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ここに注目 - イネゲノムと未来 - 未来を切り拓くお米のチカラ - 新農業展開ゲノムプロジェクト

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ここに注目

ギャバをたくさん含む健康機能性を高めたお米の開発

2009年8月7日

近年、肥満、高血圧、糖尿病などの「生活習慣病」は日本だけでなく、世界的にも深刻な問題になっています。食習慣の改善から病気を予防し、健やかな生活を維持するうえで、食品に含まれる体をまもる機能を持つ成分(健康機能性成分)が注目されています。その中でもギャバは、血圧の正常化作用を始めとしたさまざまな効能と安全であることから今最も注目されている健康機能性成分の一つです。ギャバ(正式名称:ガンマアミノ酪酸)は、タンパク質には含まれないアミノ酸の一種で、動物では興奮を抑える作用のあることが知られています。ギャバを合成する能力は動物だけでなく、イネを含めた植物も持っています。私たちは毎日ご飯を白米で食べていますが、ギャバの含まれる量はごくわずかにすぎません。玄米を処理することで、ギャバ含量を高めた「発芽米」は広く流通しています。しかし、普通にご飯を食べることでギャバを十分にとることはできないかと考え、私たちは研究を始めました。

ギャバは同じアミノ酸のグルタミン酸が酵素による化学反応を受けて作られます。この酵素(グルタミン酸脱炭酸酵素:GAD)に注目し、タンパク質工学の手法によって、まずイネのGADの働きを強め、次に遺伝子組換え技術を用いてお米の中でこの酵素を大量に作る方法を確立しました。改良した組換え米のアミノ酸成分を調べた結果、高い濃度のギャバを含むことが分かりました。精米したお米を比較したところ、100g当たりでギャバの量は15mgと改良前に比べて最大30倍も増えていたのです。

お米に含まれるギャバの分析
 

開発したギャバ米の効果を調べるために、高血圧症のラットを用いて試験を行いました。ギャバ米を食べたものでは血圧上昇を抑制する作用が確かに認められましたが、改良前のお米では抑制の効果はありませんでした。

米の投与実験と血圧の推移
 

今回開発したお米は、研究のために広く用いられている、日本晴というイネの品種を元にしています。ただ、毎日食べることを考えるとお米の味はとても大切です。コシヒカリのようなおいしいお米のイネを対象にして、同じ手法を適用することでギャバをたくさん含むお米の開発を現在進めています。遺伝子組換え作物に対して不安感を抱かれる方も少なくありません。研究開発にあたっては周辺の生態や環境に影響を与えないか、毎日食べてもアレルギーなど健康に害をあたえないか等々、さまざまな角度から安全性試験を徹底して行い、「安全かつ安心な」健康機能性米を近い将来に実用化させることが私たちの目標です。

特定網室での栽培風景

赤間 一仁

赤間 一仁 (あかま かずひと)

宮城県出身。総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程修了。フリードリヒ・ミーシャー研究所博士研究員(B. ホーン研究室)、島根大学理学部助手を経て、2004年より島根大学生物資源科学部准教授。
専門は、植物分子生物学、植物遺伝子工学。研究テーマは、植物tRNAを中心にした分子生物学、イネGABA代謝系の機能解明。

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