or.jp/WE-NET/newinfo/h2station_j.html
    http://www.enaa.or.jp/WE-NET/suiso/suiso2_j.html
*2: http://www.jsme.or.jp/publish/kaisi/021102t.pdf

 
再生可能エネルギー技術に関する最先端構想: 再生可能エネルギー技術は、長期的には、世界とEUのエネルギー供給に大きく貢献する可能性がある。とくに、高い投資費用という重要な支障を克服し、これらの技術が従来の燃料に負けないようにするために、欧州の高付加価値のある活動によって、未来エネルギーとしての可能性があり、そして長期研究が必要な技術を重視する。
 
研究は、次のことに重点をおく: 太陽電池(photovoltaic*1について: 基本的材料から太陽光発電システム*2までの生産チェーン全体、ならびに他に居住環境内と百万ワット規模の発電用大規模太陽光発電システムの中に太陽電池を組み込む。バイオマスについては、バイオマスの供給−利用経路の支障は、次の領域で取り組む: 発電とH/合成ガス生産のための生産、燃焼技術、ガス化技術、および輸送用生物燃料。再生可能な技術における最先端の構想をもった他の領域について、取り組みは、長期研究を必要とするRTD活動の具体的な各側面を欧州レベルで統合することに重点をおく。
 

*1: http://rnnnews.jp/category/pg/print.php?ch=30
*2: http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2002/pr20020822/pr20020822.html

 
汚染のない火力発電所に関連する、COの回収*1と隔離*2 持続可能なエネルギー供給シナリオの中に化石燃料の使用を含めるためには、COの費用効果の高い回収と隔離が必須である。そのため90%以上の回収率で、COのトン当たりコストを、中期的に30ユーロ程度に、長期的には20ユーロ以下に下げる。
 
研究は、次のことに重点をおく: エネルギー変換システム、低コストのCO分離システム*3、燃焼前のみならず燃焼後のシステムのほかに含酸素燃料(oxyfuel)の使用および新たな構想に基づき化石燃料の排出物をゼロに近づける全体的取り組みを開発する; 安全で費用効率が高い、環境に悪影響がないCO処理方法、とくに地層貯蔵法*4の開発、および資源としてのCOの化学的貯蔵と革新的な利用の将来性を評価するための探索的活動。
 

*1: http://www.mhi.co.jp/power/techno/co2/ (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*2: http://www.rccre.titech.ac.jp/co2_e.html
*3: http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/nenshi/3color/1999_2000/jigyo/12chikan3.html (対応するページが見つかりません。2011年5月)
*4: http://gispri.or.jp/kankyo/ipcc/pdf/20_PLENARYissues.PDF
    http://www.nedo.go.jp/iinkai/hyouka/bunkakai/14h/6/1/7.pdf (対応するページが見つかりません。2011年5月)

 
.... 持続可能な水陸輸送(surface transport(6)
 
 白書:「2010年の欧州輸送政策:決定のとき」では、1998年を基準にして、欧州連合における2010年の輸送需要の成長を貨物輸送で38%、乗客輸送で24%と予測している。すでに過密な輸送ネットワークは、この交通増加量を受け入れなければならず、また、傾向としては、持続可能性の低い方式によって受け入れる割合が増大しそうである。したがって、目的は交通渋滞と戦うことのみならず、このような傾向を減速、あるいは逆転させることである。そのためには、いろいろな輸送方式の統合と再調和をさらに強化することによって、交通手段の割合(modal split*1を評価し、これらの輸送方式の安全性、能力、および効率性を向上させ、環境への影響を最小限にし、真に持続可能な欧州輸送システムの開発を確かなものにし、さらに欧州産業が交通手段とシステムの製作と運行において競争力を維持することである。
 

(6) 「水陸輸送」は、道路、鉄道と水上輸送の輸送を対象に解明し;水上輸送とは、海と内陸の水路輸送を対象にする。
*1: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/00-34/murakami.htm
(3)公共交通の項

 
研究の優先項目
 
(i) 環境に配慮した競争力のある輸送システムと輸送手段の開発。目的は、水陸輸送(鉄道、道路、水上輸送)がCO排出や騒音をはじめとするその他の環境的に危険な排出を助長することを抑制する一方、車両と船舶の安全性、快適性、質、費用効果、およびエネルギー効率を高めることである。汚染のない都市輸送と都市での車の合理的な利用を重視する。
 
すべての水陸輸送方式(道路、鉄道、水上輸送)についての新技術と構想。
研究は、次のことに重点をおく: 燃料供給施設を考慮した、代替燃料と再生可能な燃料を基盤とした効率の高い推進装置システムとそれらの構成要素; 排出物がゼロあるいはゼロに近い推進装置システムとそれらの構成要素の開発、とくに燃料電池、水素エンジン*1、およびこれらの燃料供給施設を統合した輸送システム; 汚染のない都市輸送と都市地域の車の合理的利用のための統合的構想。
 
先端的な設計と生産技術。
研究は、次のことに重点をおく: とくに、環境に配慮した車両(車と鉄道)および船舶の特性、安全性、再利用性、快適性および費用効果によって、競争力の向上に結びつく特化生産環境のための、「特定の輸送用」の先端的な設計と生産の技術。
 

*1: http://release.jama.or.jp/sys/news/detail.pl?item_id=166

 
(ii) 効率と競争力の高い鉄道と海上輸送にすること。目的は、輸送の需要と、輸送方式を再び均衡を図る必要性を考慮して、乗客と貨物の輸送を確実なものにする一方、欧州輸送政策の2010年目標に沿って、輸送の安全性を高めることである(たとえば、道路輸送の目標は、死亡者数を半減にすることである)。
 
さまざまな輸送方式を再び均衡させ、統合化すること
研究は、次のことに重点をおく: 輸送ネットワークの相互接続性*1が可能であり、とくに競争力のある欧州鉄道システムならびに欧州船舶交通情報システムの統合化を可能にする相互運用輸送システム; 複合一環輸送*2サービス、技術(たとえば、ユニットロード*3の調和を図る技術)とシステム、および高度モビリティ管理*4と輸送ロジスティック*5
 
道路、鉄道、および水上輸送の安全性の向上と、交通渋滞の回避。
研究は、次のことに重点をおく: 道路の安全性を高め、海の安全性を高める方策と技術; 人と車両、車両と車両、および車両と施設の間の先端的な相互作用のための構想とシステム; 衛星航法の応用、新たなタイプの乗り物、および輸送能力と安全性の高める一方、環境(とくに都市とぜい弱地域)に配慮するための運用方法を含む高機能の輸送システム*6のための大規模な統合と検証プラットホーム(輸送価格の設定、輸送と交通の管理、および輸送情報など)。
 

*1: http://www.rcs.nilim.go.jp/rcs/rcs-j/main7-1.htm (対応するページが見つかりません。2015年8月)
*2: http://www.pa.cgr.mlit.go.jp/uno/port/word/h09.htm
    http://lavender.system.nitech.ac.jp/cgi-bin/rl_termn.cgi?_i (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*3: http://itp.ne.jp/topics/btob/logistics/yougo/list_ya.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*4:  http://dictionary.rbbtoday.com/Details/term1781.html (対応するページが見つかりません。2012年8月)
*5: http://www.ohta.is.uec.ac.jp/~hikaru/dict/LOGISTICS.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://www.glnet.co.jp/html/yougo1.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*6: http://dbsv.nies.go.jp/infoterra/J/cate190.html (対応するページが見つかりません。2015年4月)

 
.... 地球変動と生態系
 
 地球変動は、地球システム(すなわち大気、海洋と陸地)の物理、化学、生物的構成要素、とくに人間活動の影響を受けたこれらの要素に対して、さまざまな時間尺度で複雑で動的な変化をもたらしている。この優先領域の目的は、以下の通りである。
 
(i) 関連する国際研究計画と密接に連携して、また京都議定書やモントリオール議定書など、関連条約との関係から、地球変動を解明、検出、予測するための能力を強化し、防止、軽減、適応する戦略を開発する;
 
(ii) 生態系を保護し、陸地と海洋の資源の持続可能な利用にも貢献する生物多様性を保護する。地球変動に関しては、農業生態系と森林生態系の一体的で持続可能な管理戦略が、これらの生態系を保護するためにとくに重要であり、欧州の持続可能な開発に大いに貢献するだろう。これらの目的は、世界のすべての国と地域に対する地球変動の影響はもとより、環境的、経済的および社会的側面を考慮に入れて、持続可能な開発を実施するために必要な共通の一貫した取り組みを開発するための活動によってもっともよく達成されるだろう。これは、持続可能性*1の閾値とその推定法の共通の定義に関する欧州と各国の研究の取り組みの一致を育成し、また地球変動問題に対応するための共通戦略を達成するための国際協力を促進する。
 

*1: http://news-sv.aij.or.jp/tkankyo/s0/sc06b09.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://www.ecology.or.jp/member/susbiz/0112.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
     http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2003_gc00001/slides/08/7.htmlhttp (対応するページが見つかりません。20104年12月)
    http://www.herbist.co.jp/column/column001.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://www.gispri.or.jp/newsletter/1995/9507-3.html

 
研究の優先項目
 
気候、オゾン層破壊および炭素吸収源(sinks)(海洋と陸水、森林および土壌)に対する温室効果ガス排出と大気の汚染物質の影響とメカニズム。目的は、エネルギー供給、輸送および農業によるものを含む、すべての発生源からの温室効果ガスの排出と大気汚染物質に関連する地球変動の経過を検出、記録し、それらの地球規模および地域的な影響の予測、評価を向上させ、緩和(mitigation*1措置を評価し、地球変動研究のための施設とプラットホームへの欧州の研究者の利用を強化することである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 炭素循環と窒素循環の変化の解明と定量化; 温室効果ガスと大気汚染物質のすべての発生源と生物圏における吸収源の機能; それらが気候の長期的変化と変動*2、海洋と大気の化学性、およびそれらの間の相互作用に及ぼす影響; 今後の成層圏オゾン濃度と紫外線放射*3 地球規模の気候変動とその影響の予測; 関連する現象(北大西洋振動、エルニーニョ現象と海水面と海洋循環の変化); そして緩和措置と適応措置。
 

*1: http://www.gispri.or.jp/kankyo/unfccc/sb18sokuhou2.html
*2: http://www.jamstec.go.jp/forsgc/jp/plan/yougo.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*3: http://www.nasda.go.jp/lib/abbr/abbr-u_j.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
水循環(土壌に関連する側面も含む): 目的は、水循環のメカニズムを解明し、水循環、水質および利用可能性に及ぼす地球変動、とくに気候変動の影響を評価することであるが、この影響を軽減する水システム管理ツールの基礎となる土壌の機能と特性についても同様に評価する。
 
研究は、次のことに重点をおく: 水文学的循環の構成要素(陸地/海洋/大気の相互作用、地下水/地表水の分布、淡水と湿原生態系、土壌の機能、および水質)に及ぼす気候変動の影響; 地球変動に対する水/土壌システムのぜい弱性の評価; 管理戦略、それらの影響、および緩和技術; 水の需要と利用可能性のシナリオ。
 
生物多様性と生態系: 目的は、海洋と陸域の生物多様性、および生態系の機能をさらによく解明し、これらに及ぼす人間活動の負荷を解明し、最小限にし、遺伝資源の保護はもとより、天然資源、および陸域生態系や海洋(淡水域を含む)生態系の持続可能な管理を保証することである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 生態系における生物多様性、構造、機能、動態、およびそれらの貢献の変化を評価、予測すると同時に、海洋生態系の機能を重視する; 社会、経済、生物多様性および生息地の間の関係; 生態系の機能と生物多様性に影響する誘導要因の総合的評価と緩和措置; 陸域生態系と海洋生態系に関するリスクアセスメント、管理、保全および修復方法。
 
砂漠化と自然災害のメカニズム: 目的は、リスクと影響の評価、予測、および意志決定支援方法を改善するために、砂漠化と自然災害(地震活動や火山活動を原因とするものなど)のメカニズムを、気候変動とこれらとの関連を含めて解明することである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 欧州における陸地/土壌の劣化と砂漠化の大規模な総合評価、および関連する防止と緩和の方策; 水文地質学的な災害(hazard)の長期予測; 自然災害*1のモニタリング、マッピングおよび管理方策; 災害への備えと軽減の強化。
 

*1: http://www5e.biglobe.ne.jp/~o10kiya/cwfas/dic_je.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
沿岸地域、農地と森林を含む持続可能な土地管理方策: 目的は、経済、社会および環境の各レベルで、持続可能な開発を確保するために、沿岸域、農地、および森林に重点をおいた陸地の持続可能な土地利用の方策とツールの開発に貢献することであり、この貢献の中には、農業資源と森林資源の多目的利用*1と林業−木材統合チェーン*1の統合化構想が含まれる。農業と林業の多面的機能の質的および量的な面に取り組む。
 
研究は、次のことに重点をおく: 総合的沿岸域管理計画(ICZM*2のために必要なツールの開発; 農業と林業のさまざまな生産システムのもとでの正、負の外部性*3の評価; 地域的特異性を考慮した、持続可能な森林管理方策の開発; 森林資源と農業資源の持続可能な管理および多目的利用の方策と構想; 林業/木材統合チェーンの中での、環境に配慮した新たな製法とリサイクル技術の費用効果。
 

*1: http://rockfor.grenoble.cemagref.fr/texte/a1intro.htm (最新のURLに修正しました。2010年5月)
    http://www.nf-2000.org/secure/FP5/S1214.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*2: http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/d025/D025.pdf (最新のURLに修正しました。2010年5月)
6.5の総合的沿岸地域管理計画の項
*3: http://web.kyoto-inet.or.jp/people/fukucome/eco.html
    http://www3.toyama-u.ac.jp/~iwata/Micro10(2002).pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
全球気候変動観測システムをはじめとする実用的予測とモデリング: 目的は、海洋、陸地、および大気の環境の予測を改善し、モデル化のための長期観測を強化し、とくに予測では、共通の欧州データベースを定着させ、国際的な計画に貢献するために、大気、陸地および海洋のパラメータを気候のパラメータを含めて組織的に観測することである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 地球変動研究と管理戦略のために必要な海洋、陸地および大気の基本的なパラメータと異常現象の観測; 大規模な観測/モニタリング/調査/実用的予測/モデル化のネットワーク(GMESの開発を考慮し、地球観測システムG3OS(7)、*1に欧州の諸元を提供する)
 

(7) 地球観測システム(全球気候観測システム(GCOS)、全球海洋観測システム(GOOS)、全球陸上観測システム(GTOS)
*1: http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/wssd/type_2/1_3_1.html

 
補足的研究は、次のことに重点をおく: 手続き、技術、手段および政策のリスクアセスメントのための先端的な方法、住民の健康と環境条件についての信頼性の高い指標を含む環境の質の査定、および屋内外の暴露に関するリスク評価の開発。これらの目的のための測定法と検査法についての関連する前標準化研究*1も必要であろう。
 

*1: http://www.jetroge.ch/Std/stdtp970302.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g10824gj.pdf   のp.6参照

 
 このテーマ別優先領域で実施される研究活動は、このなかの一つまたは複数の項目と密接に関連する問題についての最先端知識のシーズ研究が含まれる。二つの補完的取り組みを利用する: 一方は適時に受け入れ、広範囲の研究活動であり、他方は先取りした研究活動である。
 
 
... 知識基盤社会*1における市民と統治(governance*2
 
 リスボン欧州理事会では、欧州の知識基盤社会への移行が、人々の生活のすべての面に影響を及ぼすことが確認された*3。全体的な目的は、この移行管理のために不備のない知識ベースを提供することであるが、この移行管理には、市民個人、家族や他の社会単位が十分な情報を得た上で意思決定することはもとより、国、地域と地方の政策、計画および活動が必要条件になる。
 
 これらの課題および関係する問題は、複雑で、幅が広く、相互に依存しているので、用いる研究手法は、研究統合の大幅な強化、複合領域的、超領域的(transdisciplinary*4な協力、およびそれらに取り組む欧州の社会科学と人文科学の研究集団の動員(mobilisation*5に基づかなければならない。活動は、社会科学と人文科学の研究から生じる中・長期の社会的課題の認識も促進し、主要な社会的利害関係者の積極的参加と、研究の実施で目標とした成果の普及を確かなものにするだろう。
国を超えた学際的比較研究の発展を支援する一方、同時に、欧州全域にわたって、調査法の多様性を維持するために 、とくに欧州の段階で台頭しつつある知識社会に関連する、本当に間違いなく比較可能なデータの収集・分析、および統計値や定性・定量的な指標の共同開発が不可欠である。
 
 各個別計画を横断する社会・経済的研究と予測調査の適切な調整を保証する。
 

*1: http://homepage3.nifty.com/hamachan/shahoshinpo1.html
*2: http://www.diplo.jp/articles01/0106-5.html
*3: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/lisboa.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*4: http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/17htm/1766-1z.html#2-1-3 (最新のURLに修正しました。2010年5月)
213 内在的契機:学術の状況と自己革新の胎動 の項)
*5: http://www2.kokugakuin.ac.jp/~ogiso/research/sio76.html

 
研究の優先項目
 
(i) 知識基盤社会と社会的結束*1
 
 欧州の知識社会を構築することが、欧州共同体の明確な行政上の目的の一つになっている。この研究のねらいは、知識社会の構築が欧州の個別条件と理想とが一致するように行われることを保証するのに必要な理解の根拠を提供することである。
 

*1:  http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/kouzou_s.html (対応するページが見つかりません。2012年8月)

 
知識の生成、伝達および利用の向上、および経済・社会の発展に及ぼす影響。目的は、公的財産ならびに私有財産としての知識の特性とその機能の理解を著しく向上させ、政策の立案と意思決定の根拠を与えることである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 経済・社会に関連する知識の特性とその機能化、ならびに技術革新や起業の活動; 経済と社会の制度の転換; 知識の生産、伝達と利用のダイナミックス、知識のコード化*1の役割、および情報通信技術*2の影響; これらの過程における地域的構造と社会的ネットワークの重要性。
 

*1: http://www.asahi-net.or.jp/~zj7t-fji/b20001020.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://www.freeml.com/message/it-doc@freeml.com/0000019 (対応するページが見つかりません。2010年5月)
*2: http://www.ciaj.or.jp/content/info/forlum/pdf/02.11.22.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)  p.1参照
    http://members.jcom.home.ne.jp/yojitan/010328w.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
知識基盤社会の発展のための方法とその種類。目的は、知識基盤社会がリスボン・サミット*1とその後の欧州理事会で示された、欧州の中の社会モデルの多様性を尊重し、また人口の高齢化にかかわる面を考慮して、持続可能な開発、社会的、地域的結束力および生活の質を高めるという、EUの社会活動の目的をどのように促進できるかについて、統合した理解を育成することである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 欧州の社会モデルに一致した知識基盤社会の特徴と生活の質を向上させる要求; 社会的・地域的結束、性や世代の間の関係、および社会的ネットワーク; 仕事および雇用の変化と労働市場との関係; 教育、研修および生涯教育。
 

*1: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/keyword.html#r
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/lisboa.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
知識社会へのさまざまな経路。目的は、欧州を横断した比較研究と、これによって国と地域の段階における知識社会への移行戦略の立案と実施の基盤を提供することである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 収れん*1圧力に関連するグローバリゼーション; 地域的変異の影響; 文化の違いと、知識資源の増大に由来する欧州社会の課題; これに関連するメディアの役割。
 

*1: http://www.rieti.go.jp/users/economics-review/03001.pdf (対応するページが見つかりません。2012年8月) のp.7参照

 
(ii) 市民権、民主主義および新たな形態の統治
 
 仕事は、とくに統合の強化とグローバリゼーションの関連から、また歴史と文化的遺産の視点から、統治と市民権の変化に影響する主要な要因を明らかにすることであるが、これらの変化の影響、そして民主的統治の促進、紛争の解決、人権の保護、および文化の多様性と多様な独自性を考慮するために、考えられる選択肢についても、同様に明らかにする。
 
統治と市民に及ぼす欧州の統合と拡大*1の影響。目的は、欧州の統合・拡大、民主主義、制度の整備および市民の福利に関する問題との間の主要な相互作用を明らかにすることである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 歴史的展開の関連の中で、比較研究の視点による、統合、拡大、および制度変化の関係; 世界の状況の変化の影響と欧州の役割; 市民の福利にとっての欧州連合拡大の影響。
 

*1: http://www.euinjapan.jp/union/enlargement/ (最新のURLに修正しました。2012年8月)

 
責任の領域の結合(articulation*1と統治の新たな形態。目的は、統合と拡大などの社会の変化に対処し、政策決定の有効性*2と正当性*2を保証するため、責任があり、合法的であり、そして十分に頑強で柔軟でもある多次元的ネットワーク・ガバナンス*3の形態の発展を支援することである。
 
研究は、次のことに重点をおく: さまざまな地域レベルの間、および公共部門と民間部門の間の責任の結合; 民主的統治、代表機関と市民社会組織の役割; 民営化、公共の利益、新たな規制に対する取り組み、企業統治; 法制度の影響。
 

*1: http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~ito/works/socioa/socio70.htm (最新のURLに修正しました。2010年5月)
*2: http://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/1455/ (最新のURLに修正しました。2015年8月)
新千年紀に向かって−明日の国連
*3: http://koho.osaka-cu.ac.jp/vuniv2000/nakamura2000/nakamura2000-8.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://lib.s.kaiyodai.ac.jp/library/kiyou/ron3703.pdf (最新のURLに修正しました。2010年5月)

 
紛争の解決と平和と公正の回復と関連がある課題。目的は、紛争解決の分野における制度的・社会的能力の開発を支援し、紛争防止の成功あるいは失敗に結びつく要因を特定し、紛争調停のためによりよい選択肢を開発することである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 国内と国家間の紛争に結びつく要因の早期の特定; 紛争の防止と調停、および基本権の保護をはじめとするさまざまな分野における公正の達成のための手続きの比較分析; これらの点における地域的および国際的な活躍の場での欧州の役割。
 
市民権と文化的独自性の新たな形態。目的は、欧州の政策決定に市民の関与と参加を促進し、欧州の市民権と人権に関する規定への認識と影響を解明し、社会的流動性と多様な独自性の共存を可能にする要因を明らかにことである。
 
研究は、次のことに重点をおく: 非市民の権利など、市民権の新たな形態間の関係; 寛容、人権、人種差別と自国中心主義; 欧州の公共圏(public sphere*1の発展におけるメディアの役割; 人口の流れを考慮した、欧州における文化やその他の多様性に関わる市民権と独自性の展開; 欧州の民族間の、そして欧州以外の民族との社会的、文化的な対話; 欧州の知識基盤社会の発展の影響。
 

*1:  (対応するページが見つかりません。2010年5月)
    http://juria.law.kyushu-u.ac.jp/~itlepp/sympo/markabstj.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
 このテーマ別優先領域で実施される研究活動は、このなかの一つまたは複数の項目と密接に関連する問題についての最先端知識のシーズ研究が含まれる。二つの補完的取り組みを利用する: 一方は適時に受け入れ、広範囲の研究活動であり、他方は先取りした研究活動である。
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目次 索引 農業環境技術研究所